【吹奏楽ナビ】#97 作曲家 レスピーギ① 交響詩「ローマの噴水」

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皆さま、こんにちは。

2026年がメモリアルイヤーとなる作曲家に、没後90年を迎えたオットリーノ・レスピーギがいます。以前の記事では、吹奏楽コンクール全国大会での自由曲として全部門合わせて最も演奏回数が多い、レスピーギ作曲の 交響詩「ローマの祭り」 をご紹介しましたが、今回はローマ三部作の第1作である 交響詩「ローマの噴水」の全国大会での演奏をご紹介しましょう。

交響詩「ローマの噴水」

イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギが1916年に作曲した 交響詩「ローマの噴水」 は、スコア冒頭の作曲家自身による序文に次のような説明があります。
「ローマの4つの噴水で、その特徴が周囲の風物と最もよく調和している時刻、あるいは眺める人にとってその美しさが、最も印象深く出る時刻に注目して受けた感情と幻想に、表現を与えようとした。」
交響詩「ローマの噴水」では、数あるローマの噴水の中から4つを選び、夜明けから夕暮れまでの情景を音楽で描写しています。各楽章には作曲家自身による詳細な序文が記されているので、こちらに記しておきましょう。

I.夜明けのジュリアの谷の噴水 交響詩の第1曲はジュリア谷の噴水から霊感を受けたもので、牛の群れが過ぎ去り、ローマの夜明けにたちこめた霧の中に消えてゆくという、牧歌的な情景を描いている。
II.朝のトリトンの噴水 全管弦楽のトリルの上でホルンが突然フォルティッシモで鳴り響くと、第2曲の「トリトンの噴水」が始まる。その響きは喜びにあふれた叫び声のようであり、ナイヤード(水の精)とトリトン(半人半魚の海の神)が群れをなして走りより、互いに追いかけあい、水しぶきの中で放縦な踊りを踊ろうとする。
III.真昼のトレヴィの噴水 次に管弦楽の波動の上に厳粛な旋律が現れる。これは「昼のトレヴィの噴水」である。主題は木管楽器から金管楽器へと移り、勝利に満ちてくる。ファンファーレが鳴り響く。光り輝く水面の上に、ポセイドンの馬車が海馬に引かれて、人魚とトリトンの行列を従えて通り過ぎる。この行列は、弱音器をつけたトランペットが遠くからふたたび響く間に遠ざかってゆく。
Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水 第4曲の「メディチ荘の噴水」は、もの悲しい主題で始まる。この主題は、静かな水音の上で響くかのようである。夕暮れの郷愁のひとときである。大気は晩鐘の響き、鳥のさえずり、木々のざわめきなどに満ちている。その後、すべてが夜のしじまに静かに消えてゆく。

神奈川大学 (1992年)

交響詩「ローマの噴水」
I.夜明けのジュリアの谷の噴水 II.朝のトリトンの噴水 III.真昼のトレヴィの噴水 Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水
作曲:O.レスピーギ 編曲:磯崎 敦博


全日本吹奏楽コンクール
1992年(第40回大会) 金賞
演奏:神奈川大学吹奏楽部
指揮:小澤 俊朗

交響詩「ローマの噴水」が全国大会で初めて演奏されたのは1971年ですが、初めて金賞を受賞したのが1992年の神奈川大学の演奏です。I.夜明けのジュリアの谷の噴水《0:00~》冒頭、オーケストラ原曲の1stヴァイオリンによるハーモニクス(フラジオレット)奏法の部分は磯崎敦博さんの編曲版ではピッコロが担当しているのですが、相当にプレッシャーがかかるにも関わらず見事な演奏です。クラリネットの16分音符の美しいレガート奏法にのってオーボエソロが美しく響き渡り、ファゴット、クラリネットと続いていくソロも美しい音色が印象的です。勇壮なホルンから始まる II.朝のトリトンの噴水《2:17~》 では水しぶきが湧き上がるようなキラキラした木管楽器のパッセージとパワフルな金管楽器がマッチしており、III.真昼のトレヴィの噴水《3:59~》 は音圧溢れる金管楽器が大活躍で木管楽器の高速パッセージが鮮やかに絡んでいってクライマックスを迎えます。だんだんと収束していってからの Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水《6:46~》 での繊細な音色と美しいディミヌエンドによってだんだんと遠ざかっていき、チャイムの鐘の音と木管楽器のハーモニーが溶け合っていって静かに曲が終わります。

常総学院高等学校 (1994年)

交響詩「ローマの噴水」
II.朝のトリトンの噴水 III.真昼のトレヴィの噴水 Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水
作曲:O.レスピーギ 編曲:磯崎 敦博


