【吹奏楽ナビ】#84 作曲家 J.ヴァンデルロースト②

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皆さま、こんにちは。

前回に引き続き、今年で生誕70年を迎えられるヤン・ヴァンデルローストをテーマに、吹奏楽コンクールの自由曲として全国大会で多く演奏されたことのある作品を、コンクールでの名演を通してご紹介します。

交響詩「スパルタクス」 Spartacus

交響詩「スパルタクス」は、1988年にヴァンデルロースト氏自身のアントワープ音楽院の卒業制作作品集のために作曲されたとのことです。古代ローマの剣闘士でスパルタクスの反乱と呼ばれる奴隷戦争を主導したスパルタクスをテーマにしており、スコアにはイタリア語で「オットリーノ・レスピーギへのオマージュ」と記されていて、映画音楽を思わせるスケールの大きな曲想となっています。初演は、ノルベール・ノジが指揮するベルギー・ギィデ交響吹奏楽団の演奏で行われました。

福岡県立嘉穂高等学校 (1995年)

交響詩「スパルタクス」
作曲:.ヴァンデルロースト


全日本吹奏楽コンクール
1995年(第33回大会) 銀賞
演奏:福岡県立嘉穂高等学校吹奏楽部
指揮:竹森 正貢

九州支部の古豪バンドで名門校である福岡県立嘉穂高等学校の演奏は、古き良き時代のサウンドにヴァンデルロースト作品の曲想がマッチした純粋にかっこいいと思える名演だと思います。テンポが速い部分のスピード感と爽快感や、ゆっくりな部分の歌いこみとの対比も素晴らしく、交響詩「スパルタクス」のコンクールでの演奏の中でも特に記憶に残っています。

志免町立志免東中学校 (2003年)

交響詩「スパルタクス」
作曲:.ヴァンデルロースト


全日本吹奏楽コンクール
2003年(第51回大会) 金賞
演奏:志免町立志免東中学校吹奏楽部
指揮:白土 直也

志免町立志免東中学校は白土直也先生が指揮をされていた時代に全国大会に4回出場していますが、自由曲が全て海外オリジナル作品で、2003年の 交響詩「スパルタクス」の年に全国大会三出を達成しました。この年は全員で33名の編成なのですが、人数の少なさを感じさせない安定したサウンドが特徴で金管楽器と打楽器を中心にとても上手な演奏だったことを思い出します。

交響詩「モンタニャールの詩」 Poème Montagnard

交響詩「モンタニャールの詩」は、イタリア北部のヴァレ・ダオスタ州アオスタにある市民バンド、ヴァル・ダオスト吹奏楽団の委嘱によって1996年に作曲されました。ヴァンデルロースト氏はアオスタの豊かな自然や文化、多民族の侵略を受けた歴史を題材に、中世にこの地域を治めた歴史上の人物であるカトリーヌ・ドゥ・シャランへのオマージュとしてこの曲を作曲しました。タイトルのモンタニャールとはフランス語で「山」や「山地民」という意味で、タイトルを日本語に直訳するとしたら「山の民の詩」となるのですが、そのようにせずに「モンタニャールの詩」という日本語のタイトルの方が幻想的な曲想にマッチしていて良いと思います。

三田学園高等学校 (2001年)

交響詩「モンタニャールの詩」
作曲:.ヴァンデルロースト


関西吹奏楽コンクール
2001年(第51回大会) 金賞
演奏:三田学園高等学校吹奏楽部
指揮:鷹田 秀人

交響詩「モンタニャールの詩」のコンクール全国大会初演は2010年の東海大学付属高輪台高等学校ですが、関西支部では1999年に奈良市立一条高等学校がこの曲で支部大会金賞を受賞しており、私は1999年の関西大会実況録音版のCDでこの曲を聴いて知っていました。私が高校1年生で初めて関西大会に出場した2001年に、関西大会高校の部の大トリで 交響詩「モンタニャールの詩」を演奏したのがこの年に関西大会初出場を果たした三田学園高等学校です。指揮者の鷹田秀人先生のご専門がクラリネットということもあってクラリネットの音色がとても良く、全体的に美しくまとまっていながらも鷹田先生の情熱溢れる指揮によって音楽的な演奏になっていてとても感動したことが記憶に残っています。

