みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。
過ごしやすい秋があっという間に過ぎ、初冬の気配が感じられるようになってきました。風邪も流行していますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。日本をはじめ、英国やその他の国々でも金管バンド業界はシーズン真っ只中。各地でコンサートやコンテストが開催され、大いに盛り上がりを見せています。
さて、今回の金管バンドナビでは、前回・前々回に取り上げたブリティッシュ・オープン、全英大会決勝に続き、英国の今年最後を飾る、同国金管バンド業界最大のエンターテインメント系コンテスト「Brass in Concert(ブラス・イン・コンサート)」をご紹介します。どうぞお楽しみください。
INDEX
Brass in Concert 2025

1977年に始まった「Brass in Concert」(以下、BiC)は、英国金管バンド業界で 最も規模が大きく、エンターテイメント性を競い合う コンサート形式のコンテストです。毎年、英国のみならずヨーロッパ各地、そして時には他大陸からもバンドが参加し、エンターテイメント王座を巡って熱い戦いを繰り広げます。
今年のBiCには、英国(イングランド、ウェールズ、スコットランド)に加え、オランダ、ノルウェーから計11バンドが出場しました。11月15日(土)、イングランド北部ニューカッスルにあるザ・グラスハウスにて開催され、各バンドが個性豊かなステージを披露しました。
出場バンド
| 演奏順 | バンド名 / 国 / 指揮者名 | 国 | プログラム表題 | その他 |
| 1 | Cory / Philip Harper | 🏴 | Back to the Future | 2024王者 |
| 2 | KNDS Fairey / Mark Heron | 🏴 | Pictures at an Exhibition | |
| 3 | The Cooperation / Katrina Marzella-Wheeler | 🏴 | La Première | BiCにおける🏴バンドの優勝はこれまで無し |
| 4 | GUS / Christopher Bond | 🏴 | Love Beyond The Rose | |
| 5 | Kleppe Musikklag / Tormod Flaten | 🇳🇴 | Wall Street – For The Love Of Money | |
| 6 | Carlton Main Frickley Colliery / Allan Withington | 🏴 | Eurovision 2025 | |
| 7 | Foden’s / Michael Fowles | 🏴 | EXODUS | MOSES IN EGYPT | 2023王者 |
| 8 | Schoonhoven / Eric Janssen | 🇳🇱 | The Red Bike | BiCにおける🇳🇱バンドの優勝はこれまで無し |
| 9 | Flowers / Paul Holland | 🏴 | The Heist | |
| 10 | Aldbourne / Glyn Williams | 🏴 | Through the Wardrobe | |
| 11 | Brighouse & Rastrick / David Thornton | 🏴 | Dracula: A Shadow Through Time | ブリティッシュ・オープン2025王者 |
上記の表にあるように、各バンドが工夫をこらした多彩なプログラムを用意していました。
Cory-コーリー

前年王者のコーリーは、なんと“コンテスト運”が試される演奏順1番に。当日の演奏順が早いほど結果が下がりやすいというデータもあり(詳細は下記リンクをご参照ください)、厳しいスタートとなりました。
1985年公開のSF映画『Back to the Future』を題材にしたプログラムで、コーリーは優勝を狙います。長年プリンシパル・コルネットを務めてきたトム・ハチンソンにとって、今回がコーリーのメンバーとして最後のコンテスト。はたして結果はどうなるのでしょうか。
The Cooperation-クーオペレーション

指揮者として今年絶好調のウィーラー率いるクーオペレーションは、1913年にパリのシャンゼリゼ劇場で初演されたイゴール・ショスタコーヴィッチ作曲のバレエ音楽『春の祭典』から始まるプログラム『La Première(初演)』で勝負します。
補足ですが、BiCの歴史上、スコットランドのブラスバンドが優勝した記録はこれまで一度もありません。
GUS-ジー・ユー・エス

ジー・ユー・エスは、かつてコーリーバンドの専任作曲家を務め、現在は指揮者や審査員としても活躍する若手有望株、クリス・ボンドが指揮者として出場します。プログラムタイトルは『Love Beyond The Rose(バラを超えた先の愛)』。新作が数多く披露される本大会ですが、作曲家でもある指揮者ならではの新作はより一層楽しみです。
Foden’s-フォーデンス

2023年度のBiC王者、フォーデンスですが、その後は昨年の全英選手権決勝で準優勝、そして今年2025年は全英選手権北西地区予選で優勝するにとどまり、成績はやや振るいません。そのため世界ランキングも下がっています。しかし、実力は言うまでもなく確かです。BiC2025では、旧約聖書のモーゼの十戒やエジプトをテーマにしたプログラムで挑みますが、果たして結果にどのように反映されるでしょうか。
Schoonhoven-スコーンホーフェン

今回、オランダから唯一参加するスコーンホーフェンは、2025年オランダ・オープン王者として勢いに乗るバンドです。プログラムは、オランダ最大の都市アムステルダムの風景やイメージを題材にした『The Red Bike(赤い自転車)』。ダッチ式金管バンドならではの演奏に大いに期待がかかります。
Brighouse & Rastrick

二か月前に開催されたブリティッシュ・オープンでは、レジェンドの一角であるキングと共に優勝を飾ったブリッグハウス。今回のBiCには、ユーフォニアム奏者で王立ノーザン音楽大学にて教鞭をとるソーントンと共に出場します。
プログラムタイトルは『ドラキュラ-時を超えた影-』。どのような曲が散りばめられているか、注目が集まります。
結果は次回
今年のBiCには、上記11バンドが揃い、多種多様で個性豊かなステージを披露します。今年のエンターテインメント王座を手にするのはどのバンドか、また各セクション賞やソリスト賞にもぜひ注目してください。
また、日本の金管バンド業界も冬に向けて素晴らしいコンサートが目白押しです。お近くのコンサートにぜひ足を運んでみてください。以下のリンクから、日本各地のバンドイベント情報をご覧いただけます。
それではまた次回お会いしましょう。今回も誠にありがとうございました。
河野一之(Kazuyuki Kouno)
https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Buffet Crampon Besson, B&S並びにMercer & Barker社アーティスト。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスブラスバンド指導者協会理事。

