【金管バンドナビ】#14 英国金管バンドのコンテスト①

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

今回は英国で開催されている金管バンドのコンテストについてご紹介させていただきます。これまでご紹介してきた金管バンドの歴史でも触れてきましたが、約2世紀も前から始まった英国ブラスバンドのコンテスト、その種類やルール、歴史は様々です。コンテスト無しには語れない英国金管バンド、これを紐解くことで日本金管バンドもきっとより盛り上がっていくと思います。というわけで、ぜひご覧ください。

コンテスト

コンテストとはみなさんよくご存知の通り、ある一定のルールのもと、演奏などの実演を通して技術や芸術性の優劣を決める競技会のことです。これまでも書いてきましたが、吹奏楽やマーチングなどと同様に金管バンドの世界にもコンテストは無数に存在しており、このコンテスト文化が金管バンドの発展に寄与してきたことは言うまでもありません。

というのも注目度の高いコンテストで良い結果を残したり、印象に残る活躍をしたバンドや指揮者は知名度や人気が高まります。それにより有償での演奏の機会が増えたり、広告塔としての価値があがることなどにより当事者を中心にお金が回り始めるのです。また各バンドは良い結果を求めて有能な指揮者や指導者、奏者、より良い性能の楽器を競うように集めるため、プロの音楽家や楽器メーカーが参入してバンドを取り巻く環境は成長していくのです。

さらに主催者側からすれば定期的なコンテストを催すことで審査員を養成し、課題曲などの作曲依頼を通して作家の発掘や養成を行えます。また会場関係者やスポンサー企業とのコネクションの構築など業界の中で繋がりが発生してお金が循環するようになり、それらが相まって業界が発展していくということです。

ある業界を発展させようと思った時に、活性化させるための催しを行い、それによるプロフェッショナルや企業の参入というのは欠かせません。これら全てを同時に行えるのがコンテストなのです。

セクション分け(Brass band sections in the U.K.)

日本の吹奏楽コンクールは、小・中・高校・大学そして職場&一般の部といった参加者の年代による分別やさらにバンドの人数規模によって部門分けされており、演奏レベルや過去の実績に基づいて分けられているわけではありません。

このような分け方は、職場&一般の部を除いて毎年メンバーが入れ替わるという教育現場の特性を考慮しフェアなルールとなっています。ただし、英国の金管バンドはその成り立ち方が異なるため、ルールも異なります。

これまでご紹介してきた通り、英国の金管バンドというのは労働者階級の方々の中で普及した音楽なので、日本の市民吹奏楽団のようにアマチュアの一般バンドが大多数です。この他にはユース・バンド(Youth band)やチルドレン・バンド(Children band)、また大学バンド(University brass band)などが少数あるのみです。

そのため英国では参加者の年代などによる組分けではなく、各バンドは演奏レベルや実績に基づいてセクションと呼ばれる各コンテスト共通の指標となる五つの組み分けをされ、課題曲もそれぞれのセクションごとに異なるレベルのものを演奏します。

またこのセクション分けというのは、その年度と過去2年間の各コンテストの成績によって毎年上位2~3団体と下位2~3団体が入れ替わります。(例:チャンピオン・セクションの最下位がファースト・セクションにランクダウンし、ファースト・セクションの一位がチャンピオン・セクションに入れ替わる。)

少しわかりづらいと思いますのでより詳しく解説をしていきます。

チャンピオン・セクション(Champion section)

英国の金管バンドの中でも最上級のセクションで、例えばCory band, Foden’s band, Black Dyke band, Brighouse and Rastrick band, Tredegar bandなどがこのセクションのバンドです。(4barsrest 2023年6月ランキングより)

ほぼ全ての奏者がアマチュア奏者(楽器の奏者以外の仕事を主にしている人たち)ですが、指揮者やプリンシパル奏者(首席奏者)がプロやセミ・プロ(奏者としての仕事も並行してしている人)のバンドもあります。

英国における最上級のセクションということで、そこで競われる各コンテストの課題曲というのは実質その年の最も難易度の高い作品と言っても良いほど難しいものばかりです。

しかし、それゆえそうした最難関の作品を毎年吹きこなしていくチャンピオン・セクションの指揮者や奏者たちは猛者ばかりで、英国金管バンドのレベルの向上、また金管バンドというジャンルの発展に多大なる貢献をしています。

以下動画は英国金管バンド界で最も歴史のあるコンテストBritish Openより

ファースト、セカンド、サード・セクション(First, Second and Third Section)

俗に下位セクション(Lower section)とも呼ばれるのがこれらのセクションです。ファースト・セクションに関しては個々の技量はチャンピオン・セクション級の奏者も多数いますが、バンド全体での演奏レベルや、指揮者や課題曲との相性、演奏順などの不確定要素をはじめとした様々な要因でファースト・セクションと組分けされていることが多いです。そのレベルは最上級ではないというだけで決して低いわけではなく、その証拠にチャンピオン・セクションで使用されたコンテスト用課題曲(最難曲)が翌年のファースト・セクション・コンテストで課題曲として用いられるほど、その要求されるレベルは高度です。

またセカンド、サード・セクションもトップ奏者たちの技量は高く、各バンドはより良い奏者を、各奏者はより良いバンドへの移籍を狙っているため、常に熾烈な座席争いが起こっています。

以下の動画は各セクションに組分けされるバンドの演奏ですが、それぞれにレベルの幅がありますので、動画が各セクションの平均値というわけではありません。

全て2023年6月現在のセクション階級です。

ファースト・セクション・バンド(BTM Band)

セカンド・セクション・バンド(Tullis Russell Mills Band)

サード・セクション・バンド(Kilmarnock Concert Brass)

フォース・セクション(4th Section)

五つあるセクションの最下層がフォース・セクションです。このセクションのどのバンドも当然の如く上位を目指し活動していますが、なかなか入れ替わりは難しいようです。というのも近代化によってこれまで多くのバンドをスポンサーとして支えてきた会社などの廃業、またはスポンサーからの撤退、それらによりバンドの数が減ってきていることがあげれらますが、詳しい内容は以前書いたこちらの記事からご覧ください。

バンドの数や奏者人口が減り、さらに良い奏者はすぐに上位のセクション・バンドに引き抜かれてしまいます。奏者としても少しでも良い条件(演奏レベル、スポンサーの有無など)のバンドで演奏したいという思いがありますので仕方のないことかもしれません。なのでこのフォース・セクションで勝ち上がり、サードやセカンドセクションへのし上がるというのはとても困難を極めます。そのような中でバンドを存続させ、さらにコンテストで上位を狙うというのはある意味チャンピオン・セクションで勝ち残るのと同じぐらいの難易度かもしれません。

フォース・セクション・ブラスバンド(North Lakes Brass Band)

このように日本の吹奏楽コンクールとは少し違い、完全なる実力主義でその出場区分の変わる英国金管バンドのコンテスト、来週はさらにコンテストについて深掘りしていきますので、ぜひお楽しみにお待ちください。

ちなみに最初にお載せした写真は河野が2013年ノルウェーで開催されたヨーロピアン選手権でコーリーバンドとともに優勝した時の写真です。恐らくアジア人では初のタイトルでしたので、なおさら嬉しかったのを覚えています。

というわけで、本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Besson アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。

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