みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
秋雨前線や相次ぐ台風の影響で、関東では雨の日が長く続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
秋を迎えた国内の金管バンド界では、各地のバンドによるコンサートに加え、地域のバンドが集まる合同演奏会、そして今年初開催となる金管バンドのマーチイベントなどなど、芸術の秋にふさわしいさまざまなイベントが予定されています。どこへ聴きに行こうか、予定を考えるのも楽しい季節ですね。
一方、海外に目を向けると、9月には、英国でも特に優勝するのが難しい大会として知られる、通称「オープン」こと『ブリティッシュ・オープン』が開催されました。ヨーロッパやオセアニアでもさまざまなコンテストが開催され、いよいよ2026年後半のコンテストシーズンが幕を開けました。
本日は、こうした国内外の金管バンド情報に加え、イングランドが生んだ大作曲家、エドワード・エルガーを特集します!
INDEX
金管バンド情報
BrassBandROAR!16th Concert&HUB4th

『Brass Band Roar! 16th Concert』と、今年で4回目となる北陸ユナイテッドブラス、通称「HUB」のコンサートが、10月11日(日)に福井県の鯖江市文化センターにて開催されます。
Brass Band Roar!の定期演奏会はもちろんのこと、同バンドにBrass Band TSB(富山)、Raffine Brass Band(石川)が加わった、北陸が誇る3バンドによるマスバンドの演奏もお楽しみいただけます。各バンドの持ち味に加え、みんなで集まるからこそ生まれるサウンドも楽しみですね!
詳細は以下のリンクよりご覧ください。
ブラスバンド・マーチフェスタ in Matsumoto

10月24日(土)には、長野県松本市の『あがたの森』にて、パレードや立奏での演奏などを織り交ぜた、日本初の地域密着型の野外マーチイベントが開催されます。
出演するのは、以下の5バンドと、公募で集まった一般参加者のみなさんです。
- 東京ブラスコンコード
- ペンギンブラスファミリー
- 開智小学校ブラスバンド(開智ブリランテブラス)
- British Brass DOLCE
- British Brass DOLCE Youth Band
秋の松本で、街の風景とともに金管バンドの音色を楽しめる一日。コンサートホールとはまた違った楽しさがありそうですね!
詳細は以下のリンクよりご覧ください。
世界ランキング62位に日本のバンドImmortal Brass Eternallyがランクイン
7月のWMCで第9位となったImmortal Brass Eternallyが、金管バンド専門メディア「4barsrest」の世界ランキングで62位にランクインしました。アジアのバンドとしては史上初のランクインです。日本の金管バンドが世界の舞台で積み重ねてきた挑戦が、こうしてひとつの形になったことを嬉しく思います!

2026年9月現在、4barsrestの世界ランキング上位3バンドは以下の通りです。
🥇 Brass Band Willebroek(ベルギー)
🥈 Flowers Band(イングランド)
🥉 Brass Band Treize Étoiles(スイス)
4位以降のランキングは、こちらからご覧ください。(外部サイト・英語)
今後は全英選手権やBrass in Concertをはじめ、ヨーロッパ各国の全国大会などなど、注目のコンテストが続きます。まさにコンテストシーズン真っ只中のヨーロッパ。年末から年明けにかけて、ランキングがどのように動くのかも楽しみですね!
第172回ブリティッシュ・オープン結果

英国でも特に優勝するのが難しい大会として知られる、通称「オープン」こと『ブリティッシュ・オープン』。今年の結果が発表されました!
| 1位 | 🏴 | Foden’s Band / Russell Grey |
| 2位 | 🇧🇪 | Brass Band Willborek / Frans Violet |
| 3位 | 🏴 | Brighouse & Rastrick / David King |
| 4位 | 🇦🇺 | Sydney City Brass / Jason Katsikaris |
| 5位 | 🏴 | Layland / Daniel Brooks |
優勝は、2023年以来の王座を射止めたFoden’sとなりました。やはり、Russell Grayとこのバンドのコンビは、コンテストで無類の強さを誇ります。
海外からの出場バンドでは、ベルギーのBrass Band WillebroekがWMCに続いて第2位。そして、なんと英国からはるか遠く、オーストラリアから参戦したSydney Cityが第4位に入り、オセアニアのバンドの実力を示しました。
連覇を狙ったBrighouse and RastrickとDavid Kingのコンビは、惜しくも第3位。一方、驚くべきことに、これまで上位の常連だったBlack Dykeは第9位、Flowersは第12位、Coryは第13位、The cooperation bandは第16位、Grimethorpeは第17位という結果になりました。
フィリップ・スパークの生誕75周年を記念して、課題曲に選ばれた『Music of the Spheres』。名曲を舞台に繰り広げられた今年のオープンは、上位常連のバンドも苦戦する、波乱の大会となりました。
今後の注目コンテスト
10月3日(土):全英選手権 チャンピオンシップ・セクション決勝
- 10月16日(金)・17日(土):ドイツ全国大会
- 10月24日(土):オランダ全国大会
クラシックの大作曲家たちが遺した金管バンド作品①エドワード・エルガー
英国・イングランドが生んだ大作曲家、エドワード・エルガー。日本でも大変人気のある作曲家で、『愛の挨拶』や『エニグマ変奏曲』、そして『威風堂々』シリーズは、みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
これらの作品は、オーケストラだけでなく、金管バンドをはじめさまざまな編成に編曲され、今なお多くの人々に愛されています。
また、マーティン・エラビーの『エルガー変奏曲』や、フィリップ・スパークの『エニグマ変奏曲』など、エルガーの音楽は編曲の枠を超え、新たな作品を生み出す題材にもなっています。後世の作曲家たちにも大きな影響を与えているのですね。
本日は、そんなエルガーが金管バンドのために書いた唯一のオリジナル作品、『セヴァーン組曲』(The Severn Suite)をご紹介します。
『セヴァーン組曲』(Severn Suite)

