【吹奏楽ナビ】#95 作曲家 ショスタコーヴィチ① 交響曲第5番

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皆さま、こんにちは。

2026年がメモリアルイヤーとなる作曲家に、この9月で生誕120年を迎えたドミートリイ・ショスタコーヴィチがいます。昨年(2025年)も没後50年のメモリアルイヤーとなっておりましたので、昨年から今年にかけてショスタコーヴィチの作品が演奏会のプログラムに入っているのをよく目にしてきました。
8月末で吹奏楽コンクールの支部大会が一段落し、関東・東京支部以外の中学・高校の部の支部代表が決定しているのですが、代表になった学校の選曲を眺めていると関西支部代表の生駒市立生駒中学校が、ショスタコーヴィチ作曲の 交響曲第5番より 第4楽章 を自由曲として演奏していることを知りました。中学の部の全国大会でこの曲が演奏されるのは久しぶりではないかと思って調べてみると、なんと1978年以来48年ぶり!とのことで、この機会に今回はショスタコーヴィチ作曲の作品の中から、交響曲第5番の全国大会での演奏をいくつかご紹介しようと思います。

交響曲第5番

ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチが交響曲第4番を作曲した1936年頃、当時のソビエト連邦はスターリン独裁政権の下、社会主義思想に反するものを片っ端から排除しており、その矛先はショスタコーヴィチにも向けられて、当時発表したばかりのオペラやバレエ音楽について共産党機関紙にて激しく批判され、「反体制」のレッテルを貼られて当局の監視下に置かれ、ショスタコーヴィチ自身の意思で交響曲第4番の初演を取り止めざるを得ない状況になっていました。このような厳しい状況の中で、ショスタコーヴィチが悩んだ末に名誉回復のために発表した新たな交響曲が、1937年に作曲された交響曲第5番です。前作の第4番に見られるような先進的で前衛的な複雑な音楽に対し、第5番は古典的で単純明瞭な構成が特徴となっており、当局側からも「社会主義リアリズムの理想の最たる作品」と絶賛され、ショスタコーヴィチは作曲家としての名誉を回復していくこととなりました。
交響曲第5番の「苦悩から勝利へ」という構図がベートーヴェンの交響曲第5番「運命」にも共通していることもあり、「私がこの交響曲で示したかったのは、心の中で大きな葛藤が幾度も悲劇的にぶつかりあい、初めて人生観としての楽天主義が確立されることである。」という初演後まもなくに書かれた作曲者自身による記述があるのですが、ショスタコーヴィチの死後に出版された1冊の本の中での記述に、「交響曲第5番と第7番では、私が歓喜の終楽章など夢にも考えたことがない。あれは強制された歓喜なのだ。」という旨が記されていることもあり、現在はこの曲についての解釈は諸説あるがどれも決定打となっておらず、様々な解釈による演奏がある曲となっています。

また、昔の日本では交響曲第5番の副題を「革命」としていることが多く、私が初めて聴いたコンクール実況録音版のCDでも「革命」という副題があったため、私自身もこの副題が強く印象に残っているのですが、ショスタコーヴィチ自身はそのような命名は行っていないということですので、今回の記事での曲名表記においては「革命」という副題を書いていないことをご理解いただけますと幸いです。

西宮市立今津中学校 (1971年)

交響曲第5番より 第4楽章
作曲:D.ショスタコーヴィチ


全日本吹奏楽コンクール
1971年(第19回大会) 金賞
演奏:西宮市立今津中学校吹奏楽部
指揮:得津 武史

交響曲第5番が全国大会で初めて演奏されたのは、まだ順位制だった1962年の高校の部でしたが、その後1971年に兵庫県を代表する古豪の名門校である西宮市立今津中学校の演奏が中学の部での初演となりました。現在の中学の部での編成上限よりも10名少ない40名での演奏とは到底思えない凄まじい音圧で、金管楽器のパワフルで重厚な響きが素晴らしいのはもちろんのこと、木管楽器が担当する原曲の弦楽器のパッセージでの音数が多い難所を見事に吹きこなしており、技術力が高いだけでなくショスタコーヴィチの音楽も感じられる名演となっています。

天理高等学校 (1990年)

交響曲第5番より 第4楽章
作曲:D.ショスタコーヴィチ 編曲:C.B.ライター


全日本吹奏楽コンクール
1990年(第38回大会) 金賞
演奏:天理高等学校吹奏楽部
指揮:新子 菊雄

関西支部を代表する古豪の名門校である天理高等学校が1990年に交響曲第5番をコンクールで演奏しましたが、天理高校がこれまでにコンクール自由曲としてショスタコーヴィチの作品を演奏したのはこの年のみという今となってもかなり珍しい選曲で、しかも第4楽章をカットなしでの演奏ということで曲へのこだわりが強く感じられます。全曲を通して完成度がとにかく高くて安心して聴いていられる演奏なのですが、音楽的にも素晴らしくてさすが天理高校だなと思える演奏となっています。

福岡工業大学附属高等学校 (1997年)

交響曲第5番より 第4楽章
作曲:D.ショスタコーヴィチ 編曲:C.B.ライター


全日本吹奏楽コンクール
1997年(第45回大会) 金賞
演奏:福岡工業大学附属高等学校吹奏楽部
指揮:屋比久 勲

1997年に福岡工業大学附属高等学校が演奏した交響曲第5番は、屋比久先生時代のオーケストラ編曲作品の演奏の中でも特に記憶に残っています。圧倒的な実力と音圧を誇る金管セクションが最強なのは分かりきっているのですが、音に芯があってとにかくよく鳴るクラリネットセクションのアグレッシブな攻めっぷりが素晴らしく、私がショスタコーヴィチのオーケストラ作品に興味を持つきっかけにもなった演奏です。

ブリヂストン吹奏楽団久留米 (2013年)

交響曲第5番より 第4楽章
作曲:D.ショスタコーヴィチ 編曲:榛葉 光治


全日本吹奏楽コンクール
2013年(第61回大会) 金賞
演奏:ブリヂストン吹奏楽団久留米
指揮:冨田 篤

最高峰の実力を誇る金管セクションを中心としたパワフルで輝かしいサウンドとアグレッシブな音楽が特徴の、九州支部を代表する職場バンドであるブリヂストン吹奏楽団久留米の演奏です。私は中高生時代に数々の録音を聴いて以来このバンドのファンなのですが、まだ生演奏を聴くことができておらず、一度は生演奏を聴いてみたいと思っています。
2013年にコンクール自由曲として演奏した交響曲第5番はコンクールでの数々の演奏の中でも特に記憶に残っており、凄まじい音圧でありながら余裕も感じられる金管セクションとオーケストラの弦楽器の奏法を意識した音楽表現が光る木管セクションに、ショスタコーヴィチならではの音楽的なアクセントが決まっている打楽器セクションを含めた一体感が素晴らしく、実際にホールで聴いてみたかったと思う名演です。

あとがき

いかがでしたでしょうか。ショスタコーヴィチ作曲の交響曲第5番の、コンクールでの名演をご紹介しました。

次回は、ショスタコーヴィチ作曲の作品の中でも吹奏楽コンクール全国大会で多く演奏されている、祝典序曲をご紹介しようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
シエナ・ウインド・オーケストラ バスクラリネット奏者。
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。

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