【金管バンドナビ】#47 全ノルウェー大会2025

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

旧年中は大変お世話になりました。2025年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、2024年末に公開いたしました総集編お楽しみいただきましたでしょうか?2024年に開催された様々なイベント、そして今年また始まる世界中のコンテスト情報など詰め込ませていただきましたが、今回はそのコンテスト情報から筆者が注目している直近のコンテストをご紹介します。

ぜひこちらをお読みいただき、実際のコンテストをお楽しみいただければ幸いです。

全ノルウェー大会(NM Brass 2025)

ノルウェー全土から集まった強豪バンドたちの中の王者を決める大会『NM Brass』が今年も開催されます。1979年に創設されたこのコンテストは、英国のコンテスト(1853年から開催)に比べるとまだまだ歴史は浅いのですが、そのレベルはとても高く、過去にはノルウェー・チャンピオンが欧州選手権や世界音楽コンテストで優勝を果たすなど、ノルウェー国内のバンドのレベルの高さが伺えます。

また驚くべきことに、1993年から始まった最上級にあたるエリート・セクション(それまでは1st & 2nd Sectionのみ)では、これまでの32年間で常に4バンドのみで優勝争いをしており、バンド同士のレベルの差にも特徴があるようです。以下にその4強をご紹介します。

  • Eikanger-Bjørsvik Musikklag (1949年創団、過去16回優勝(内4連覇2回)、現王者)
  • Manger Musikklag (1922年創団、過去6回優勝、前回大会2位)
  • Sandefjord Brass Symposium (1987年創団、過去3度優勝)
  • Stavanger Brass Band (1981年創団、過去5回優勝)

ヨーロピアン選手権においても大会初年度である1978年こそ下位の順位に甘んじていたノルウェー勢でしたが、その後たった10年で強豪ひしめく英国勢すべてのバンドを追い越しアイカンガー(Eikanger-Bjørsvik Musikklag)がヨーロピアン選手権1988の優勝杯を史上初めてノルウェーに持ち帰りました。(なんとその翌年も連覇)

コンテスト概要とスケジュール

このコンテストは最上級であるエリート・セクションから5thセクションまでの全6セクションのコンテストです。金管バンド業界において、国レベルで言えば古くから英国のライバルともいえるノルウェー全国大会2025の情報です。

2月7日、8日開催

会場:グリーグ・ホール(The Grieg Hall(英語の公式サイトに飛びます。))

2/7(ノルウェー時間)

・ペール・ギュント・ホール(グリーグホール同建物)
9:00~ 5thセクション
15:45~ 3rdセクション

・グリーグホール
9:30~ 2ndセクション
16:00~ エリート・セクション(最上級)課題曲

2/8

・ペール・ギュント・ホール(グリーグホール同建物)
10:00~ 4thセクション

・グリーグ・ホール
8:30~ 1stセクション
14:45~ エリート・セクション自由曲
21:00~ 表彰式と祝典演奏
22:30~ ブラス・ナイト

課題曲と自由曲

英国のコンテストと異なり、最上級であるエリート・セクションを除き1stから5thまでのセクションは自由曲のみの審査です。また上記のスケジュールの通りエリート・セクションだけは初日に課題曲、そして2日目に自由曲とまるでヨーロピアン選手権のような構成となっています。(ヨーロピアン選手権については以下のリンクよりご覧ください。)

各バンドがどのような自由曲を選曲するのかも見どころの一つですが、今年のエリート・セクションの課題曲は『金管楽器と打楽器のためのカタルシス / ケティル・ジョンネ』です。(CATHARSIS for Brass Band and Percussion / Kjetil Djønne)

もともとジョンネ氏によって2022年金管バンド用オリジナル作品として作曲をされ、その翌年の2024年改訂版が出版、このカタルシス2024年改訂版が今回課題曲として設定されました。

作曲者のケティル・ジョンネ(1996年生まれ)は、ノルウェーの都市ベルゲンのグリーグアカデミーおよびスタヴァンゲル大学で学び、現在は作曲家、編曲家、指揮者として活動しています。ジョンネ氏は複数のジャンルを融合させる作曲技法が得意で、特に民族音楽やジャズ、ポピュラー音楽やクラシック作品まで幅広いジャンルを組み合わせた作曲が特徴的です。

金管楽器と打楽器のためのカタルシス』は、音楽を通じカタルシスの意味の一つである『浄化』を探求する作品であり、精神的な刷新や道徳的な曖昧さからの解放をもたらすプロセスを描いています。この言葉の語源は古代ギリシャに由来しますが、現代語での使用は18世紀後半に発展しました。
曲中では、カデンツァやアンサンブルなどの多様な音楽的要素を通じてカタルシス的な問いを投げかけていきます。またジョンネ氏の得意とするさまざまな音楽のスタイルをもちいたテンポ、スタイル、音楽のテクスチャ、拍子における変化を経ながら進んでいきます。音楽は、叙情的な表現から構造主義へ、鮮やかな色彩から淡いトーンへ、不安定な状態から静穏へ、さらにはジャズ的な間奏から壮大なパートへと至る過程を表現しています。

ライヴ・ストリーミング配信

このコンテストは金管バンドナビで毎度お馴染みの『WoB Play』での配信ではなく、例年『BrassPass.tv』というWoB Playと同じようなサブスクリプション・動画配信サービスによって視聴が可能です。今年2025年のノルウェー大会の情報はまだ載っていませんが、例年配信されていることから今年もおそらく配信されると思われます。

また一度サブスクを行えば過去のアーカイブもご覧になれますので、ノルウェーの他にもオランダやデンマーク、ベルギーなどの他ヨーロッパ諸国のコンテストも視聴可能です。最新のものですと2024年12月に開催されたベルギー全国大会が配信されています。

BrassPass.tv(英語サイト、視聴有料)

最後に

2025年初頭は日本国内からでもオンラインにて視聴が可能なコンテストと英国のコンテストを中心にご紹介させていただこうと思います。課題曲や自由曲で使われるような『コンテスト・ピース』にはスタディ・スコア(Study Score)という実際に演奏で使用する用ではなく学習用や楽曲をより楽しんで聴く用のスコアも販売されていますので、ぜひみなさまお茶の間でスコア片手に配信をご覧になってはいかがでしょうか?

前回の総集編にて2025年1年間の筆者注目コンテストも記載しておりますので、もし特集をご希望のコンテストや楽曲などございましたらドシドシご連絡ください。

今回も誠にありがとうございました。それでは、また次回お会いしましょう!


河野一之(Kazuyuki Kouno)

https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。

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