【金管バンドナビ】#39 ニュージーランド・ナショナル・チャンピオンシップス 2024

  • LINEで送る

みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

さて、前回の更新から少しお休みをいただき、以前お知らせいたしました通りニュージーランドで開催されましたニュージーランド・ナショナル・チャンピオンシップス(New Zealand National Championships)Immortal Brass Eternallyと出場してきました。

本日は前回の事前情報に追加で、実際に出場して得た情報などを共有させていただきたいと思います。ぜひお楽しみください。

ニュージーランド・ナショナル・チャンピオンシップス 2024

2024年7月10日から13日の計4日間、ニュージーランドの北島にあるオークランドで開催されたパシフィック・ブラス・フェスティバル(Pacific Festival of Brass)、このフェスティバルの後半2日間がブラスバンド・チャンピオンシップスでした。(初日からの2日間は各種ソロやデュエット、アンサンブルなどのコンテストやコンサートが開催されていました。)

今回金管バンド部門ではニュージーランドやオーストラリアはもとより、日本や香港、そしてトンガ王国から以下の階級で出場されました。

  • Aグレード7団体(最上級クラス)
  • Bグレード11団体
  • Cグラード10団体
  • Dグレード3団体
  • ユースグレード3団体

コンテスト内容

ニュージーランドやオーストラリアのコンテストは、伝統的に以下の4項目によって構成をされています。

  • 行進曲
  • 讃美歌
  • 課題曲
  • 自由曲

行進曲では実際に行進をしながら演奏し、演奏の他にも歩き方や整列の仕方などマーチング要素も採点されます。また讃美歌(Sacred Item)と名付けられた課題もあり、速度の遅い歌のような曲を演奏することが定例となっています。(讃美歌以外にもゆったりとした吹奏楽由来の曲なども演奏されていました。)

得点としては、「行進曲」と「それ以外の3曲」というまとめ方をされ、トロフィーなどを授与される実質的順位は讃美歌、課題曲、自由曲の合計得点によって決定されます。(以下に実際のプログラム写真を載せますのでご覧ください。)

審査員にはイングランドの名門ブラスバンドの一つ、ブラック・ダイクバンド(Black Dyke Band)のトロンボーン奏者でもあるブレット・ベーカー(Brett Baker)が招かれ各種目の審査をしました。

Parade of Bands(行進曲)

下にお載せした写真より表の右にドリルの出来、演奏、総合点の欄があります。(IBEは12番手)
また視聴可能期間に限りはあるようですが、実際の行進が収録された動画のリンクをお載せしますので、ぜひ臨場感をお楽しみ ください。

【実際の映像はこちら(期間限定ですのでお早めにご覧ください)】

以下の画像では最終日の自由曲についての情報が載っています。(IBEは3番)

このバンド名と自由曲名の下にそれぞれの讃美歌、課題曲、自由曲そして総合点の欄があります。観客たちや出演者は実際の演奏の際には演奏順を記載し、最後の結果発表の際に得点を記入し楽しまれます。

結果

今回最上級グレードであるAグレードにはNZから5バンド、海外勢としては我々Immortal Brass EternallyとオーストラリアからNorth Shore Brassが出場しました。

どのバンドもさすがのAグレードという実力派な演奏ばかりで、課題曲である「Whitsun Wakes / Michael Ball」に始まり、各バンドの自由曲に関してはヨーロッパにおけるコンテストにおいてここ10年間最上級クラスであるチャンピオンセクションで使われてきたような難曲の数々を演奏されるバンドばかりで、非常にハイレベルな演奏が繰り広げられました。以下に結果をお載せします。
(得点は左から課題曲、讃美歌、自由曲、合計点の順)

  • 1位 Wellington Brass 指揮David Bremner 98 / 49 / 97 / 244
  • 2位 NBS Nelson City Brass 指揮 Nigel Weeks 96 / 48 / 94 / 238
  • 3位 North Shore Brass (AU) 指揮 Harmen Vanhoorne 95 / 47.5 / 95 / 237.5
  • 4位 Immortal Brass Eternally (JP) 指揮 Kazuyuki Kouno 94 / 47 / 93 / 234
  • 5位 Hamilton City Brass 指揮 Todd Smith 93 / 47.5 / 90 / 230.5
  • 6位 Brass Whanganui 指揮 Bruce Jellyman 92 / 46 / 92 / 230
  • 7位 Waitakere Auckland Brass 指揮 Grant Langdon 91 / 46.5 / 91 / 228.5

