皆さま、こんにちは。
前回は、編曲家の真島俊夫さんをテーマにクラシック寄りな作品を中心にご紹介しましたが、今回はよりポップス色の濃い作品の中から、私が実際に演奏したことのある作品をご紹介しようと思います。

宝島
宝島
作曲:和泉 宏隆 編曲:真島 俊夫
演奏:東京佼成ウインドオーケストラ
指揮:岩井 直溥
1972年のシリーズ開始以来、「吹奏楽ポップス」というジャンルを開拓・牽引し続けてきた「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズの中でも、今までで一番演奏されている曲と言っても過言ではないのが 宝島 ではないでしょうか。原曲は日本を代表するジャズ・フュージョンバンド T-SQUARE が1986年にリリースした楽曲で、同バンドのキーボーディストの和泉宏隆さんが作曲しました。真島俊夫さんの編曲による吹奏楽版はラテンパーカッションを多様したサンバ調のアップテンポアレンジとなっており、真島さんの代表作と呼ばれるほどの大人気のアレンジです。
中高生のみならず一般団体の演奏会のポップスステージやアンコールで演奏されることが特に多いと思うのですが、実は私は中高生の時に宝島を演奏したことがなかったというかなり珍しい部類で、初めて演奏したのは大学生の時だったと思います。プロとして活動するようになってからは東京佼成ウインドオーケストラやシエナ・ウインド・オーケストラなどのプロの吹奏楽団の演奏会のアンコールなどで幾度となく演奏してきました。最近では、シエナ・ウインド・オーケストラの演奏会でお客さまと一緒に演奏しようという企画で宝島を演奏したのですが、予想を遥かに超えるたくさんのお客さまが舞台上に集まってくださったのを見て宝島の大人気ぶりを思い知らされることとなりました。
真島さんアレンジの宝島は見せ場がいくつかあり、やはり最初に思い浮かぶのは1:05と2:13のアルトサクソフォーンソロでしょう。特に後半のソロはアドリブで演奏されることが多く、各奏者の特徴が強く出る部分です。次に思い浮かぶのは3:04のトランペット・トロンボーンによる直管金管楽器セクションでの大迫力のソリで、プロが演奏する時はほぼ必ず立奏している印象が強いです。
宝島でのクラリネットセクションの見せ場といえば、1:22で高音域に駆け上がる対旋律ではないでしょうか。実際に駆け上がった高音のCの音はとてもよく抜ける音なので客席にもよく聴こえますし、演奏する側でも気持ちよく吹けるクラリネット推しの部分だと思います。
オーメンズ・オブ・ラブ
オーメンズ・オブ・ラブ
作曲:和泉 宏隆 編曲:真島 俊夫
演奏:東京佼成ウインドオーケストラ
指揮:岩井 直溥
「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズの真島俊夫さんのアレンジの中でも特に多く演奏されている オーメンズ・オブ・ラブ。原曲は T-SQUARE が1985年にリリースした楽曲で、同バンドのキーボーディストの和泉宏隆さんが作曲しました。宝島と並んで、真島俊夫さんの編曲家としての評価を確立させた楽曲となり、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズの中心メンバーである岩井直溥さんは、「『オーメンズ・オブ・ラブ』で、いわゆるシンフォニック・ポップスともいうべき彼ならではのアレンジを完成させ、『宝島』で大爆発する。この2曲は、いまでも日本中で演奏されているロング・ヒット・スコアで、聞いたところによると、真島くんのオリジナル曲だと錯覚している若い人たちもいるらしい。」と評しています。
主に中高生をはじめとしたアマチュアの演奏会で演奏されることが特に多いと思うのですが、私はこの曲も中高生の時には演奏しておらず、初めて演奏したのが大学生になってからだったと思います。近年も演奏会で聴くことはありましたが、昨年に久しぶりに演奏する機会がありまして、あまりの懐かしさに胸が熱くなりました。
真島俊夫さんの吹奏楽版のアレンジでは原曲のC-durからB-durに移調されているのですが、これが良い意味で吹奏楽らしさを感じられて颯爽としたカッコよさが際立っていると思います。私の中での「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズの真島さんアレンジの大きな特徴であり、演奏しても聴いても良いなと思うのは木管楽器の高速パッセージなのですが、2:10からのクラリネットセクションの高速パッセージは聴こえやすい高音域で映えるように書かれていて最高にカッコよく、私にとってはこの部分が真島さんアレンジの高速パッセージの代名詞だと思っています。
カーペンターズ・フォーエバー
カーペンターズ・フォーエバー
シング~愛のプレリュード~トップ・オブ・ザ・ワールド~遥かなる影~スーパースター~ふたりの誓い
編曲:真島 俊夫
演奏:東京佼成ウインドオーケストラ
指揮:岩井 直溥
アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス出身の兄妹デュオ、カーペンターズ は、ロック全盛の1970年代において独自の音楽スタイルを貫き大きな成功を収めました。カーペンターズの名曲から6曲を選び、真島俊夫さんの美しいオーケストレーションとセンス溢れる繋ぎ方によるメドレー、カーペンターズ・フォーエバー として、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」第18集の中の一曲として1990年に出版されました。
この曲を初めて演奏したのは、母校の中学校の吹奏楽部でお世話になった恩師の還暦記念コンサートでした。カーペンターズの曲はもちろん知っていましたが、改めて良い曲だなと感じられるアレンジで、カーペンターズの名曲の素晴らしさはもちろん、吹奏楽の大迫力によるカッコよさも存分に味わえる名アレンジだと思いました。
シング《0:00~》冒頭からスリリングに駆け抜けていく高速パッセージでテンションが爆上がり、金管楽器も加わっての爽快なオープニングから、愛のプレリュード《0:31~》の甘く切ないメロディがアルトサクソフォーンソロで奏でられます。木管楽器に受け継がれたメロディの裏の金管楽器のバッキングがカッコよく、静かに落ち着いていった後に トップ・オブ・ザ・ワールド《1:44~》が可愛らしく始まり、クラリネットセクションのメロディが明るく軽快に奏でられます。トランペットも加わって盛り上がった後、木管楽器による移行部分を経て 遥かなる影《3:21~》のメロディがお洒落なトランペットソロで奏でられます。クラリネットセクションの美しいレガートから スーパースター《3:57~》の幻想的なメロディがトロンボーンソロで奏でられた後、盛り上がった先の4:43からが金管楽器のメロディ、木管楽器の対旋律ともに最高にカッコよくて痺れます。そこから落ち着いていって最初のレガートが再び演奏されたと思ったら ふたりの誓い《5:18~》が軽快に始まり、クラリネット・サクソフォーンでの熱いメロディや金管楽器のバッキング、トランペットソロが高らかに響いて華やかに曲が終わります。
マンテカ
マンテカ
作曲:ディジー・ガレスピー、ルチアノ・ポゾ 編曲:真島 俊夫
演奏:大阪市音楽団
指揮:真島 俊夫
誰もが知っている親しみ易い曲をアレンジの妙を駆使して名アレンジャー達が料理するという、吹奏楽ポップスに新境地を開いた「ポップステージ」シリーズの3作目から、マンテカをご紹介します。天才トランペッターの ディジー・ガレスピー と、パーカッショニスト・コンガ奏者の ルチアノ・ポゾ との共作で生まれた、アフロ・キューバン・ジャズの代表曲です。
この曲を演奏したのは、高校生の時のステージマーチングの演奏会だったのですが、リズムの難しさに大変苦戦しながらもトランペットセクションのカッコよさとこの曲のラテン音楽特有のノリに魅了されたことが記憶に残っています。
冒頭からハイBが登場するトランペットセクションが終始大活躍ですが、やはりラテンパーカッションをはじめとする打楽器セクションが曲のノリを司る重要なパートであり大活躍します。木管楽器が生きる1:12の束の間の静けさな部分もありますが、基本的には金管打楽器の見せ場が多い曲で、2:28のアドリブ的なトランペットソロに4:04のドラムソロなど、技術的に大変難しい部分がかなりありますが、真島さんアレンジのカッコよさを存分に味わうことができるこの曲に是非挑戦してほしいと思っています。
キャン・ユー・セレブレイト?
キャン・ユー・セレブレイト?
作曲:小室 哲哉 編曲:真島 俊夫
演奏:大阪市音楽団
指揮:真島 俊夫
安室奈美恵さんのシングルの中で最大の売上を記録しており、小室哲哉さんが制作したシングルの中でも最大の売上を記録していて、結婚式の定番ソングにもなっていた名曲、CAN YOU CELEBRATE? を、真島俊夫さんの溢れるセンスでクラシカルかつムーディーにアレンジしたものです。
このアレンジを演奏したのは母校の高校の定期演奏会でのOBステージで、CAN YOU CELEBRATE? はもちろん知っていましたが真島さんのアレンジはこの時に初めて知り、あまりにも美しい冒頭部分が強烈に印象に残ったことを覚えています。
冒頭の幻想的な導入部分から、メロディがオーボエのソロで奏でられます。そこから木管楽器に受け継がれ、ピッコロトランペットが登場するのですが、この曲想に合う音色としてピッコロトランペットを選び、要所でピッコロトランペットを登場させるセンスに脱帽です。原曲の雰囲気は残しつつ、それぞれの楽器の音色が輝くオーケストレーションによって吹奏楽で魅力的に聴こえるようにアレンジされており、私の中では真島さんのアレンジの良さが堪能できる名アレンジだと思います。
あとがき
いかがでしたでしょうか。真島俊夫さんが編曲した作品でポップス色の濃い作品の中から、私が実際に演奏したことのある作品をいくつかご紹介しました。
名アレンジャーとして名高い真島俊夫さんの編曲作品はまだまだありますので、真島さんの作品が数多く演奏されている今年に真島さんの編曲作品を生演奏で聴いていただけることを願っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

