【金管バンドナビ】#69 クラシック作曲家が遺した金管バンド作品

  • LINEで送る

みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

毎年のことではありますが、今年も春はあっという間に過ぎ去り、気付けば初夏を思わせる暖かな気候が続いております。みなさま、本日も金管バンドを楽しまれておりますでしょうか。

さて、今回より「金管バンドナビ」は装いを新たに、二本立てでお送りいたします。

一本目は「世界金管バンド情報」。そして二本目は、本日のメインテーマである「クラシック作曲家が遺した金管バンド作品」です。

みなさまもご存知の著名なクラシック作曲家たちが遺した金管バンド作品の数々を、今回はご紹介してまいります。「あの作曲家が金管バンドを書いていたのか」と感じていただけるような作品もきっとあるはずです。

それでは早速、参りましょう。

金管バンド情報

欧州選手権2026

今回のメインテーマに入る前に、金管バンド業界の最新情報にも触れておきましょう。

現在、実質的な世界最高峰のコンテストとも言われるEuropean Brass Band Championships(欧州選手権)が、今年も開催されました。

今年は、2010年以来となる“音楽の都”ウィーンを擁するオーストリアで開催されたEuropean Brass Band Championships。2010年の『Spiriti』に続き、今回の選手権課題曲もオーストリア人作曲家Thomas Dossによる新作『Alienus』が採用されました。

作品中にはJ.S.バッハのカンタータ第140番《目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声(Wachet auf, ruft uns die Stimme, BWV 140)》が引用されており、高難易度のソロの応酬に加え、多彩な音楽様式が次々と展開される非常に挑戦的な作品となっています。

しかしその複雑さの中にも強い音楽的魅力があり、何度聴いても飽きることのない、実に素晴らしい課題曲でした。

前回王者であるベルギーのBrass Band Willebroekをはじめ、ヨーロッパ各国から強豪バンドが集結した本大会。その結果は、まさに驚きの連続となりました。

順位バンド国名課題曲/自由曲得点
1位Flowers Bandイングランド98/98
2位Valaisia Brass Bandスイス96/97
3位Tredegar Bandウェールズ95/93
4位3BA Concert Bandドイツ92/94
5位Brass Band Willebroekベルギー89/96
これ以降の結果はこちらより(4barsrest、英語サイトへ飛びます。)

なんと、バンド史上初めてEuropean Brass Band Championshipsに出場したイングランドのFlowers Bandが、課題曲98点、自由曲98点という圧巻の高得点を叩き出し、初出場にして初優勝を成し遂げました。

2022年のウェールズのCory Band以来、ヨーロピアン・トロフィーは再び英国へと渡ることとなりました。

前年王者のBrass Band Willebroekは、まさかの5位という結果に終わりました。自由曲では96点という高得点を獲得したものの、課題曲では89点と伸び悩み、王座防衛はなりませんでした。

個人的には、Willebroekの課題曲は非常に完成度の高い素晴らしい演奏だったように感じていただけに、この結果には大きな驚きを覚えました。

Brass Band Valaisia、そしてTredegar Town Bandも、両バンドらしい安定感のある好演を披露しました。惜しくも優勝には届かなかったものの、いずれも非常に高い評価を受ける見事な演奏だったと言えるでしょう。

また、他のヨーロッパ諸国と比較すると、まだ金管バンド文化としては発展途上にあるドイツの3BA Concert Bandが堂々の4位に入賞。実際、ドイツ国内の金管バンド数は決して多いとは言えない中で、数々の強豪バンドを抑えてのこの好成績は非常に印象的でした。

今後のドイツ勢のさらなる発展にも、大いに期待したいところです。

また、“レジェンド”とも言える指揮者David Kingが率いるノルウェーのManger Musikklagは10位。

さらに、毎年来日もされているNicholas Childs博士が指揮を務めたスコットランドのWhitburn Bandは11位となりました。

そして、Russell Gray率いるリトアニアのBrass LTは15位という結果でした。

世界ランキング2026年1月分

また、金管バンド業界最大手のウェブサイトである4barsrestによる世界ランキングも、今年1月に更新されています。

5月現在、各国の主要コンテストシーズンもひと段落しつつあり、近いうちにランキングのアップデートも行われることでしょう。

現時点でのランキングは、以下の通りとなっています。

1位Eikanger-Bjørsvikノルウェー🇳🇴
2位Brighouse and Rastrickイングランド🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿
3位Brass Band Treize Etoilesスイス🇨🇭
4位Coryウェールズ🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿
5位Foden’sイングランド
これ以降のランキングはこちらからご覧ください。(外部サイト、英語)