全日本吹奏楽コンクール
1994年(第42回大会) 金賞
演奏:常総学院高等学校吹奏楽部
指揮:本図 智夫

茨城県を代表する名門校の常総学院高等学校が1994年に演奏した 交響詩「ローマの噴水」は、強烈な音圧のホルンで II.朝のトリトンの噴水《0:00~》から始まり、高音木管楽器の明るく輝かしい音色が朝の日差しを思わせます。III.真昼のトレヴィの噴水《1:36~》は若々しくパワフルな金管楽器が鳴り響き、鮮明に聴きとれる木管楽器の高速パッセージの完成度が高くて圧倒されます。豪華絢爛なクライマックスから、Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水《3:49~》の表情豊かな木管楽器に導かれていき、静寂の中での美しいハーモニーで曲が終わります。

埼玉県立伊奈学園総合高等学校 (1995年)

交響詩「ローマの噴水」
I.夜明けのジュリアの谷の噴水 II.朝のトリトンの噴水 III.真昼のトレヴィの噴水 Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水
作曲:O.レスピーギ 編曲:磯崎 敦博


全日本吹奏楽コンクール
1995年(第43回大会) 金賞
演奏:埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部
指揮:宇畑 知樹

埼玉県を代表する名門校の埼玉県立伊奈学園総合高等学校が、全国大会に初出場した1995年に演奏したのが 交響詩「ローマの噴水」でした。I.夜明けのジュリアの谷の噴水《0:00~》冒頭の繊細なピッコロが素晴らしいですが、絶妙なアゴーギグで音楽の流れを紡いでいくクラリネットセクションの美しくて芯がある音色がとても印象に残り、オーボエ、クラリネット、ファゴットソロの音色がとても美しくて聴き入ってしまいます。II.朝のトリトンの噴水《1:52~》はきちんと整えられたバランスの良さが印象的で、金管楽器の音量に頼りすぎない溌剌とした音楽表現によって明るく爽やかに駆け抜けていきます。III.真昼のトレヴィの噴水《3:53~》は全国大会初出場でのチャレンジ精神がアグレッシブな音楽表現として良い方向で表れていて、金管楽器のリズムと木管楽器の高速パッセージが共に聴こえるというとてつもない整理とバランスの良さに現在に通ずる伊奈学園らしさを感じることができます。Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水《6:43~》は繊細で美しい音色によるハーモニーから静寂となり、消え入るように曲が終わります。

埼玉県立与野高等学校 (1998年)

交響詩「ローマの噴水」
I.夜明けのジュリアの谷の噴水 II.朝のトリトンの噴水 III.真昼のトレヴィの噴水 Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水
作曲:O.レスピーギ 編曲:齋藤 淳


全日本吹奏楽コンクール
1998年(第46回大会) 金賞
演奏:埼玉県立与野高等学校吹奏楽部
指揮:齋藤 淳

1995年に関東大会が東西に分かれるという大きな転機があり、東関東大会と西関東大会に分かれた中での西関東大会高校の部では2校が全国大会初出場となりました。1校は埼玉県立伊奈学園総合高等学校で、もう1校が埼玉県立与野高等学校です。この2校は全国大会初出場で金賞受賞という鮮烈な全国大会デビューを果たしました。埼玉県立与野高校は全国大会三金(三年連続金賞)がかかった1997年に惜しくも銀賞受賞となり、三金から三出(三年連続出場)に制度が変わった1998年に 交響詩「ローマの噴水」を演奏し、金賞受賞での全国大会三出を達成しました。I.夜明けのジュリアの谷の噴水《0:00~》の終盤のフルートソロから曲が始まり、オーボエ、クラリネットのソロが表情豊かに繰り広げられていきます。スピード感溢れる II.朝のトリトンの噴水《0:57~》は木管楽器が音楽を引っ張っていき、活気に溢れた朝の情景が思い浮かぶようです。III.真昼のトレヴィの噴水《2:28~》は金管楽器のパワフルな音圧で音楽が突き進んでいき、高校生ならではの若々しくエネルギッシュな演奏に圧倒されます。Ⅳ.黄昏のメディチ荘の噴水《4:39~》が速めのテンポながらもだんだんと終わりに向かって時間が流れていき、チャイムの鐘の音と充実した木管楽器のハーモニーが美しいディミヌエンドによって静寂となって曲が終わります。

あとがき

いかがでしたでしょうか。レスピーギ作曲の交響詩「ローマの噴水」の、コンクールでの名演をご紹介しました。

次回は、ローマ三部作の第2作である 交響詩「ローマの松」の演奏をご紹介しようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

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塚本 啓理(つかもと けいすけ)
シエナ・ウインド・オーケストラ バスクラリネット奏者。
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。

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