【吹奏楽ナビ】#70 クラリネットアンサンブル③【B♭クラリネットのみ七〜八重奏】

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皆さま、こんにちは。

夏の吹奏楽コンクールシーズンは県大会が終わって一段落しましたが、この時期は秋から始まるアンサンブルシーズンの選曲時期にもなっています。以前の記事(#16,#17)でアンサンブルコンテスト向けのクラリネットアンサンブルの名曲をご紹介しましたが、今回はB♭クラリネットのみの7重奏~8重奏の編成によるアンサンブルコンテスト向けのクラリネットアンサンブルの作品をご紹介します。

クラリネット7重奏

エレージア、リトミカ、サンバ・オスティナート/森田一浩

エレージア、リトミカ、サンバ・オスティナート 
Elegia, Ritmica and Samba-Ostinato
作曲:森田 一浩 Morita Kazuhiro
編成:Bb Clarinet 1~7

エレージア、リトミカ、サンバ・オスティナート は、1980年に東京クラリネット・アンサンブルと東京・田無市の音楽会グループ「市民コンサート虹の会」の委嘱により作曲されました。「作曲にあたっての意図は、特殊管を含まない楽器のみでいかに変化を出し、またどこまで一体となって絡み合えるかということにあった。したがって、7本のクラリネットはどのパートをとっても技術的な高低はなく、それぞれが主役を受け持ち、影武者にも回る。」と作曲者である森田一浩さんの言葉がスコアに書かれているように、どのパートにも目立つところがあり、パートによって音域が偏ることがなく7番パートにも高音域がでてくるなど、7人のプロ奏者を想定して作曲されたことがよく分かります。

東京クラリネット・アンサンブルのCDに3曲目の「サンバ・オスティナート」のみが収録されていたこともあってか、昔のアンサンブルコンテストではこの曲のみが演奏されていました。最近ではあまり演奏されていませんが、実力のある7人が揃っていれば是非挑戦してほしい作品です。

こちらは、私が所属している クラリネットアンサンブル LINK YOUR SUMMER による演奏です。私が知る限り、リトミカは音源としては初出で、エレージアもCD音源は出ていないと思われるため、全曲通しての収録は初だと思います。

クラリネット8重奏

フォア・デュ・トローヌ/阿部勇一

フォア・デュ・トローヌ la Foire du Trône
作曲:阿部 勇一 Abe Yuichi
編成:Bb Clarinet 1~8 (Optional 8th part: Bass Clarinet in Bb)

フォア・デュ・トローヌとは、フランス・パリの春の風物詩といわれる移動式遊園地のことで、森の中に3月末から5月末の2か月だけ現れるのだそうです。作曲者の阿部勇一さんは「委嘱頂いた長野県飯田市で活動する『ソノール・クラリネットアンサンブル』の皆さんは全員女性ということで、その華やかさと気品と快活で賑やかな雰囲気を活かせる曲にしたいと思いこのテーマを選びました。この作品を通じて、フランス・パリのどこか軽やかでお洒落で楽し気なイメージを上手く表現して頂ければ、作曲者として嬉しく思います。」と楽曲解説に書いています。

私がこの曲を初めて知ったのは、東京都アンサンブルコンテストでの国本女子高等学校の演奏でした。その後、2023年の全日本アンサンブルコンテストで岡山学芸館高等学校が演奏したことによって広く知られるようになったと思われるのですが、今では支部大会でこの曲が演奏されているのを見ることができます。

こちらは、私が所属している クラリネットアンサンブル LINK YOUR SUMMER による演奏です。

花ふぶき/福島弘和

花ふぶき Sakura Flurry
作曲:福島 弘和 Fukushima Hirokazu
編成:Bb Clarinet 1~8

花ふぶき は、2021年に埼玉県立伊奈学園総合高等学校の委嘱により作曲されました。同族楽器によるアンサンブルならではの音色のグラデーション効果を狙った作品で、16分音符で細かく動くフレーズが、花が散る時の美しさや華やかさ、儚さを表現しています。英題の「Sakura Flurry」から分かるように、作曲者の福島弘和さんは「桜吹雪」を描いており、クラリネットの柔軟性を生かしながら表現の多様性を追求できる作品だと思います。

2022年の全日本アンサンブルコンテストで埼玉県立伊奈学園総合高等学校が演奏してから、私が知る限りではこの曲が支部大会で演奏されているのを見たことがありません。8人が美しい音色であることは必須で、アンサンブル的にも難易度が高いですが、是非挑戦してほしい曲です。

こちらは、出版社の参考音源(電子音源)になります。

クラリネットアンサンブルの演奏会のご案内。

動画でもご紹介させていただきました、クラリネットアンサンブル LINK YOUR SUMMER の演奏会が、来月の9月9日(火)19:00から、ルーテル市ヶ谷ホールで開催されます。
今回ご紹介した「フォア・デュ・トローヌ」「花ふぶき」の他、委嘱作品を含めた3〜8重奏のクラリネットアンサンブル作品を演奏するプログラム前半に、今演奏会のための山田武彦さんの委嘱編曲によるブラームス作曲の「6つの小品」を演奏するプログラム後半と、クラリネットアンサンブルの魅力に溢れた演奏会になっておりますので、お時間がございましたら是非ご来場いただけると幸いです。
チケットのご予約はチラシ裏面に記載のQRコードから、お問い合わせは link.your.summer@gmail.com までお願い致します。

LINK YOUR SUMMER の X のアカウントでは、演奏会に関する情報を発信していきますので、こちらも是非ご覧いただけると幸いです。

あとがき

いかがでしたでしょうか。アンサンブルコンテスト向けの、B♭クラリネットのみの7重奏〜8重奏の編成による作品をご紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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