【吹奏楽ナビ】名曲・名演紹介#24

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皆さま、こんにちは。

今回は、2011年全国大会高校の部の演奏をご紹介しますが、この年の全国大会高校の部と演奏団体の精華女子高校について少しご紹介しておきましょう。

1972年に全国大会の会場として初めて使用された普門館は、1977年以降ずっと中学・高校の部が開催されていた(改修工事で使用できなかった2005年を除く)会場でしたが、2012年の耐震調査で天井について十分な耐震性が確保されていないことが判明して使用停止となってしまい、2011年が普門館での最後の年となってしまいました。奇しくも2011年の高校の部では名演が数多く生まれ、普門館ラストイヤーの年と合わさって記憶に残る年となったのです。

精華女子高校は九州支部の名門高校で、1990年に全国大会に初出場してから現在までほぼ毎年全国大会に出場しています。2015年からは櫻内教昭先生が指揮をされていて素晴らしい演奏を残していますが、2014年まで指揮をされていた藤重佳久先生の時代が私の世代的にも強く印象に残っています。

私は藤重先生が精華女子高校ラストイヤーの2014年に全国大会での演奏を生で聴くことができ、2017年にプロのオーケストラ団員を中心としたメンバーによる「オーチャードブラス!」という演奏会に出演して藤重先生の指揮で演奏したことがあるのですが、藤重先生はとにかくアグレッシブでグイグイ引っ張っていってくれて頼りがいがある印象が強く残っています。

名演紹介 #24 宇宙の音楽/精華女子高(11年)

宇宙の音楽
作曲:P.スパーク


全日本吹奏楽コンクール
2011年(第59回大会) 金賞
演奏:精華女子高等学校吹奏楽部
指揮:藤重 佳久

フィリップ・スパークが作曲した「宇宙の音楽」は、2004年にヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンドの委嘱によってヨーロッパ・ブラスバンド選手権大会での同バンドの自由選択曲として作曲されました。元々はブラスバンド編成の曲でしたが、2005年に大阪市音楽団の第90回定期演奏会のために作曲者自身の手で吹奏楽編成に編曲されました。日本の吹奏楽団の編成に合わせて編曲されたこともあり、コントラバスクラリネットが編成に入っています。

演奏について

t=0《0:00~》という宇宙の始まりを表すホルンソロで曲が始まりますが、低音域から高音域まで全く乱れない美しい音色での堂々とした演奏で最後のクレッシェンドのもっていき方も完璧です。木管楽器群のたゆたう流れから急激なクレッシェンドを経て、ビッグバン《0:49~》でエネルギーが一気に爆発します。木管楽器群の連符が駆け上がってからのトランペットの連符は圧巻で、凄まじい音圧にも圧倒されます。ホルンセクションの存在感がずば抜けていて、1:23の強烈な音圧や2:01のベルアップしての恐ろしい鳴りっぷりは精華女子高校の歴代でも唯一無二だと思います。木管楽器の駆け回る連符と金管楽器の圧倒的な音圧に打楽器が音楽的なアクセントを加えていく見事なアンサンブルですが、爆音にならないようにちゃんとバランスがとれているのが藤重先生の凄さです。

孤独な惑星《2:47~》に入ってクラリネットとファゴットのソロが寂しくも美しく絡んでいき、イングリッシュホルンとソプラノサクソフォーンも加わってトゥッティに引き継がれますが、3:26からのソプラノサクソフォーンのソロの哀愁に溢れた歌いこみに心を打たれ、バンド全体での大らかな流れの歌が奏でられます。4:32からのソプラノサクソフォーンから始まる木管楽器のソロ回しも流れるような美しさで、この部分が名残惜しく終わっていきます。

宇宙の音楽《5:35~》が恐ろしすぎる音圧のホルンから始まってミュート付きトランペットに繋がり、全曲を通して一番感動的なハルモニア《5:54~》が始まります。クラリネットの低音域の深い音色でのしっかりした鳴りは簡単に出せるものではなくてとても素晴らしく、木管楽器が加わっていって音色を豊かにしながらフレーズが美しく流れていきます。6:52で印象的なソプラノサクソフォーンのフレーズが美しく響き、7:07からの金管楽器の見せ場は曲後半のバテを微塵も感じさせない圧倒的な音圧で聴かせてくれて、それを受け継いだ7:23からのトゥッティでの雄大なメロディが感動的に響き渡ります。合いの手のトロンボーンセクションが高らかに鳴り響き、クレッシェンドを経て最後の曲の未知《7:53~》に突入します。金管中低音セクションの勇ましく重厚な鳴りに金管高音楽器が応えていって、木管楽器の連符が合わさり盛り上がりが最高潮に達し、8:36のトロンボーンセクションの最大の見せ場のグリッサンドが凄まじい音圧で見事に決まって最後のEs音が鳴り終わった後に会場一体のブラボーが普門館一杯に鳴り響きます。

あとがき

いかがでしたでしょう?アグレッシブな表現と雄大なサウンドで、海外吹奏楽オリジナル作品の魅力が最大限に伝わる吹奏楽コンクールならではの名演をご紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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