【金管バンドナビ】#31 金管バンドの作曲家⑥クリストファー・ボンド

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

前回のフランス人作曲家シエリー・デレリエル特集から引き続き、今回は英国イングランドの新進気鋭の作曲家クリストファー・ボンド(Christopher Bond)、日本でも徐々に演奏される機会が増えてきた、イングランド南西部コーンウォールの作曲家についてご紹介します。

プロフィール

クリストファー・ボンド(Christopher Bond)は1992年生まれの英国南西部にあるコーンウォール(Cornwall)地方出身の作曲家で、2014年に英国王立ウェールズ音楽歌劇大学を卒業し、現在では作曲者としての活動の他に、指揮者や音楽監督業も行っています。

上記大学を卒業後の2015年からは、英国ウェールズの名門コーリー・バンド(Cory Band)のお抱え作曲家(Composer in Residence)となり、その活動の傍ら様々なバンドやソリストのために作品を提供しています。彼の作品は英国の多くの場所で演奏されているほか、英国々営放送である『BBCラジオ』やクラシック業界における人気ラジオ局『クラシックFM』などを通し世界中にボンド氏の作品が届けられています。

この他にも作曲者として、全英大会の地区予選の課題曲として彼の作品が選考されたり、2023年にはこの全英大会本戦の課題曲として『The Lost Village of Imber』が選ばれるなど大抜擢されました。

また英国のみならず、フランス、スイス、アイルランドの全国大会でも課題曲として彼の作品が選ばれ、さらに2015年には金管バンド業界のエンターテインメント・コンテストの頂点でもある『Brass in Concert』において、優れた新作を作曲した作曲家に贈られる『The Cyril Beere Award』を受賞しました。この時の作品がこちらの『Aristotle’s Air』です。

さらに2012年には英国王室によるダイアモンド・ジュビリー・ツアーの一環として、当時女王陛下であったエリザベス2世とエディンバラ公のご臨席のもと、このツアーのためボンド氏に委嘱されたThe Royal Diamond Jubilee Fanfare(Fanfare of a Nation)』が演奏されました。

また審査員としての活動にも積極的で、、その年の若手世代のもっとも素晴らしい奏者を決める『BBC Young Musician』、さらに『全英ユースバンド選手権』『ユニ・ブラス・ユニバーシティ・ブラスバンド・チャンピオンシップス』『全英大会地区予選』、そして『コーリー・バンド主催作曲コンテスト』など英国における金管バンドシーンの最前線で審査員として活躍もしています。

各種コンテストについてはこちらからご覧ください。

作品

ケルト音楽をルーツに持つコーニッシュ(Cornish、コーンウォール出身者の名称)ゆえか、非常に美しいメロディを創作し、また金管バンドの新しいサウンドや新たな領域を探求するかのような挑戦的側面もあり、実力を兼ね備えた若く勢いのある新進気鋭の作曲家として素晴らしい作品を生み出し続けています。

日本でも少しずつボンド氏の作品が演奏され始めていますが、まだまだ編曲作品への注目の方が多いのが現状です。しかし、さまざまなコンテストの課題曲となるような素晴らしい作品も多いのでぜひオリジナルの作品にも触れてみてください。

Storyteller(語り手)

2016年に作曲されたこの曲は先述の『Brass in Concert』のためにイングランドの強豪バンドの一つ『Brighouse & Rastrick Band』(ブリッグハウス & ラストリック・バンド)の委嘱によって作曲されました。同年『チャーリーとチョコレート工場』や『チキチキバンバン』で有名な児童小説家『Roald Dahl』(ロアルド・ダール)が生誕100周年を迎えたことからこの小説家を題材に作曲されました。曲中ではさまざまな楽器やパートをフィーチャーし、とりわけユーフォニアムとバリトンにフォーカスした箇所が特色として活きています。

Neverland(ネヴァーランド)

2020年に開催された全英大会の地区大会、この第4セクション(4th Section)の課題曲として作曲された作品。ケルト文化を色濃く残すコーンウォール出身の作曲家ということで6/8拍子の踊りのシーンや民族音楽的なハーモニーにリズムなど、とても個性あふれる作品となっています。

題名はその名の通り、『ピーターパン』からきており、曲自体以下の三つの主題から構成されています。

  • 『ネバーランドへ』(Journey To Neverland)
  • 『閉じた窓』(The Windows That Closed)
  • 『海賊船に乗って』(Aboard The Pirates Ship)

Song of The Night Sky(あの夜空の歌)

あるギリシャ神話を題材に英国のコルネット奏者トム・ハチンソンとコーリー・バンドのために作曲された作品。ある神話とは以下のような内容です。

『詩人で音楽家のオルフェウス、ギリシャ神話の中でオルフェウスの妻は毒蛇に噛まれ亡くなり、ハデスが支配する冥界に堕ちる。妻を助けようと父であるアポロン神に掛け合いハデスの許しの元冥界へ妻を助けに向かうが、オルフェウスはあと少しの所で失敗してしまう。その後妻を救えなかった苦悩と絶望に伏した彼の唯一の癒しは、巨岩の上でそよ風を感じ、広大な空を眺めることだった。』

切なくもとても美しいメロディとコルネットの音色がとても合う素晴らしい作品です。

最後に

今最も勢いのある作曲家の1人である「クリストファー・ボンド」についてご紹介しました。難易度の高い作品から演奏しやすいレベルの作品まで、現在もどんどん新作を発表されている人気作曲家ですので、ぜひみなさまの選曲案に入れてみてください。以下の動画でも彼の作品集をお聞きいただけます。それでは今回もありがとうございました。またお会いしましょう。


河野一之(Kazuyuki Kouno)

https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。

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