【吹奏楽ナビ】#85 作曲家 真島 俊夫①

  • LINEで送る

皆さま、こんにちは。

4月になり、新年度が始まりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

2026年の4月で、作曲家・編曲家の真島俊夫さんが逝去されてから10年が経ちます。日本のみならず世界の吹奏楽界に真島俊夫さんが与えた影響は計り知れず、今日もたくさんの団体によって作品が演奏され続けています。今回は真島俊夫さんが作曲した全日本吹奏楽コンクールの課題曲と、それに関連した作品をご紹介しようと思います。

1985年 吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」

課題曲吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」
作曲:真島 俊夫


全日本吹奏楽コンクール
1985年(第33回大会) 金賞
演奏:天理高等学校吹奏楽部
指揮:新子 菊雄

吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」は、1985年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されました。もともとは1983年に完成していた《Rainbow over the Sea》という曲を、課題曲応募用に短縮したものとのことで、「この曲は、一応標題が付いてはいますが、標題音楽と言うよりも、全体の印象が海を想わせるという意味に取って下さい。」と作曲者はスコアの序文で語っています。2つの主要主題は口ずさめるほどに親しみやすく印象的で、全国大会では全体の43%の団体によって演奏される人気の課題曲となりました。

1985年の天理高等学校の演奏は自由曲のセント・アンソニー・ヴァリエーションが名演として名高いですが、課題曲の「波の見える風景」では柔らかく繊細なサウンドと切れ味鋭い迫力満点のサウンドを使い分け、音楽的なアゴーギグを随所に取り入れて、コンクールとしての技術的な完成度も恐ろしく高いという正に非の打ち所がない名演だと思います。課題曲と自由曲ともに、同校の伝説的な名演としてこれからも語り継がれることでしょう。

1991年 コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象

課題曲コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象
作曲:真島 俊夫


全日本吹奏楽コンクール
1991年(第39回大会) 金賞
演奏:愛媛県立伊予高等学校吹奏楽部
指揮:上甲 広文

コーラル・ブルー 沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象 は、1991年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されました。この作品の土台になっているのが沖縄の打楽器奏者から依頼された打楽器とシンセサイザーのための協奏曲で、その素材に選んだのが沖縄民謡の《谷茶前》だったということで、作曲者の沖縄への思い入れが結実した作品となっています。

四国支部を代表する古豪の愛媛県立伊予高等学校は、これまでに全国大会に29回出場している実績がありますが、1991年は同校にとって初の全国大会金賞受賞となりました。上甲広文先生時代の伊予高校の演奏はダイナミックさが特徴で、ともすれば荒い印象になってしまうことがあったのですが、この年はオーバーブロウ気味な箇所が見られるものの表情豊かな音楽とアグレッシブさが良い方向でバランスがとれており、明るくてダイナミックなサウンドが沖縄のカラッとした音楽にバッチリはまっています。自由曲の「パリの喜び」も含めて、同校の演奏の中でも記憶に強く残っている名演です。

1997年 五月の風

課題曲五月の風
作曲:真島 俊夫


全日本吹奏楽コンクール
1997年(第45回大会) 金賞
演奏:埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部
指揮:宇畑 知樹

五月の風 は、1997年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されました。スコアの序文冒頭で、「8分の6拍子、典型的なスーザ・スタイルのマーチです。」と作曲者が語っている通り、スーザへの敬意とマーチへの愛情が感じられる傑作で、力強く華やかな導入から、軽やかな第一マーチ、勇壮な第二マーチ、優雅で気品のあるトリオ、爽快でかっこいい対旋律を従えたクライマックスと、全曲を通して魅力に溢れた作品となっています。全国大会では全体の54.2%の団体によって演奏される大人気の課題曲となり、特に大学の部では全12団体中11団体によって演奏されるという驚異的な人気となりました。

埼玉県を代表する名門校である埼玉県立伊奈学園総合高等学校は、これまでに全国大会に26回出場している実績がありますが、1997年は同校にとって初の全国大会三出、三金を達成した年でした。この課題曲では冒頭のリズムが鮮明に聴き取れず苦戦した団体が大半だった中で、きちんとリズムが聴こえてマーチとしての軽快さも感じられることにまず脱帽です。8分の6拍子のマーチのツボを押さえた演奏で、真島作品にぴったりなトゥッティサウンド、伊奈学園らしい美しく整った演奏でありながら近年の伊奈学園にはあまり見られないダイナミックでアグレッシブな演奏は、個人的に同校の演奏の中でも特にお気に入りの演奏として強く印象に残っています。

