みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
あっという間に2025年も1月を過ぎ、2月が始まりました。時間の経過の速さに驚きっぱなしですが、みなさま金管バンドは楽しんでおられますでしょうか?
今年も激アツなコンテストが目白押しですが、早春の2月も英国の各地でさまざまな金管バンドコンテストが開催されます。Youtubeや各種ライヴ配信でご覧いただけるものもありますで、ぜひ本場である欧州金管バンドの”今”をお楽しみください。
ユニ・ブラス 2025

ユニ・ブラスとは『The University Brass Band Championships of Great Britain and Northern Ireland』の略で、音楽大学を含めた英国全土にある大学に所属する金管バンドによるエンターテイメント形式のコンテストです。(課題曲などがあるわけではなく、決められた尺のコンサート形式のステージを行い、その出来で勝敗を決めるコンテスト)
ユニ・ブラスについての詳細は、過去の記事よりご覧ください。
今年は英国全土から23校、約750名にも渡る大学生バンズマンが集まります。また開催地は、筆者も留学していたイギリス・ウェールズの首都である『カーディフ』での開催ということで、審査員にも見知った名前(コーリーバンドメンバーや他トップセクションバンドの奏者など)がたくさんあり、 彼らがどのようなジャッジを降すかもとても楽しみです。
以下に今年ユニ・ブラスコンテストの概要をお載せしますので、もし期間中にカーディフに行かれるようでしたらぜひご鑑賞ください。またもし日本国内にいる場合でも例年ユニ・ブラスYoutubeアカウントにて一部の演奏が視聴できますので、ぜひご覧になってください。
ユニ・ブラス2025コンテスト概要

下位セクション『シールド』、上位セクション『トロフィー』共に同日での開催です。
開催日:
2/15(土)10:00~22:00
開催地:
カーディフ大学『グレートホール』ならびに同大学音楽学部『コンサートホール』
カーディフ大学ホームページ(英語)
https://www.cardiff.ac.uk/
チケット:
子ども(16歳以下):£10~
学生:£13~
一般:£18~
チケットは全部で3種類用意されており、『コンテストのみ』、『ガラコンサートのみ』、『全てのプログラム』となっています。
チケット販売ページ(英語)
https://www.unibrass.co.uk/event-details/unibrass2025
コンテスト内容
ルールとして主に以下のものを守らなければなりません。
・全てのバンドは20分以内のプログラムを演奏(超過分は減点)
・3週間前までにスコアのコピーを提出
・バンド名に必ず所属大学名が入っていること
下位セクション『シールド』部門出場バンド
審査員:クリストファー・ボンド(作編曲家、コーリーバンド常任作曲家)、エミリー・エヴァンス(フラワーズバンド首席テナーホーン奏者)
- King’s College London(イングランド)
- University of Sheffield & Sheffield Hallam(イングランド)
- Bangor University(ウェールズ)
- University of Cambridge(イングランド)
- Cardiff University(ウェールズ)
- University of the West of England(イングランド)
- University of Nottingham(イングランド)
- Keele University(イングランド)
- University of Bath(イングランド)
- University of East Anglia(イングランド)
上位セクション『トロフィー』部門出場バンド
審査員:エルサ・ラッセル(コーリーバンド首席テナーホーン奏者)、マーク・ウィルキンソン(フォーデンスバンド首席コルネット奏者)
2025年のトロフィーセクションのバンドは全てイングランドの大学バンド
- Oxford University
- University of Warwick
- Southampton University
- University of Chichester
- University of Huddersfield
- Royal Holloway
- Manchester and Salford Universities
- University of York
- Lancaster University
- Durham University
- Leeds and Leeds Conservatoire
- University of Birmingham
スコットランドと北アイルランドからの参加は?

上記データを見てみると、英国の大学生バンドのコンテストというわりにはスコットランドならびに北アイルランドの大学バンドの出場が過去にもないようです。(Brass Band Results調べ)
これには恐らくですが理由があり、イングランドやウェールズ(以後E&W)はスコットランドや北アイルランド(以後S&NI)に比べ金管バンドが盛んであり、E&Wでは様々な大学でも金管バンドが学生たちによって楽しまれる文化が発展しました。しかし、それとは対照的にS&NIでは大学によって構成されるバンドはなく、その代わりに金管バンドを行いたい人は地域のバンドへの参加が多いようです。
またユニ・ブラスが始まり長年開催されてきた地域がイングランドということもあり地理的にS&NIからでは遠く、奏者ならびに楽器などの機材の運搬が学生にとっては負担が大きくなりすぎるために大学バンドの少なさと相まってS&NIからの参加が少ないように思えます。(2011年にこのコンテストが開催されてからウェールズでの開催は今回含めたった2回)
賞が豊富
以前ご紹介した『Brass in Concert』と同様に、エンターテイメント力を競うコンテストとしてこのユニ・ブラスにも多くの賞が設定されています。
- 最優秀エンターテイメントバンド賞
- 最優秀学生指揮者賞
- 最優秀ソリスト賞
- ベストマーチ賞
- 最優秀打楽器セクション賞
- ベスト・イノベイティブ・プログラム賞
- 観客賞
このように細かく様々な賞が設定されていることで、参加バンドや指揮者、そして各楽器のセクションや奏者のモチベーションを上げる役割があります。見ている側としても、どのバンドがどの賞を受賞するか予想しながら見るのも楽しいです。
筆者注目バンド
今年、筆者の注目バンドは2バンドで『University of the West of England』(以後UWE)と『Oxford University』(以後OU)です。
UWEは新設のバンドで昨年2024年9月の創設、また創設者はUWEで教鞭を取られているアンリ・ アダチ女史です。彼女はコーリーバンド音楽監督のフィリップ・ハーパー氏の配偶者でもあります。また今年のOUの指揮者がエスメ・ハーパー女史、上記夫妻の御息女ということでシールドセクションとトロフィーセクションという異なったセクションではありますが、ハーパー一家が同コンテストで指揮を振り合うという漫画のような展開が繰り広げられます。(以前にもサイクス一家が父と息子同士で同じコンテスト、同じセクションで鎬を削り合うという展開もありました。)
日本でも少しずつ増えてきていますが、英国では古くから家族や地域で取り組む金管バンド文化が日本と比べてより深く根付いているためこのようなことが起きます。
最後に
今年も熱戦が繰り広げられそうなユニ・ブラス2025。一般バンドと違い学生が主体となって運営をしていることから、一般バンドでは出せないフレッシュな演奏や奇抜な演出などさまざまな演奏が楽しめるコンテストです。なかなかこの時期にウェールズにいることはないと思いますので、ぜひユニ・ブラスYoutubeチャンネルでの更新を楽しみに注目していきたいところです。
今回も誠にありがとうございました。それでは、また次回お会いしましょう!
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスブラスバンド指導者協会理事。