【金管バンドナビ】#8 金管バンドの楽器 コルネット

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

金管バンドといえば、金管楽器と打楽器で構成されているアンサンブルというのは周知のことだと思いますが、その楽器構成の中にはオーケストラや吹奏楽ではあまり使用されない楽器も入っています。というわけで、今週は金管バンドの楽器について知っていただき、どんな楽器がどんな役割を持っているのかご紹介いたします。

10種類の金管楽器

金管バンドというぐらいなので、このバンドには様々な種類の金管楽器が使われています。その数は細かく分けると10種類、この10種類を4声(ソプラノ、アルト、テナー、ベース)に分けて記載してみます。

ソプラノ音域

Brass Band Academyより

コルネット(Cornet in Bb)

一般的にコルネットと単体で呼ぶ際は、実音のシbを主音に持つコルネットを指します。このコルネットだけでも4つのパートに分かれており、限られた人員で最大効率の音楽表現ができるよう緻密に配置されています。それではその4つのパートをご紹介しましょう。

ソロ・コルネット(Solo Cornet)

ソロ・コルネットという名前なのでソロばかり演奏するパートと勘違いをされやすいですが、バンドのサウンドの要となり、主にメロディを担当するパートで、オーケストラで言えば第一ヴァイオリンのようなパートです。基本的には4名で構成され2列あるコルネットパートの前列に配置されます。指揮者に最も近い奏者がオーケストラでいうコンサート・マスターとして、首席奏者という意味のプリンシパル・コルネット(Principal Cornet)というパートです。このパートは他3人とは独立したソロパートを演奏します。常に4人でメロディを演奏することから、それぞれの音色や演奏、ヴィブラートまで統一をし、一糸乱れぬ演奏が必要なパートです。

リピアノ・コルネット(Repiano Cornet)

リピアノという言葉は、イタリアにおけるバロック時代の音楽(ヴィヴァルディ等)において、ソロに対し伴奏を担当するパートのことを示し、伴奏パートの中心的役割という意味の言葉です。その名前の通り、コルネットの中でも伴奏寄りの2ndコルネットや3rdコルネットのリーダー的役割と共に、ソプラノコルネットと同じ旋律を低い音域で演奏をしたり、ソロ・コルネットが奏でるメロディの補助、さらにフリューゲル・ホーンなどをはじめとした他パートとの曲中でのアンサンブルなどその役割は他のコルネットパートと比べ多岐にわたる何でも屋さん的な役割です。

セカンド・コルネット(2nd Cornet)

基本編成では2人で演奏されるセカンドは、ソロ・コルネットやリピアノ・コルネットを1stとすれば、このパートはその名の通り2nd的役割です。1stに比べて低めの音域での旋律やバンド全体におけるソプラノという声部において伴奏を担当するパートで、後述するサード・コルネット(3rd Cornet)と4人での協奏は時にまるでオーケストラにおけるフレンチ・ホルンのように太く響かせるサウンドからミュートを駆使した弱奏まで幅広い音色と役割を持つパートでもあります。

サード・コルネット(3rd Cornet)

セカンドパート同様このサードも2人のコルネット奏者によって演奏されます。楽器自体はソロ・コルネットたちと同じBbコルネットを使用しますが、その音域はこのソプラノパートの中でも最低音域で、コルネットパートの中でのハーモニーの要であったり、アルト声部との架け橋となり、その音色やバランスの調和を生み出すとても重要なパートです。他のコルネットパートよりも難易度が低いことからコルネット初心者が最初に始めるパートとしても有名です。(もちろんこのパートにはこのパートの難しさがあるのは書くまでもありませんが)

Ebコルネット(Cornet in Eb)

ソプラノ・コルネット(Cornet in Eb)
実音のミbを主音に持ち、ソプラノ音域であるコルネットの中でも最高音域を担当しています。(このコルネットだけ通常のコルネットよりも管の短いEbコルネットが使用されます。。基本的に金管バンドの編成では1本のみ配置され、英国では、これまでご紹介した通常のプリンシパル・コルネット(首席コルネットパート)、リピアノ・コルネットと人気を分かつパートです。僕が英国で最初に入ったバンドのソプラノ奏者はあまりのハイトーンの連続にコンテストで最後の音を伸ばしきったあと失神したと話していました。これは極端な例ですが、非常に高い息の圧力を必要とする難易度の高いパートです。

コルネットパートの配置

先ほど載せたこの写真↓

the brass band academyより

それと下の写真↓

1枚目の写真でカラーになっている部分に座っているのが通常編成でのコルネットパートの座席ですが、時に作曲者からの指示、指揮者のアイディアなどでフロント・ロウ(Front row=前列という意味)にいるソロ・コルネットが通常トロンボーンがいる位置で立奏、そしてバック・ロウ(Back Row=後列)も立奏という形態にすることで、ベルの向きが変わり見た目にも音の響き的にもより立体的になり聞こえが変わります。

ミュート

また金管楽器にはコルネットからベース(チューバ)まで様々な種類のミュート(消音器)が使われ、音量を落として行う弱奏のための機能の他にも、様々なミュートをはめることにより音色を変え、演奏に彩りを加えることも多々あります。特に金管バンドにおけるコルネットでは様々なミュートが使用され、金管楽器と打楽器のみで演奏されるこのアンサンブルでは、色彩をより表現豊かにすることに対して他のジャンルよりも工夫が必要な金管バンドの楽曲演奏に一役買っています。

ここまで書いてきた通り、オーケストラにおけるヴァイオリンや管楽器の高音セクションのようなパートを担当しているのがコルネットです。もともとはピストンもヴァルヴも付いていなかったビューグルや郵便配達員が使うポストホルンなどが大元でしたが、1820年代のフランスでピストンが取り付けられ現在のコルネットの形になったと言われています。(余談ですが、この40年後の1865年、史上最初のコルネットの巨匠と言われるJ. B. アーバンがかの有名なアーバン金管教本を出版)

というわけで、今回はコルネットパートについて解説してみました。

ソプラノ音域のコルネットと一口に言っても、Eb管を持つソプラノ・コルネットを含めると、5つのパートが存在します。金管バンドは200年以上の歴史の中で効率的な配置を確立させてきましたので、それぞれのパートには奏者の適性を考慮して配置することをおすすめします。

本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
次回はアルトパートのフリューゲルホルンとテナー・ホーン(アルト・ホルン)です。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Besson アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。