ニライカナイの海から

ニライカナイの海から
作曲:真島 俊夫


演奏:陸上自衛隊中央音楽隊
指揮:武田 晃

ここからは課題曲ではありませんが、近い傾向に分類されるであろう作品をご紹介します。最初にご紹介する ニライカナイの海から は、神奈川大学吹奏楽部の委嘱によって2009年12月に作曲され、2010年1月8日に神奈川大学吹奏楽部第45回定期演奏会で初演されました。日本の最南端に位置する沖縄の美しい海と、そこに古くから伝わるニライカナイ(海の遙か彼方にあるとされる理想郷を指す)の伝説をテーマに作曲され、海を表す導入部から、沖縄の打楽器を多く取り入れた神や先祖を迎える賑やかな祭りとなり、やがて静かな海を思わせる中間部の主題が歌われます。3本のトランペット(バンダ)によるファンファーレがニライカナイからの神の到着を知らせると再び祭りの音楽が再現され、クライマックスを迎える。という構成の作品となっています。
私がこの曲を初めて聴いたのは、指導していた学校のコンクール自由曲としてでした。「コーラル・ブルー」で真島さんと沖縄のテーマの相性が抜群であることはよく知っていましたが、大編成ならではのゴージャスで爽快な曲想を聴いて虜になり、この時のフルート奏者が純粋で素直な美音の持ち主で素晴らしかったこともあって、4:30からのフルートソロのメロディから盛り上がっていく部分がとても印象に残っています。

演奏は、21世紀の吹奏楽「響宴XIV」での陸上自衛隊中央音楽隊の演奏をご紹介します。

コンサート・マーチ「東風」

コンサート・マーチ「東風」
作曲:真島 俊夫


演奏:神奈川大学吹奏楽部
指揮:小澤 俊朗

コンサート・マーチ「東風」は、山形県にある鶴岡東高等学校吹奏楽部の委嘱によって2009年に作曲されました。華やかなファンファーレで始まり、4分の2拍子で典型的なマーチの形式を踏襲しながらも、旋律やハーモニーは斬新な心浮き立つコンサート・マーチとなっています。
私がこの曲を初めて聴いたのは、指導していた学校の演奏会でした。この学校は、3年サイクルで毎年1曲のマーチを演奏会で取り上げていて、私が初めて指導に携わった年がこの曲だったのでよく覚えています。ファンファーレのかっこよさ、メロディや対旋律の爽快さはもちろんのこと、私は特にトリオのメロディの美しさがとても印象に残っています。

演奏は、21世紀の吹奏楽「響宴XIII」での神奈川大学吹奏楽部の演奏をご紹介します。

コンサート・マーチ「ストレート・ロード」

コンサート・マーチ「ストレート・ロード」
作曲:真島 俊夫


演奏:埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部
指揮:宇畑 知樹

コンサート・マーチ「ストレート・ロード」は、1993年に東芝EMIが発売した「新・実践吹奏楽指導全集」(1993年発売)に収められた、爽快な曲想による速いテンポのマーチです。この曲を初めて知ったのは出版社の参考音源集的なCDで、真島俊夫さんの作品がいくつか収録されていた内の1曲だったのですが、埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部がこの曲を持ち曲として定期演奏会などで毎年演奏しており、実際に生で聴いたこともあってこの曲が伊奈学園と深く結びついている印象が強いです。

演奏は、埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部の演奏をご紹介します。

あとがき

いかがでしたでしょうか。真島俊夫さんが作曲した全日本吹奏楽コンクールの課題曲を全国大会での名演とともにご紹介し、また、それに関連した作品と演奏をご紹介しました。

次回は、コンクールの自由曲で演奏されたことがある真島俊夫さんの作品を、全国大会での名演を通してご紹介しようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

欲しい楽譜がきっと見つかる!

楽譜のことなら
『株式会社ミュージックエイト』

吹奏楽、金管バンド、器楽、ソロからアンサンブルまで
国内楽譜・輸入楽譜ともに豊富に取り揃えております。

ぜひ一度ご覧ください!


ご購入・お問合わせはこちら