たくさんの方々のサポートのおかげで我々IBEは4位という結果でした。優勝バンドから7位のバンドまでの得点差がたった15.5ポイントということもあり、とてもハイレベルな内容だったことがご想像いただけると思います。より詳しい内容はBrass Band Results(金管バンド情報集計サイト)よりご覧ください。

【結果発表の実際の映像はこちら(期間限定ですのでお早めにご覧ください)】

遠征記

7月の開催ということで、南半球に位置するニュージーランドの季節は冬、ニュージーランド在住のニュージーランド人に尋ねたところ、この時期が1番寒い時期だそうです。しかし、オークランドはニュージーランドでも北部にあたるため、南極に近い南部はもっと寒いというお話でした。

この話が示す通り、まず気温35度越えの日本の国際空港から、10度前後しかない真冬のニュージーランドのオークランド国際空港に降り立った当初は寒暖差に本当に驚きました。

日本との時差はたった3時間だったため大きな時差ボケによる体調不良はあまりありませんでしたが、その後パシフィック・フェスティバル初日と2日目に開催されたソロのコンテストへの一部メンバーの出場やバンドでのリハーサルなどなど、20時間以上かけてニュージーランド入りをしたIBEメンバーは本当によく頑張っていました。

今回IBEの立場というのは、国際大会に出場するのも2回目、ましてNZでのバンドとしてのコンテストへの出場は初めてということで、NZのブラスバンド業界的にはただ極東の見知らぬバンドがわざわざ来てくれて参加してくれるというスタンスでした。もちろん歓迎ムードはありましたが、当たり前の話ですが地元人気バンドに比べるとそこそこで讃美歌、課題曲の初日のコンテストでの入場や演奏前の拍手はまばらなものでした。

しかし、実際にIBEの演奏が終わった途端、とても暖かな拍手と歓声をいただき大変ありがたかったです。また演奏後も会場を歩いていると多くの方々から「あの日本のバンドの指揮者か?」から始まりたくさんお褒めの言葉や励まし、翌日に迫った自由曲への期待のお言葉をいただきました。これは本当にIBEメンバーの尽力のおかげです。

最終日である自由曲の日は、長年チャンピオンバンドであるウェリントン・ブラス(Wellington Brass)と選択曲も被り、さらに演奏順もIBEは大トリ、その前にウェリントン・ブラスがくるというとても高いプレッシャーの中での演奏でしたが、前日の課題曲の際に十分にアピールでき、観客からの盛大の歓迎の中でのパフォーマンス、そしてIBEメンバーの素晴らしい集中力でバンドのベストを出すことができました。

結果自体は我々が望んでいたものではありませんでしたが、サポートしてくださった方々、そしてバンドメンバーの尽力により我々のベストを素晴らしい舞台でお披露目できたことは本当に誇りに思います。

もし課題曲、自由曲、の配信にご興味をもたれましたらこちらよりご覧になれますのでお楽しみください。(配信期限がありますのでお早めにご覧ください。)

Aグレード課題曲

Aグレード自由曲

終わりに

今回にNZ遠征を行うにあたりミュージックエイト様をはじめ、本当に多くの方々のサポートを頂戴し、そのおかげで無事終了することができました。メンバーに代わりましてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

また日本にも多くの金管バンドがあり、またとても素晴らしい演奏をするバンドが多くあるという事実はNZやオーストラリアを始め世界中の方々に認知いただけたと思います。

引き続き日本の金管バンドレベルの向上に尽力するとともに、業界の発展に寄与したいと思います。

いくつか写真をご紹介して今回はお別れとさせていただきます、最後までお読みくださりありがとうございました。

最終日、自由曲演奏中

最終演奏後、全体写真

結果発表前、日本から初出場ということで歓待を受けました


河野一之(Kazuyuki Kouno)

https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。