愛知工業大学名電高等学校 (2016年)

交響詩「モンタニャールの詩」
作曲:.ヴァンデルロースト


全日本吹奏楽コンクール
2016年(第64回大会) 銀賞
演奏:愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部
指揮:伊藤 宏樹

東海支部を代表する名門校である愛知工業大学名電高等学校に伊藤宏樹先生が赴任して20年が経ちましたが、伊藤宏樹先生の時代にコンクールの自由曲が過去に選んだ曲と重複したのはなんと1曲だけ、その曲が 交響詩「モンタニャールの詩」で、今回は2016年の演奏をご紹介します。原曲の曲の流れに忠実な演奏で、3:06からのリコーダーアンサンブルからの舞曲が美しく心に残ります。大編成の迫力に繊細さも併せ持った名演だと思います。

いにしえの時から From Ancient Times

いにしえの時から は、「欧州選手権2009」のチャンピオンシップ・セクションの課題曲として作曲されたブラスバンド編成の作品が原曲です。その後、作曲者自身によって吹奏楽曲に編曲され、吹奏楽版の初演は2010年に日本の タッド・ウインドシンフォニー の演奏で行われました。15世紀から16世紀のルネサンス期にポリフォニーを駆使して黄金時代を迎えた「フランドル楽派」と呼ばれるベルギーの作曲家たちの音楽にインスパイアードされた作品で、「Ancient Time」は、「フランドル楽派が活躍した時代」をさしています。

なお、原曲となるブラスバンド版については、本連載と同じくエムハチポータルで連載中の金管バンドナビにて河野一之さんが詳細に解説をしてくださっていますので、興味のある方はぜひご一読ください。

浜松海の星高等学校 (2013年)

いにしえの時から
作曲:.ヴァンデルロースト


全日本吹奏楽コンクール
2013年(第61回大会) 銀賞
演奏:浜松海の星高等学校吹奏楽部
指揮:土屋 史人

いにしえの時から の全国大会初演は2013年の浜松海の星高等学校(現在は浜松聖星高等学校)で、その後2019年にコンクールで再演していますが今回は2013年の演奏をご紹介します。私が2013年のこちらの演奏を実況録音版のCDで初めて聴いた時、1:43からのトロンボーンセクションに度肝を抜かれたことを鮮明に覚えています。改めて聴き直しても2:04からの超高速テンポによる超絶技巧のインパクトが凄まじく、全国大会2回目の出場でのチャレンジングでスリリングな名演だと思います。

秋草学園高等学校 (2013年)

いにしえの時から
作曲:.ヴァンデルロースト


西関東吹奏楽コンクール
2013年(第19回大会) 金賞
演奏:秋草学園高等学校吹奏楽部
指揮:三田村 健

私が いにしえの時から を初めて聴いたのは、2013年のコンクール埼玉県大会での秋草学園高等学校の演奏でした。この曲は原曲のブラスバンド版でも吹奏楽版でも特にトロンボーンセクションが大事で重要なパートだと思っているのですが、2:00からの部分などのトロンボーンセクション大活躍の部分がとても上手でこの曲を好きになったきっかけになりました。4:36のサクソフォーンクインテットの部分が原曲での位置と違っていたことに後になって気づきましたが、全体的に速すぎないテンポでどっしりとした安定感があり、金管楽器主体の豪華なサウンドも申し分ない名演だと思います。

あとがき

いかがでしたでしょうか。J.ヴァンデルロースト氏の、吹奏楽コンクール全国大会で演奏回数が多い作品をご紹介しました。

今年はヴァンデルロースト氏が生誕70年ということで各地で作品が演奏されていますので、この機会に是非ヴァンデルロースト氏の世界を生演奏で体験していただけることを願っております。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

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塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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