【私と吹奏楽】興味の先にあるもの(藤原 規生 先生)

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吹奏楽やブラスバンドの指導の方にとって、吹奏楽とは?バンドとは?音楽とは?

全国の指導者の方々、 そして、バンド活動にがんばるメンバーたちへの応援の気持ちをこめて、現場の指導者の方の「声」をご紹介いたします。

※ミュージックエイトHPに掲載のコラム「私と吹奏楽」より引用

東京都・私立小野学園小学校・藤原 規生先生にお話を伺いました。

 私の勤める小野学園小学校では、毎年11月に音楽会を行っている。私学ということで学校行事が多く、さまざまな体験学習を通して子どもたちは成長していくわけだが、なかでもこの音楽会はホールを借りての唯一の対外的な行事であり、ご家族をはじめたくさんのお客様の前で緊張と充実感を味わうことになる。慣れないライトを浴びながら演奏する眼差しは真剣そのものだ。下級生は上級生を憧れと尊敬の念を持って見つめ、上級生は自分の過去と照らし合わせながら優しさを持って下級生を見つめる。6年生は、会全体の運営にも携わり、リーダーとしての自覚を身につけていく。私にとってこの2学期がメインシーズンであり、シーズンオフの1学期と3学期の子どもたちとの過ごし方が、11月の音楽会をいかに充実させるか左右することになる。音への意識、歌う喜び、友と一緒に合わせる喜び、人前で緊張する体験、ソルフェージュカの向上等々のテーマを授業の中に取り入れている。

 1学期中旬から末にかけて選曲をし、子どもたちに楽譜配布と同時に楽曲の発表を行うのだが、名前を記入し製本やファイリングをさせ、自分の音楽という意識を高めさせている。その時「去年よりもぺージが多い」「歌詞に英語の歌詞が入っている」「あの楽器がやってみたい」と無邪気に口にしている姿を見る度に、子どもたちの自然な興味を一番大切にしなければと思う。なぜなら、その興味の先に子どもたちのやる気と可能性が隠れているからだ。

 合奏ではまず全員でリコーダーに挑戦させる。少し要領の良い子はすぐにすべての音符に音名を記そうとするが、記入のルールをこちらから与え、考えさせることによって、子どもたちは次のステップに進む。たとえば同じ音が続く場合や隣りの音に順次進行する場合は、わかりやすいので音名は書かないように暗示する。必ず鉛筆で記入しわかるようになったら消すようにという指示も加える。音楽的素養のある生徒には、苦手な子たちと一緒に考えるよう伝える。本校の音楽会は全校生徒参加という形式なので、皆で取り組む意義がある。だからこそ一緒に高め合うことを主眼に置くことで、子どもたちはより一層協力するのである。私が方向付けしたことは、次の時間には子どもたちなりに深めているようだ。その積極性があれば、多少の音楽的な軌道修正はすぐに施すことができる。楽器決めや合唱のピアノ伴奏者はオーディションによって決めている。夏休み前に楽譜を配布するのはここに目的があり、子どもたちが緊張をいっぱい感じながら挑戦してくる様子は、何とも初々しくいじらしさを感じる。昨年一番驚いたことは、4年生の伴奏オーディションにトライした5人がすべて努力し、暗譜で弾けたり、弾こうとしていたということ。この話はすぐに他の学年に発表した。そうすると、他学年も違う形でまた新しい努力をするようになっていくのである。友達の努力に気づき大いに拍手を送り、そして自分のできることを探す。すべてをていねいに手取り足取りするのではなく、考える、取り組むきっかけをタイミング良く与えていくことを心がけている。

 子どもたちの興味の方向付けをし挑戦する心を導いていくことが達成感につながっていく。毎年このような小さなやり取りの積み重ねが、魅力的な音楽会・魅力的な一生の思い出となっていくのではないかと思う。もちろん部活動ではないので、できないことが多いのは事実だ。最初は楽器の名前すら知らない子でも、一つ一つルールを教えながらいくうちに自覚が芽生えていく。最後にはすべて暗譜で合奏し合唱する姿には、指揮をする私も含め聴く人の心を打つのである。本気で取り組めば本気で返してくれる子どもたちの無限の力に驚きながら、大好きな音楽を通して子どもたちの前に立てることを心から幸せに思う。

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