みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
欧州やアメリカと比べると日本から近いオセアニア地域ですが、この地域でもたくさんの金管バンドやコンテストが存在しています。前回の「#37 オセアニア地域の金管バンドとコンテスト①」から引き続き、今回もオセアニア地域の金管バンドとコンテスト②のご紹介です。
筆者自身も今年7月に出場するコンテストなども合わせてご紹介しますので、ぜひ最後までお楽しみください。
ニュージーランドの金管バンド
イギリスからの入植者たちがニュージーランド(以後NZ)に入植した1840年、それから3年としないうちにNZにおける最初の金管バンドが首都であるウェリントン(Wellington)で誕生しました。
その後1880年3月にはグランド・ミリタリー・コンサート(A Grand Military Concert)が開催され、その中で6バンドが優勝を競い合いました。このコンテストがNZにおける最初のコンテストとされています。(資料には「残念なことに審査員はいなかったが、観客投票ののちインヴァーカーギル・ガリソンバンド(The Invercargill Garrison Band)が最優秀賞を受賞した。」という記録が残ってます)
以下の画像より原文が載っているサイトに飛びます。
その後1931年には、現在も活動しているニュージーランド・ブラスバンド協会も発足され、以降NZにおける金管バンド活動をサポートしています。
ニュージーランドのバンド
NZに入植者と共に金管バンドが伝来し約180年、現在では51団体もの金管バンドが存在し、1,800人もの人がバンドへの在籍やバンド活動に関わりを持っています。
本日はこの中から、NZ北島の南先端に位置するウェリントンを中心に活動する2バンドご紹介します。
ウエリントン・シタデル・バンド(Wellington Citadel Band)
救世軍のバンドで、日本には過去5回も来日しツアーをしています。
1883年から存続する歴史ある救世軍バンドで、初めての日本ツアーは1979年に行われ日本各地を巡りました。以下の動画は2019年に来日ツアーを行った際に日本救世軍バンドとのマスバンド(大編成アンサンブル)の様子です。
ウェリントン・ブラス(Wellington Brass)
次に紹介するのは、NZの金管バンドのグレード制(レベル分けのような制度)において、最高グレードである”Aグレード”の一般バンド、ウェリントン・ブラスです。
1905年創団の歴史のあるバンドで、後述するNZのナショナル・コンテスト(NZにおける全国大会)において現5連覇中の強豪バンドでもあります。
2016年にはコンテストでの実績から、英国で開催されているブリティッシュ・オープンにも出場するなどそのレベルの高さは世界中で評価されています。
また若手奏者の育成や金管バンド文化の継承にも熱心で、ウェリントン・ブラスという組織の中に
- Champion Premier Band (Aグレードを保持している本体)
- A Social Band (D Gradeのバンド)
- Buzzing Youth Brass(ユース世代育成のためのバンド)
これら3つの団体によってウェリントン・ブラスは構成されています。
以下の映像は2022年のNZ全国大会での演奏です。
NZブラスバンド・チャンピオンシップス(National Championships)
次にNZで開催されているコンテストのひとつをご紹介します。NZブラスバンド・チャンピオンシップスは1880年から開催されている歴史あるコンテストで、英国や欧州のコンテストとは違い、5日間の中で以下のプログラムが開催されます。(金管バンド部門としては下4項目です。)
- ソロ・コンテスト(ユース部門と年齢制限なしの部門、さらにコンテスト上位入賞者による優勝決定戦)
- 小編成アンサンブル・コンテスト
- 行進曲(実際に行進をしながら演奏するパレード方式)
- 讃美歌(各自で選曲)
- 課題曲(NZブラスバンド協会指定)
- 自由曲(各自で選曲)
以下のように行進曲や讃美歌、自由曲などについては事細かにルールが設定されており、このルールから逸脱した演奏を行うと減点となります。
以下例:行進曲パレードのルールより、一部抜粋
近年のAグレードでは先述したウェリントン・バンドが連勝していますが、今年はニュージーランドのバンドの他にもオーストラリア、香港、トンガ、そして日本からはImmortal Brass Eternallyと指揮者として私、河野一之が出場させていたくことが決定しています。ぜひみなさま、応援をよろしくお願いいたします。
またYouTubeブラスバンドチャンネル「Brass Banned」においてライブ配信が行われており、今年も配信があると発表がありましたのでぜひご覧ください。
以下大会中タイムテーブル(日本との時差あり)
例:大会開始が11:00AM(NZ)の場合、-3時間をした8:00AMが日本時間となります。
左端が日付と会場、真ん中が開始時間、右端が内容です。
Immortal Brass Eternallyは以下のスケジュールで出場しますので、ぜひご覧ください。以下、日本時間(JST)でのタイムテーブルです。
- 7/11 6:00(JST)から始まるソロコンテスト
- 7/12 11:30(JST)行進曲パレード
- 7/12 14:30(JST)讃美歌&課題曲
- 7/13 14:30(JST)自由曲
終わりに
金管バンド=この形態が生まれた国であるイギリスや欧州が注目されがちですが、南半球オセアニアという地域にも英国ゆかりの国々がたくさんあり、それゆえに金管バンドも200年近い歴史を持つ世界でも有数の金管バンド大国でもあります。
筆者自身も昨年オーストラリアに行き、AグレードであるBrisbane Excelsior Bandの指揮を振らせていただきましたがとても素晴らしいバンドでした。またオーストラリアの全国大会の様子を見てもそのレベルの高さはとても高いものでした。
この記事が配信される直近には先述のNZ全国大会が開催されますので、日本との時差も近いことからぜひ配信のご視聴、または直接現地NZはオークランド(Auckland)でお会いしましょう!
今回もありがとうございました。
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。
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