皆さま、こんにちは。
前回に引き続き、今年が生誕190年となるレオ・ドリーブの作品から、今回はバレエ音楽「シルヴィア」を取り上げます。私がこの曲と出会ったエピソードと共に、吹奏楽コンクール全国大会での演奏を中心にご紹介していきましょう。
私が吹奏楽に対して興味を持ち始めた中学2年生の頃、音楽室に置いてあった顧問の先生の私物のCDやVHS(ビデオテープ)をお借りしては家で聴いていました。顧問の先生が指揮をされているコンクール映像のビデオを見ていた時、自由曲のファンファーレと心地よいリズムにのったメロディが妙に印象に残ったのですが、ビデオテープに記載がなくアナウンス部分もカットされていて曲名が分かりませんでした。それから月日が経った頃に同じ曲を聴くことができて、曲名がバレエ音楽「シルヴィア」のバッカスの行列だったことがようやく分かり謎が解けた時のことをよく覚えています。

バレエ音楽「シルヴィア」
「シルヴィア」は、イタリアの詩人タッソの詩劇「アミンタ」を原作とし、1876年にパリ・オペラ座で初演されたロマンティック・バレエです。音楽はフランス・バレエ音楽の父とも呼ばれるレオ・ドリーブによって作曲されました。
「シルヴィア」のストーリーを簡単にご紹介しておきます。
羊飼いの青年アマンタが美しい妖精シルヴィアに恋してしまいます。しかし、妖精と人間の恋愛はタブーだったのです。そんな二人を愛の神エロスが近づけようとしますが、悪しき狩人のオリオンがシルヴィアを奪い自分の洞窟に連れ帰ります。拉致されたシルヴィアはオリオンをお酒で酔いつぶし、その隙にキューピットに助けられて洞窟から逃げ出します。最後は愛の神エロスのとりなしにより、めでたくシルヴィアとアマンタは結婚する。というお話です。
フォスターミュージック ホームページ バレエ組曲「シルヴィア」より、II. 間奏曲とゆるやかなワルツ IV. バッカスの行列:レオ・ドリーブ arr. 佐藤博 [吹奏楽スコア] 概要より引用
明石高校OB吹奏楽団 (1985年)
バレエ組曲「シルヴィア」より
バッカスの行列
作曲:L.ドリーブ 編曲:青山 正
全日本吹奏楽コンクール
1964年(第12回大会) 第1位
演奏:明石高校OB吹奏楽団
指揮:青山 正
私が通っていた中学校から一番近い場所にある高校であり、中学生だった時に吹奏楽部の高校生と合同で演奏したこともあるなどの交流があってご縁があった兵庫県立明石高校は、2023年に創立100周年を迎えた歴史ある学校ですが、明石高校音楽部のOBOGで結成された明石高校OB吹奏楽団は1964年に三年連続で1位に輝いた実績のある一般バンドです。1960年代の録音なので歴史を感じる音質ではありますが、37名での演奏とは思えない迫力のサウンドと張りのある金管楽器を筆頭にどのパートも上手で、同じ高校出身であるが故の一体感を感じることができる名演だと思います。
中村学園女子高等学校 (1988年)
バレエ組曲「シルヴィア」より
狩りの女神、ピッツィカート、バッカスの行列
作曲:L.ドリーブ 編曲:小長谷 宗一
九州吹奏楽コンクール
1988年(第33回大会) 金賞
演奏:中村学園女子高等学校吹奏楽部
指揮:石坂 久
小長谷宗一さんのバレエ音楽の吹奏楽編曲版は中村学園女子高校と相性が良くて名演が多いのですが、ドリーブ作品では1985年の「コッペリア」に続いて1988年に「シルヴィア」を取り上げています。勇ましいホルンのメロディが特徴の狩りの女神、中間部以外は弦楽器のピッツィカート奏法のみで演奏されるメロディが美しいピッツィカート、華やかなファンファーレから小気味いいリズムの行進曲が楽しいバッカスの行列という構成のカットになっており、「コッペリア」と同じぐらい良い編曲だと思うのですがこの小長谷版の編曲はなぜか全国大会では一度も演奏されておりません。中村学園女子高校はこの年に指揮の先生が変わり、前年までの一体感が少し薄れてしまっている感じはありますが代表でもおかしくないぐらいの素晴らしい演奏だと思いますので、もしこの年に全国大会で演奏されていたら小長谷版が流行っていた未来があったかもしれません。
阪急百貨店吹奏楽団 (1994年)
バレエ組曲「シルヴィア」より
バッカスの行列
作曲:L.ドリーブ 編曲:建部 知弘
全日本吹奏楽コンクール
1994年(第42回大会) 金賞
演奏:阪急百貨店吹奏楽団
指揮:鈴木 竹男
私が初めて聴いたバッカスの行列がEs-durに移調されていたことと、この調性が吹奏楽の編成に合っていて曲調的にも違和感がなかったことでEs-durが原調だと思い込んでいたのですが、阪急百貨店吹奏楽団の建部知弘さんの吹奏楽編曲版での演奏を聴いてこの曲の原調がE-durだったことを知り、シャープ系の調性がもつ華やかさに大変驚きました。吹奏楽の編成だとクラリネットやサクソフォーンがシャープだらけの調号になるなど演奏がかなり大変になるはずなのですが、そのようなことが分からないほど見事な演奏で古豪バンドである阪急百貨店吹奏楽団の実力を思い知らされます。
愛媛県立松山南高等学校 (1999年)
バレエ組曲「シルヴィア」より
狩りの女神、ピッツィカート、バッカスの行列
作曲:L.ドリーブ 編曲:建部 知弘
全日本吹奏楽コンクール
1999年(第47回大会) 銀賞
演奏:愛媛県立松山南高等学校吹奏楽部
指揮:大力 友子
愛媛県立松山南高校は、バレエ組曲「シルヴィア」を演奏した1999年が全国大会初出場にして全国大会唯一の出場となっています。この時代の四国の高校バンドのサウンド傾向とは少し違っていて、ドリーブがフランス音楽だということが感じられる透明感のあるサウンドが特徴的です。勇ましさだけでなく丁寧で好感がもてる狩りの女神、建部版の編曲の特徴である鍵盤打楽器が主体となっていて独特の魅力があるピッツィカート、建部版とは違いEs-durに移調されていますが勢いだけでなく丁寧にきっちりと作られていて曲の良さが伝わるバッカスの行列の演奏は、この年の高校の部の大トリに相応しい「シルヴィア」の名演だと思います。
あとがき
いかがでしたでしょうか。ドリーブ作曲のバレエ音楽「シルヴィア」の、コンクールでの名演をご紹介しました。
近年はコンクール以外でもドリーブ作品を聴く機会が少なくなってしまいましたが、生誕190年である今年をきっかけに「コッペリア」や「シルヴィア」の音楽が演奏されていくことを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

