【金管バンドナビ】#9 金管バンドの楽器 ホーン

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

金管バンドの楽器シリーズということで、前回はソプラノ音域のコルネットのご紹介をさせていただきました。コルネットという楽器の中にもBbコルネット、Ebコルネットの2種類が使われ、パートも5パートと細分化されていました。そして今週はそんなコルネットに引き続き、アルト音域を担当する音楽業界の人気者フリューゲルホーンと、金管バンド業界でのシェア率90%以上、テナー・ホーン(アルト・ホルン)を特集します。

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アルト音域

金管バンドにおけるアルト声部は2種類4パートの金管楽器によって構成されています。オーケストラで言えばフレンチ・ホルンやクラリネット、ヴィオラに近いパートかもしれませんが、たった4本でその役割を全て担うパートでもあります。

この音域は金管バンドにとって要とも言えるパートでソプラノ声部のコルネットパート、そしてコルネットと対を為すテナー声部の花形バリトン・ホーン&ユーフォニアムとの架け橋となりバンドの音色の中心はもとより、ソロの数々やメロディの主体ともなるとても重要なパートです。
(以下中央4名がアルト音域楽器)

Brass Band Academyより

フリューゲルホルン(Flugelhorn)

その形状から翼のホルンという意味を持つドイツ生まれのこの楽器は、コルネットと同様の実音シbを主音に持つ金管楽器です。管の長さもほぼほぼ同じで、演奏される音域も似てはいますが、その見た目通りベルの大きさや管の太さ、そして管の巻き方が大きく異なっているため吹奏感が全く異なり、また奏でられる音色もコルネットに比べよりホルン寄りの音を持っています。

サクソルン金管楽器を生み出したアドルフ・サックスが目指した「幅広い音域を一種類の楽器で構成すれば音色の統一が図れる」という目論見通り、金管バンドではソプラノ音域のコルネットとアルト音域のテナー・ホーン(アルト・ホルン)の架け橋になりバンドの音色の統一に一役買っています。

また1つのバンドに1席しかないこのパートは架け橋的な役割はもとよりたくさんのソロ、そして他音域の楽器たちとの協奏も多くあり、金管バンドの中でもソリスト的役割を多く任せられる重要な楽器の1つです。コルネット同様様々なミュートも存在し、その表現力の豊かさ、音色の多彩さによって現在では金管バンドはもとより、クラシックのみならずポップスをはじめとしたジャズやビッグバンド、ファンク、ロックなど様々なジャンルで使用されているとても人気の高い楽器です。

テナー・ホーン(アルト・ホルン)

イギリスをはじめとした英連邦系の国ではテナー・ホーン、日本やアメリカなどではアルト・ホルンと呼ばれるこの楽器は、名称こそ違えど同じ楽器です。本記事では金管バンドが生まれたイギリスに倣いテナー・ホーン(以後TH)と書きます。現在使われているTHはサクソルン属系金管楽器と呼ばれ、先述したアドルフ・サックスが発明したサクソルン金管楽器のアルト音域を担当する楽器として生まれ、その後ほぼほぼ姿形を変えることなく現代まで受け継がれてきました。金管バンドでも先ほどのフリューゲルホルンと同様にアルト音域を担当し、主に3人の奏者によって独立したそれぞれのパートが設けられています。

ソロ・ホーン(Solo Horn)

このパートはコルネットパートにとってのソロ・コルネットパートのようなパートでメロディをはじめ、ソロを演奏するのはもちろん、フリューゲルホルンや他楽器とともにデュエットやカルテットなどバンドの中で室内楽のようにアンサンブルを行ったりと、最小効率で構成されている金管バンドの楽器構成の中でも多くの役割を持つTHの中でも首席奏者のパートです。ここ20年ほどで奏法も発展し、たくさんのソロ曲の誕生、また様々なメーカーの楽器やミュート、周辺グッズなども増えてきています。

1st, 2nd ホーン(1st, 2nd Horn)

コルネットパートの2ndや3rd コルネットのように主に伴奏を演奏するパートです。またアルト音域でのメロディの際は縁の下の力持ちのようにフリューゲルホルンやソロ・ホーンパートを支えアルト音域の土台となる重要なパートです。またソプラノ音域とテナー音域との繋ぎ目的なパートでもあり、このパートの存在によって金管バンドの音色や音量のバランスなどが左右される非常に重要なパートでもあります。日本ではまだ専門的なテナー・ホーン・コースを持つ音楽大学はありませんが、英国では専門的に設けられるほど奏者も多く、音楽大学卒業後の選択肢として軍楽隊への入隊という需要もあります。

フリューゲルホルンやテナー・ホーン(アルト・ホルン)はなかなかオーケストラや吹奏楽など日本でよく知られている金管楽器ではありませんが、一度聞いていただければその音色の美しさや奏でられる音楽の無限の可能性に心惹かれることでしょう。実際に日本でもここ30年の金管バンド数が増えるのと比例してホーン奏者は増えています。ぜひ金管バンドのアルト音域、フリューゲルホルンにテナーホーン(アルト・ホルン)にも注目してみてください。

本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
次回は最も楽器の種類が多いテナー・パートのご紹介です。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Besson アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。

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