皆さま、こんにちは。
今年の6月は梅雨の曇り空で涼しい日が続いていると思っていたら、7月から連日の猛暑で夏を感じている日々ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
2026年がメモリアルイヤーとなる作曲家に、生誕110年を迎えたアルベルト・ヒナステラがいます。アルゼンチン生まれのクラシックの作曲家で、タンゴ界に革命を起こしたアストル・ピアソラはヒナステラの最初期の弟子です。ヒナステラの作品といわれて、吹奏楽関係者が思い浮かべる作品といえば、吹奏楽コンクールでも演奏実績のある バレエ組曲「エスタンシア」かと思います。そこで今回は、この作品の吹奏楽コンクールでの演奏をご紹介しようと思います。

バレエ「エスタンシア」
「エスタンシア」は、アメリカン・バレエ・キャラバンからの委嘱によって1941年に1幕からなるバレエ作品として作曲されました。ところが、初演の前にこのバレエ団が解散してしまったため、ヒナステラは原曲から4曲を抜粋し、演奏会用組曲を作りました。この組曲版は1943年にコロン劇場で初演されています。バレエ全曲としての上演はその後1952年にコロン劇場で初演され、バレエ全曲版よりも演奏会用の組曲版が先に演奏されたという珍しいパターンとなっています。
本作品のテーマは都会出身の若者とエスタンシア(大農園)の娘との恋愛です。若者は娘に恋をするが、勇敢なガウチョに比べて見劣りする彼に、娘は振り向かない。しかし、最終場面で若者はガウチョたちとのマランボ対決に勝利し、娘の心を射止める、というのが物語の大筋となっています。
近畿大学附属高等学校 (1994年)
バレエ組曲「エスタンシア」より
II.小麦の踊り Ⅳ.マランボ
作曲:A.ヒナステラ 編曲:仲田 守
関西吹奏楽コンクール
1994年(第44回大会) 金賞
演奏:近畿大学附属高等学校吹奏楽部
指揮:小谷 康夫
私が初めて聴いた「エスタンシア」の吹奏楽コンクールでの演奏は、近畿大学附属高等学校による1994年の関西大会での演奏でした。II.小麦の踊り のほのぼのとした温かくて優しい世界から、猛スピードで駆け抜けていくIⅤ.マランボ との対比が素晴らしく、人間味に溢れた熱さが大変魅力的な演奏です。
西宮市吹奏楽団 (2009年)
バレエ組曲「エスタンシア」より
III.牧童 II.小麦の踊り Ⅳ.マランボ
作曲:A.ヒナステラ 編曲:仲田 守
関西吹奏楽コンクール
2009年(第59回大会) 金賞
演奏:西宮市吹奏楽団
指揮:福原 隼人
西宮市吹奏楽団による2009年の関西大会での演奏は、変拍子の難曲で吹奏楽コンクールではなかなか聴くことができない III.牧童 が入っている貴重な演奏です。少し冷静過ぎる演奏だとは思いますが、バランスの良い美しいサウンドでの拍子やリズムの面白さが伝わる丁寧かつ楽譜に忠実な演奏で、作品の良さが純粋に伝わる演奏だと思います。
近畿大学附属高等学校 (2012年)
バレエ組曲「エスタンシア」より
I.開拓者たち II.小麦の踊り Ⅳ.マランボ
作曲:A.ヒナステラ 編曲:仲田 守
全日本吹奏楽コンクール
2012年(第60回大会) 銀賞
演奏:近畿大学附属高等学校吹奏楽部
指揮:小谷 康夫
2012年の近畿大学附属高等学校は、1994年以来18年ぶりに「エスタンシア」を自由曲に選び、悲願のコンクール全国大会初出場を果たします。快速なテンポで突き進んでいく I.開拓者たち、ゆっくりとしたテンポでフレーズの長い穏やかな歌が印象的な II.小麦の踊り、超速のテンポでトランス状態に入ったかのような熱狂的なノリが大興奮の Ⅳ.マランボ の各曲の音楽の描き分けがとても素晴らしく、私の記憶に強く残っている名演です。
あとがき
いかがでしたでしょうか。ヒナステラ作曲「エスタンシア」の、コンクールでの名演をご紹介しました。
私としては原曲のオーケストラ版も吹奏楽版も含めて「エスタンシア」をまだ生演奏で聴いたことがないので、メモリアルイヤーの今年に聴ける機会があれば聴いてみたいと願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