最新の金管バンド情報は以上です。それでは今回のメインテーマに移りましょう。

クラシック作曲家が遺した金管バンド作

金管バンドが誕生した約200年前には、もちろんこの編成のために書かれたオリジナル作品は存在していませんでした。創成期には民謡や行進曲などが主に演奏され、やがてオーケストラ作品やオペラ作品が金管バンド用に編曲されるようになり、コンサートやコンテストの場で盛んに取り上げられていきます。

その後、1853年には現存する最古の金管バンドコンテストとして知られるBritish Openが開催。さらに1913年には、英国一の金管バンドを決める大会であるNational Brass Band Championships of Great Britainがスタートしました。

そのような歴史の流れの中で、諸説はあるものの、“金管バンドのためのオリジナル作品”と呼ばれる作品群も徐々に誕生していくこととなります。

コンテスト文化の発展とともに、多くの作曲家たちが金管バンドのためのオリジナル・コンテスト作品を手掛けるようになります。

その中でも、他に先駆けて作曲された作品として広く知られているのが、作曲家Percy Fletcherによる『労働と愛(Labour and Love)』です。(諸説あり、現在も調査が続けられている分野ではあります。)

そして、この作品を皮切りに、オーケストラ作品で名を馳せていた作曲家たちによる“金管バンドのための作品”も次々と生み出されていくこととなります。

本日はその中から、日本でも非常に人気の高い作曲家、Gustav Holstの金管バンド作品をご紹介いたします。

A Moorside Suite / Gustav Holst

日本では、オーケストラ作品《組曲:惑星》や、吹奏楽(軍楽隊)のための《第一組曲》などで広く知られているGustav Holstですが、実は金管バンドのための作品も遺しています。

Percy Fletcherの『労働と愛』(1913)の発表から15年後となる1928年、Gustav Holstは『ムーアサイド組曲(A Moorside Suite)』と題した金管バンド作品を作曲しました。

この作品は、もともと英国の国営放送BBCと、The National Brass Band Festival Committeeによって、全英大会の課題曲として委嘱されたことが作曲のきっかけとなりました。委嘱は1927年に行われ、その後1928年に『ムーアサイド組曲』として完成します。

全3楽章形式で構成されており、第1楽章『Scherzo』、第2楽章『Nocturne』、そして第3楽章『March』によって締めくくられます。

本作は現在に至るまで、日本はもちろん世界中で愛され続けている金管バンドの名作のひとつです。各国のコンテストにおいても、さまざまなセクションで課題曲として採用されるほか、自由曲として演奏される機会も非常に多い作品となっています。

さらに、オリジナルの金管バンド版だけでなく、オーケストラ版をはじめとした多彩な編曲版も存在しており、この作品が持つ魅力をさまざまな形で楽しむことができます。

また、この『ムーアサイド組曲』の存在は、英国のオーケストラ系作曲家たちが金管バンドへ関心を寄せる大きなきっかけのひとつにもなりました。

その後、Edward ElgarやJohn Irelandをはじめとする、後世に名を残す数々の著名な作曲家たちが、金管バンドのために作品を遺していくこととなります。

今回はせっかくですので、Holstの娘であり、音楽家そして教育者としても活躍したImogen Holst(1907–1984)が指揮を務めた演奏をご紹介いたします。

Imogen Holst

最後に

最後に、今回の「金管バンドナビ」もお楽しみいただけましたでしょうか。

この分野は非常に資料が多く、また時代背景や定義によってもさまざまな説が存在しております。今回ご紹介した内容についても、今後さらに調査・精査を進め、新たな発見がありました際には改めてご紹介できればと思っております。

次回も引き続き、“金管バンドのためにオリジナル作品を遺したクラシック作曲家たち”をテーマにお届けいたします。

今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


河野一之(Kazuyuki Kouno)

https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson, B&S並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスブラスバンド指導

欲しい楽譜がきっと見つかる!

楽譜のことなら
『株式会社ミュージックエイト』

吹奏楽、金管バンド、器楽、ソロからアンサンブルまで
国内楽譜・輸入楽譜ともに豊富に取り揃えております。

ぜひ一度ご覧ください!


ご購入・お問合わせはこちら