みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
ようやく秋を迎え、過ごしやすい季節となりました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
日本の金管バンド業界では、これから年末にかけて数多くのコンサートが企画され、大いに盛り上がりを見せています。一方、英国の金管バンド業界でも、さまざまなコンテストで熾烈な上位争いが繰り広げられています。
今回は、前回ご紹介した第171回ブリティッシュ・オープンの結果と、日本の金管バンド業界で開催されるさまざまなコンサート情報をお届けします。
第171回ブリティッシュ・オープン結果

英国、そしてスイスの強豪中の強豪バンドたちが覇を競った今大会。
今年、2025年第171回大会の王座を手にしたのは、果たしてどのバンドだったのでしょうか。
| 順位 | バンド / 指揮者 | 演奏順 | 国 | ここ20年の優勝年数 | 備考 |
| 1 | Brighouse & Rastrick / David King | 10 | England | 2022 | |
| 2 | Brass Band Treize Etoiles / Frederic Theodoloz | 11 | Switzerland | 2024 | ブリティッシュ・オープン2024覇者 |
| 3 | Cory | 16 | Wales | 2000, 2002,2007, 2009, 2011, 2016, 2018, 2019 | ここ20年では最多優勝記録 |
| 4 | Fodens / Russel Gray | 14 | Scotland | 2012, 2023 | 前世界ランキング1位 |
| 5 | Aldbourne / Glyn Williams | 5 | England | 元コーリーバンド首席ユーフォニアム奏者グリンが指揮 |
これ以降の順位は以下リンクより(英語、外部サイト)
2025年チャンピオンに輝いたのは、数多くの強豪バンドがひしめくイングランド・ヨークシャー地方から、デイヴィッド・キング(David King) 率いるブリッグハウス&ラストリック・バンドでした。
“生ける伝説”とも称される指揮者、デイヴィッド・キング氏は、今回の優勝でこのコンテストにおいて通算6度目の優勝を達成しました(B&Rと2回、YBSと4回)。
ブリッグハウス&ラストリック・バンドとは、2022年以来2度目の王座奪還となります。
ブリッグハウスとしては、1929年大会での初優勝以来、通算8度目の栄冠となります。
この優勝により、金管バンド業界最大手のウェブサイト4barsrestによる世界ランキングで、バンドの順位は5つ上がり、現在4位となりました。
2位には、王座防衛ならなかった前年王者のトレイズ・エトワーズが入りました。
演奏はいつも通り正確で、指揮者の細部にわたる指示も冴え渡る圧巻の内容でしたが、惜しくも2位となりました。
3位には、英国ウェールズのコーリーバンドが入りました。
今年の全英大会ウェールズ地区予選では3位、欧州選手権では4位、そしてこのブリティッシュ・オープンでは3位と、優勝こそ逃したものの、その実力の高さは依然として健在です。
演奏順の呪い

今大会での演奏順1番から5番までの順位は以下の通りです。
日本のコンクールでも当てはまるかもしれませんが、金管バンド業界の通例として、「コンテストで演奏順が早いバンドは上位に入りづらい」 という傾向があります。
| 演奏順 | バンド名 | 順位(18バンド中) |
| 1 | Black Dyke | 16位 |
| 2 | Hammonds | 11位 |
| 3 | Tredegar | 13位 |
| 4 | Whitburn | 10位 |
| 5 | Aldbourne | 5位 |
5位のオールドボーンを除き、演奏順1番から4番のバンドは、いずれも二桁順位にとどまりました。
奏者も審査員も英国人は軒並み朝に弱いのか、それとも何かの“呪い”がかかっているのか——様々なデータが、この通例を裏付けています。
さまざまなコンテストを振り返っても、唯一の例外は、1954年に出演順1位で優勝したMunn and Felton’s Works Band(現GUS Bandの前身)です。
1853年に始まった世界最古のコンテストであるブリティッシュ・オープン、また他金管バンドのコンテストなどの長い歴史の中でも、唯一無二の記録となっています。
各ソリスト賞受賞者

他のコンテスト同様、本大会でも卓越した演奏を披露したソリストへの賞があります。
今年は以下の奏者たちが受賞しました。(各賞の横に記されている名前は、ご存命の方から過去の偉人までを表しています。)
最優秀ソリスト賞 (Stanley Wainwright Memorial Trophy)
トム・ハチンソン(コルネット、コーリー)
最優秀ソプラノコルネット賞 (Brian Evans Memorial Trophy)
アシュリー・マーストン(ブリッグハウス)
最優秀ユーフォニアム賞 (Geoffrey Whitham Memorial Trophy)
クリス・ロバートソン(ブリッグハウス)
最優秀コルネット賞 (Philip McCann Trophy)
トム・ハチンソン(コルネット、コーリー)
入れ替え戦
今年5月に開催された下位大会、スプリング・フェスティバルグランド・シールド(Grand Shield)では、EverReady BandとAmersham Bandが勝ち抜き、上位大会である今回のブリティッシュ・オープンへ昇格出場しました。
それとは対照的に、今大会の結果を受け、Whiburn Band(10位)とOldham (Lees) Band(14位)の2バンドが、翌年のグランド・シールドに降格しています。降格の条件は、単に最下位2団体が降格するというわけではなく、さまざまな要因が考慮されて決定されるようです。
余談ですが、今年5月の欧州選手権で優勝したアイカンガー(ノルウェー)にも、ブリティッシュ・オープンへの招待状が送られましたが、同バンドは辞退しています。
日本の金管バンド、コンサートシーズン到来

日本の金管バンドの様子を見ると、コンサートシーズンは大きく2つに分けられます。1つは5月から7月、もう1つは現在真っ只中の10月から12月です。
とりわけ「芸術の秋」とも言われるこの季節は、日本各地で多くのコンサートが開催されています。
筆者が理事を務める日本ブラスバンド指導者協会のSNSにも、まとめとしてたくさんの情報が掲載されていますので、ぜひ足を運んでみてください。
各種ジョイントコンサート
関西地区

British Brass Festa in Osaka 〜英国式ブラスバンドの祭典〜
会場:アプラたかいし 大ホール(南海本線「高石駅」下車1分)
日時:2025年10月13日(月祝) 12時開場/13時開演
出演バンド
Japan Symphony Brass
京都ブラスバンド
KONAMON BRASS!
尼崎シティブラス
北陸地区

ラフィネブラスバンド第38回定期演奏会&HUB(北陸ユナイテッドブラス)
会場:津幡町文化会館「シグナス」(津幡駅より徒歩12分)
日時:2025年12月14日(日) 13:30開場/14時開演
出演バンド
ラフィネブラスバンド
ブラスバンドロア
ブラスバンドTSB
主催:ラフィネブラスバンド
最後に
英国にて最も勝つのが難しいと言われるブリティッシュ・オープンの結果、みなさまいかがでしたでしょうか?
次回は、英国で最も偉大なホールの一つであるロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催される全英選手権と、11月15日に開催される英国一のエンターテイメントバンドを決めるブラス・イン・コンサートの特集です。どうぞお楽しみに。
今回もありがとうございました。またお会いしましょう。
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson, B&S並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスブラスバンド指導者協会理事。


