【金管バンドナビ】#7 金管バンドと吹奏楽の違い

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

前回までの金管バンドの歴史から、今回は日本で大人気のジャンル、吹奏楽と金管バンドを比べながら金管バンドのことを知っていただこうと思います。一見木管楽器が入っているかいないかだけの違いかと思われますが、そこには多くの相違点があります。本日はそこを深掘りしていきましょう。

名称の違い

よく話題にのぼる金管バンド、吹奏楽、この両者の名称の違いですが、ここで1度解説と河野の見解を述べていきたいと思います。

  • 金管バンド

英語でBrass Band、Brassとは金属の名前である真鍮(しんちゅう)を意味しており、その真鍮製の楽器と打楽器で構成されているアンサンブルなゆえ、英語ではBrass Band(ブラスバンド)、日本では金管バンド、英国式金管バンド、ブリティッシュブラスバンドと呼ばれています。

  • 吹奏楽

英語ではWind Band, Wind Orchestra, Concert Band, Symphonic Band, Wind Ensembleなど、金管楽器のみではなく吹いて奏でる楽器(Wind Instrument)である木管楽器と金管楽器、そして打楽器、さらに時に弦楽器であるダブル・ベース(コントラバス)で構成されるため、英語ではWindと付く名称が一般的です。日本では吹奏楽、ブラスバンド、ブラバンという名称で呼ばれています。

なぜ日本で、吹奏楽のことをブラスバンドと呼ぶかについてその出所や、日本で最初に演奏された西洋の管楽器アンサンブルが金管バンドだったのか、吹奏楽だったのかなどかは現在研究がなされているので、その結果を楽しみにしたいところですが、名称やその意味というのは使われる国や時代の流れによって変わるものです。

つまり、現代の日本においてブラスバンドという単語が何を指すかは、前後の文脈や意図によってその都度変化します。なのでこの事実を知った我々が今できるのは、英語話者とコミュニケーションを取る際は金管バンド=Brass Band、吹奏楽=Wind Bandと呼ぶという事実だけ知っていれば良いと思います。

楽器の構成の違い

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楽器の構成で1番の大きな違いはもちろん、木管楽器があるかないかの違いですが、金管バンドはこの金管楽器群の中でも大まかに2種類の楽器に分けられます。
(特許を取られた時期や、いつどこで作られたなどで完璧に断定が出来ないことが前提。)

金管バンド

  • サクソルン属系金管楽器
    フリューゲル・ホーン、テナー・ホーン(アルト・ホルン)、ユーフォニアム、Ebベース、Bbベース
  • サクソルン属ではない金管楽器
    Ebコルネット、Bbコルネット、トロンボーン、ベース・トロンボーン
  • 打楽器

吹奏楽

  • 木管楽器
  • 金管楽器
  • 打楽器
  • 弦楽器であるダブルベース(コントラバス)

このような構成となっています。

木管楽器を始めとした多種多様な楽器を有する吹奏楽と違い、金管楽器と打楽器の大きく分けて2種類の楽器のみで構成をされている金管バンドは、色彩豊かに演奏を奏でる際の工夫として様々な工夫をしています。いくつか例を挙げてみます。

  • 多種多様なミュート・ワーク

音量を下げるという役割だけに限らず、様々なミュートを使い音色を変化させ、曲にコントラストを作り出す手法が多用される。

  • 配置の工夫

金管バンドにおける奏者の配置は時代によっても変わりますが、現代では通常ハの字型や扇形に配置をされていることが多いです。しかし、曲や演出の仕方によってはその配置を大きく変え、音色や聞こえはもちろん、コンサートにおける視覚的な変化で聴衆を魅了することもできます。

以下の動画だと始めのアップテンポの曲「Los hermanos de Bop」ではコルネットやトロンボーンといった直管楽器たちが客席へベルが向くように配置され、さらにサクソルン属であるテナー・ホーンなどの傾向としてベルが上を向き、響きが多く聞こえづらい楽器のベルも客席へダイレクトに音が届くよう配置されています。

しかし、一曲目から二曲目のマーチ「The Bombardier」へ移行する際ドラム・ロールとともにバンドが移動し、その配置を通常の形へ変更させます。これは金管バンドの長い歴史の中で作られてきたこのスタンダードな配置がマーチを演奏するのに最も適していると考えられていますし、先述した聞かせ方や視覚的な効果も狙ってのことです。

最後に

名称の違いや楽器構成の違いももちろん相違点ではありますが、世界中の言葉や料理同様、音楽や楽器も時に混ざり合い、時に離れたりしながらその独自性を高めてきました。吹奏楽と金管バンドも全く同様で、初めに金管バンドだったアンサンブルに木管楽器が入って軍楽隊として活動をしたり、吹奏楽から木管楽器を無くし、サクソルン属系金管楽器を足して金管バンドとして活動をしたりなども行なわています。

吹奏楽が身近にあるこの国だからこそ、それと比較をして金管バンドを見た時により知ることもできますし、時には比較せず金管バンドの独自性として演奏に取り組むことも大切ですね。

今後もまた金管バンドのことについて書いていきますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願いします。本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Besson アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。