【吹奏楽ナビ】#46 バレエ音楽「ガイーヌ」①

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皆さま、こんにちは。

猛暑の毎日に加えて地震や台風に線状降水帯と自然の猛威に不安な毎日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

吹奏楽コンクールでは支部大会が半分ほど終わった頃ですが、支部代表となった団体の自由曲を見ていると昔懐かしの曲がちらほらとあり、特にその中でも、バレエ音楽「ガイーヌ」に懐かしさを感じましたので、今回は、バレエ音楽「ガイーヌ」を取り上げます。

吹奏楽コンクール自由曲としての「ガイーヌ」と、レスギンカ

旧ソビエト連邦の作曲家、アラム・ハチャトゥリアンが作曲した バレエ音楽「ガイーヌ」が全国大会で初めて演奏されたのは1968年ですが、その約10年後の1979年に島田市立島田第二中学校が「ガイーヌ」での初金賞受賞となり、この時に演奏された曲がレスギンカという舞曲でした。スネアドラムが大活躍する高速で爽快なかっこいい曲で、その後たくさんの団体によって「ガイーヌ」が演奏されるきっかけになった曲だと思いますので、今回はレスギンカを演奏したカットの団体をいくつかご紹介します。

大阪市立城陽中学校 (1980年)

バレエ音楽「ガイーヌ」より
子守歌、レスギンカ
作曲:A.ハチャトゥリアン 編曲:藤田 玄播


全日本吹奏楽コンクール
1980年(第28回大会) 金賞
演奏:大阪市立城陽中学校吹奏楽部
指揮:神出 有光

レスギンカの全国大会初演は島田第二中学校ですが、関西出身の私にとっては大阪市立城陽中学校の演奏を聴いたのが先だったこともあり、レスギンカの演奏で最初に思い浮かぶ演奏となっています。

美しい音色で表情豊かなオーボエのソロで子守歌《0:00~》が始まります。小細工のない真っ当な演奏で子守歌の音楽をじっくりと聴かせてくれて、中学生らしい素直な音色での表情豊かな歌が心に残ります。スネアドラムのリムショットを伴った強烈なフレーズでレスギンカ《4:26~》が始まりますが、超高速で躊躇なく突き進んでいく若々しいエネルギーがとても魅力的です。打楽器の要所でのアクセントがしっかり効いていて金管楽器のパワーも申し分なく、最後までスタミナと集中力が切れることのない見事な演奏で、今でもコンクールでのレスギンカの伝説の演奏として記憶に残っています。

中央大学 (1987年)

バレエ音楽「ガイーヌ」より
序奏、ヌーネの踊り、バラの乙女たちの踊り、レスギンカ
作曲:A.ハチャトゥリアン 編曲:林 紀人


全日本吹奏楽コンクール
1987年(第35回大会) 金賞
演奏:中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽部
指揮:林 紀人

コンクールでの「ガイーヌ」の演奏において、中央大学は先駆者であり後の団体に多大な影響を与えたと言えます。コンクールで初めて序奏を取り上げ、バラの乙女たちの踊りからレスギンカという流れのカットを後に流行らせたきっかけとなる名演を残しました。

金管楽器の美しくも音圧充分なファンファーレの序奏《0:00~》で幕が開き、少し奇妙なメロディが魅力的なヌーネの踊り《0:39~》が軽快に演奏されていきます。ぴったりと揃ったミュート付きトランペット・トロンボーンから始まるバラの乙女たちの踊り《1:55~》では木管楽器の表情豊かな演奏と決めどころの金管楽器の豊かな音圧との対比で楽しく聴くことができます。強烈過ぎるリムショットで始まるレスギンカ《4:10~》は高い技術力に裏打ちされた安定感のある演奏に打楽器のバランスの良いアクセントが加わり、聴かせどころをおさえている指揮者の見事な力量によって感銘度の高い演奏となっています。

総社市外二箇村中学校組合立総社東中学校 (1989年)

バレエ音楽「ガイーヌ」より
アイシャの目覚めと踊り、バラの乙女たちの踊り、レスギンカ
作曲:A.ハチャトゥリアン 編曲:藤田 玄播、稲垣 卓三


全日本吹奏楽コンクール
1989年(第37回大会) 金賞
演奏:総社市外二箇村中学校組合立総社東中学校吹奏楽部
指揮:熊澤 利紀

クラリネット奏者である熊澤利紀先生が指揮する総社東中学校が全国大会での初金賞を受賞した記念の年の演奏です。

切ないメロディが特徴的なアイシャの目覚めと踊り《0:00~》が始まります。繊細で表情豊かな美しい木管楽器の音色を存分に堪能でき、全体をリードしていくクラリネットパートが特に美しい音色で心に残ります。バラの乙女たちの踊り《2:49~》でもクラリネットパートの活躍が光りますが、要所での金管楽器や低音の仕事ぶりも見事で完成度が高いです。レスギンカ《5:02~》の木管楽器のメロディでアーティキュレーションが明確に聴こえてくるのはとても恐ろしい技術力と完成度なのですが、膨大な練習量と全体のバランス感覚の良さがこの演奏を生み出したのだろうと思います。全体を通して、とにかくクラリネットパートのレベルの高さに驚かされる名演です。

ブリヂストン吹奏楽団久留米 (1998年)

バレエ音楽「ガイーヌ」より
序奏、バラの乙女たちの踊り、レスギンカ
作曲:A.ハチャトゥリアン 編曲:林 紀人


全日本吹奏楽コンクール
1998年(第46回大会) 金賞
演奏:ブリヂストン吹奏楽団久留米
指揮:吉永 忠晴

今でも全国大会に出場し続けている九州の雄、ブリヂストン吹奏楽団久留米が「ガイーヌ」でレスギンカを演奏していて、私は中学生の時にこの演奏を聴いたことが「ガイーヌ」に興味をもつきっかけとなりました。

音圧に溢れた金管楽器の雄大なファンファーレで序奏《0:00~》が始まります。明るく軽快な演奏に惹き込まれてから、パワフルなミュート付きトランペット・トロンボーンでバラの乙女たちの踊り《1:35~》に続いていき、懐の深い低音に支えられた安定感のあるサウンドが魅力的です。スネアドラムのリムショットよりもホルンの勇壮な響きが際立って始まるレスギンカ《3:55~》は、少し落ち着いたテンポながらしっかりと熱量がある演奏で、特にホルンの音圧の凄さは圧巻です。響きの豊かなホールを味方につけて、大人ならではの豊かなサウンドが魅力的な「ガイーヌ」の演奏です。

あとがき

いかがでしたでしょうか。ハチャトゥリアン作曲「ガイーヌ」の、レスギンカを演奏したカットのコンクールでの名演をご紹介しました。

次回は、「ガイーヌ」といえばこの曲!という有名曲を演奏したカットの団体をご紹介します。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

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塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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