| 作曲年 | 1930年 | エルガー晩年の73歳のころ |
| 作曲動機 | 作曲された年の全英選手権で使用する課題曲として書かれました。 | |
| 演奏時間 | 約18分 | |
| 楽章数 | 全5楽章 | 1. Introduction 2. Toccata 3. Fugue 4. Minuet 5. Coda |
| 編曲 | 管弦楽、吹奏楽、オルガン | |
| 優勝バンド | Foden’s Motor Works Band | 指揮はFred Mortimer(Hurry Mortimerの父) |
| Severnとは | 全長354kmある英国で最も長い川の名前 |
前回までご紹介したジョン・アイルランドの作品と同じく、全英選手権の課題曲として生まれたのが『セヴァーン組曲』です。エルガーの晩年に当たる1930年に作曲され、同年の大会会場であったクリスタル・パレスにて演奏されました。
題名の由来は、英国で最も長い川として知られるセヴァーン川。この川は、エルガーが生まれ、晩年を過ごしたウスターシャーを流れています。幼い頃から親しんできた故郷の風景が、作品の名前にも込められているのですね。
フレッチャーやアイルランドらとともに、金管バンドのオリジナル作品が花開いた20世紀前半を代表する一曲です。オペラやオーケストラ作品の編曲を課題曲として使用していた時代から、金管バンドのために書かれたオリジナル作品へ。その移り変わりを、ぜひ音楽からも感じてみてください。
曲は、以下の五つの部分から構成されています。
- Introduction(Pomposo):Worcester Castle
序奏(壮麗に):ウスター城 - Toccata(Allegro molto):Tournament
トッカータ(非常に速く):馬上槍試合 - Fugue(Andante):The Cathedral
フーガ(歩くような速さで):大聖堂 - Minuet(Moderato):Commandery
メヌエット(中庸の速さで):コマンダリー - Coda(Lento)
終結部(ゆっくりと)
それでは、『セヴァーン組曲』をお聴きください。演奏は、当時のFoden’s Motor Works Band。指揮は、このバンドを率いて全英選手権優勝を果たしたフレッド・モーティマーです。
さいごに
かの有名なエルガーが、金管バンドのために作品を遺してくれたというのは、本当に貴重なことです。ほかにもフレッチャー、アイルランド、ホルスト、そしてヴォーン・ウィリアムズなど、今なお名を知られる偉大な作曲家たちが、金管バンドのために素晴らしい作品を遺しています。ただ、近年はこうした作品が取り上げられる機会が少なくなっているようにも感じます。
こうした作品が築いた土台は、グレアムやスパーク、そしてクーパー、ダヴォレン、ボンドなど、現代の作曲家たちへと受け継がれています。今の金管バンドの音楽を楽しむとともに、その歩みを支えてきた作品にも、ぜひ耳を傾けていただけたら嬉しいです。
そして、みなさまの演奏会のレパートリーにも、ぜひ加えてみてください。楽譜上の難易度だけでは測れない、音楽の奥深さと演奏する喜びが詰まった珠玉の作品たちです!
今回もありがとうございました。またお会いしましょう。
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽大学大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon、Besson、B&S、Mercer & Barker社アーティスト。WMC 2026 Gold Award受賞。
Nexus Brass Band、Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally常任指揮者。東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本の金管バンドの普及・指導、演奏、指揮、企画・運営など幅広く活動。


