【金管バンドナビ】#23 日本の金管バンド②

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

先週の日本金管バンドの創成期特集に引き続き、今週は日本の金管バンドのコンテンストについて特集させていただきます。

日本で本格的な英国式金管バンド文化が花開いてまだまだ半世紀弱ですが、先達方のご尽力で日本にも金管バンドのコンテストは存在しています。

今回の執筆にあたり、文献になるほど昔でもなく、かといってネット上の記録もまだまだ乏しい2000年代始め頃のコンテストについて、様々な方のご尽力で情報を集めることができました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

日本の金管バンドコンテスト

これまでの金管バンドナビでご紹介してきた英国の金管バンド業界には多種多様なコンテストが存在し、そのコンテスト文化が英国の金管バンド文化の発展に大きく影響したことは間違いありません。

そして現在では英国をはじめ、スカンディナビア半島諸国や欧州、オーストラリア、ニュージーランド、そして北米などでもたくさんのコンテストが開催されています。そんな中日本でも少しずつコンテストが開催されます。

1960年代日本の金管バンド界では小学校で盛んになった鼓笛隊の延長線上のような小学校金管バンドが多くあり、順位を競うコンテストというよりかは、最優秀賞や優秀賞などの賞を与えるだけのバンド・フェスティバルという形のものだったようです。その後徐々に2000年代になると一般の金管バンドのためのコンテストの原型のような形のフェスティバルが開催されはじめます。

ジャパン・ブラスバンド・フェスティバル(Japan Brass Band Festival)

このフェスティバルは3部構成となっており、1部では主管であったネクサスブラスバンドのガラコンサート、2部では一部コンテスト形式の演奏(The Competing Bands)、3部では出演バンドと日本全国から集まった金管バンド奏者らによって構成されたマスバンドでの演奏でした。

この2部のコンテストでは、各バンドが用意した全ての曲を審査されるわけではなく、上記プログラムに載っている各バンドの曲目の中のOwn Choice March、つまり『自由選択マーチ曲』のみ審査をされ、その中で順位を競いました。審査員は英国BBC放送交響楽団の元トランペット奏者、名だたるチャンピオン・セクションの指揮者でもあったレイ・ファー氏(Ray Farr)が行いました。

2002年時点で5回目を迎えたこのイベントには日本中から以下のバンドが出演しました。
(カッコ内の数字は順位)

以下に当時のプログラムの抜粋を添付します。

マスバンド(合同バンド)の項目から、本当に日本中からたくさんの奏者が集まったことがわかります。

またこのイベントを調べるにあたり、日本ブラスバンド指導者協会理事長山本武雄氏並びに同協会副理事長関谷真氏、各バンドの奏者様やHPにて記録されていたイベント情報を参考にさせていただきました。
日本ブラスバンド指導者協会
ネクサス・ブラスバンド
東京シティ・コンサート・ブラス
ザ・NOB・高崎ブラスバンド

横浜開港祭ザ・ブラス・クルーズ・ブラスバンド・チャンピオンシップス

マーチのみでの審査や順位を決めずに各賞を与えるフェスティバル形式しか無かった日本金管バンドの大会ですが、2005年にはついに金管バンドのためのコンテスト『横浜開港祭ザ・ブラス・クルーズ・ブラスバンド・チャンピオンシップス』が開催されます。

主催は横浜開港祭ザ・ブラス・クルーズ・ブラスバンド・チャンピオンシップ実行委員会、共催は日本ブラスバンド連盟。審査委員は山本武雄氏、そして会場は洗足学園音楽大学の前田ホールで開催されました。まだ当時日本全国でも約40団体ほどしかバンドもなく、このコンテストに出場したバンドは以下の4団体でした。

コンテスト結果は最優秀賞に埼玉プレミアブラス第2位には国立音楽大学金管バンドが選ばれ、他2団体には優秀賞が送られました。

この大会ではアモーレブラスバンドと埼玉プレミアブラスが金管バンドで使われる金管楽器の奏者25人と打楽器3名という標準的な金管バンドの編成で出演し、花畑西小学校金管バンド部は標準の編成よりも奏者の数を増やした編成、国立音楽大学金管バンドはBbコルネット以外の金管楽器がオーケストラや吹奏楽で使用される金管楽器での編成でした。

その後2006年、2007年とこのコンテストは開催されました。

全日本小学生金管バンド選手権

全日本小学生金管バンド連盟によって2013年から始まった小学生により構成される金管バンドのためのコンテストです。

現在日本において唯一開催されてる金管バンドのためだけのコンテストであり、2021年には一次審査を勝ち抜いた15団体、児童数446名が出場したとても大きいコンテストです。

欧州大会同様、課題曲と自由曲の2曲を演奏するコンテストで参加資格は以下となっています。

  • 構成メンバーは小学生とする。
  • 参加人数は、15 名以上とする(指揮者は含まない)。
  • 小学生による、学校教育活動のバンド、社会教育活動のバンドとする。
    ※同一市区町村に存する2 団体以上の合同参加も可とする。
  • (但し、1 団体の構成員が15 名未満の場合に限る。)
  • 指揮者の資格は問わないが、課題曲・自由曲ともに同一指揮者とする。

またコルネットやフリューゲル・ホーンのパートをトランペットで演奏を行ったり、バリトン・ホーンをユーフォニアムでの演奏に代用することも認められています。

今年2023年は12月17日(日) 大津市民会館 にて第11回選手権が開催されます。

詳細はこちら 全日本小学生金管バンド連盟

今週は日本の金管バンドコンテストについてご紹介しました。大変残念ながら現存していないコンテストもありますし、まだまだバンドや奏者人口を増やすことも必要です。出場するにあたってのルールや審査員問題などまだまだ課題はありますが、業界全体でさらなる活性化を目指して頑張りましょう。

また日本では一般バンドよりも隆盛が早かった小学校の金管バンドでは、専門のコンテストも大きな盛り上がりを見せています。こちらも今後ますますの発展が非常に楽しみです。

本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。また来週お会いしましょう。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。

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