みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
コンテストシーズン真っ只中の金管バンド業界。
先日開催されたニュージーランド全国大会Aグレード(最上級)では、2018年から長年王座を守ってきた『Wellington Brass』がその座から陥落。『North Shore Brass』が自由曲で99点を叩き出し、悲願の初優勝を果たしました。
また、北米金管バンド協会主催の『North American Championships』では、CDレコーディングや昨年のスイスオープンへの出場など、近年精力的に活動を展開している『Five Lakes Silver Band』が注目を集めています。アメリカでは1980年代頃に創立されたバンドが多い中、Five Lakesは2006年創団。今年で20周年を迎え、7月にオランダで開催されるWorld Music Contestへの出場も表明しています。
この記事を書いている現在も、実質的に世界一を決めるコンテストである欧州選手権が間近に迫り、金管バンド業界は世界中で大いに盛り上がりを見せています。
さて今回の金管バンドナビでは、我らが日本の作曲家『広瀬勇人』を特集します。吹奏楽業界では知らない人はいないほどの人気を誇る作曲家ですが、広瀬氏の金管バンド作品はどのような魅力を持っているのでしょうか。ぜひご覧ください。
作曲者情報
| 学歴 | レメンス音楽院大学院作曲科および指揮科を卒業し、修士号を取得。 |
| 師匠 | レメンス音楽院大学院にてヤン・ヴァンデルローストに師事。 |
| 作曲ジャンル | 吹奏楽、室内楽、金管バンド |
| プロフィール | 公式ホームページ(外部サイトに飛びます。) |
1974年に東京に生まれた広瀬氏は、国際基督教大学(ICU)高等学校を卒業後、吹奏楽の分野で数々の作曲賞を受賞します。さらに国内にとどまらず、アメリカをはじめ、ベルギー、ドイツ、スイスなどヨーロッパ各地でも作品が取り上げられ、現在では国内外で高い人気を誇る作曲家となっています。また、吹奏楽の発展に寄与するべく、著書やDVDなどの映像コンテンツも発表しています。
師であるヴァンデルロースト氏と同様に、吹奏楽作品に加えて金管バンド作品も手がけています。代表作の一つである『エンブレム』は、全日本小学生金管バンド選手権の課題曲として作曲されるなど、金管バンド業界においても注目を集める作曲家です。
金管バンド作品
広瀬氏の金管バンド作品は、大きく3種類に分けられます。①金管バンド用に作曲された作品、②吹奏楽作品を金管バンド用に編曲したもの、③フレキシブル編成の楽譜として金管バンドでも演奏可能としたもの、の3種類です。今回はこの中から、もともと金管バンドのために作曲された3曲をご紹介します。
希望の大地 -A Land of Hope-
2022年にティーダ出版からの委嘱により作曲された本作は、19世紀前半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパからアメリカへ希望を求めて移住した人々を題材としています。タイトルにある「大地」は、アメリカ大陸を示しています。
通常は28名で演奏される金管バンド作品であっても、最小編成を14名とするなど、奏者数の少ないバンドにも配慮された作品となっており、非常に演奏しやすい仕上がりとなっています。さらに、コンクール用として作曲者自身のウェブサイトにカット案も示されており、実用面においても非常に親切です。
エンブレム -The Emblem-
2023年の全日本小学生金管バンド選手権の課題曲として作曲された作品です。タイトルの「エンブレム」は、作曲者が中学生時代を過ごしたアメリカで日常的に目にしていた紋章や表彰(エンブレム)に由来しています。学校やさまざまな建物に掲げられている紋章に加え、国旗やアメリカを象徴する鷲や星をモチーフとした陸・海・空各軍の紋章からもインスピレーションを受けたとされています。
本作も先ほどの「希望の大地」と同様に、最小編成は13名に設定されています。音域も一般的な金管バンド作品と比べて抑えられており、小学生から金管バンドを始めたばかりの奏者まで、幅広い層にとって演奏しやすい工夫が施されている印象です。
レッド・ダイアモンド -Red Diamond-
2025年、「朱仄ブラスソサエティ新曲発信プロジェクト」の第5弾として委嘱された作品です。本バンドの赤いロゴマークから赤いダイヤモンドを連想し、そこからこのタイトルが着想されたとされています。
曲は急―緩―急―緩―急という5つのテンポセクションで構成されており、レッド・ダイアモンドにまつわる意味やイメージが、複数の場面を通して描かれています。構成的にも非常に興味深い作品です。
指揮経験のある立場から個人的に印象的なのは、2度目の緩やかな楽想からフィナーレへと向かう部分(上記演奏で言えば4:22〜)です。作曲者自身も曲目解説の中で「レッド・ダイアモンドの石言葉である『永遠の命』を表現した楽想が展開され、深いぬくもりと感動の中、曲を閉じます」と述べており、その言葉どおりの美しさと力強さを兼ね備えた印象的な場面となっています。
さいごに
今回は邦人作曲家である広瀬勇人氏の作品をご紹介しました。日本における金管バンドは昭和の時代から発展を続けており、それに伴い、金管バンドのための作品を手がける作曲家も徐々に増えてきています。
近い将来、コンテストで使用されるような長尺かつ高難度の作品、そして長く愛され続ける国産作品が生まれることを期待しています。
今後もこうした作曲家の方々をご紹介できるよう、本ナビでの調査・発信を継続してまいります。
それではまた次回お会いしましょう。今回も誠にありがとうございました。
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson, B&S並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスブラスバンド指導者協
