【吹奏楽ナビ】#43 全国大会 2009年 大阪桐蔭高校

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皆さま、こんにちは。

前回に引き続き、過去のコンクール全国大会から課題曲・自由曲を合わせての名演をご紹介しようと思います。今回は、大阪桐蔭高校の2009年全国大会の名演をご紹介します

大阪桐蔭高校吹奏楽部

春夏の甲子園で優勝するほど有名な野球部や、花園での優勝経験があるラグビー部など、スポーツの分野での華々しい活躍が有名な大阪桐蔭高校ですが、吹奏楽部は2005年に野球部の応援のためというスポーツ強豪校らしい理由で生まれたそうです。

過去に大阪市立の生野中学校・城陽中学校を全国大会に導いてきた実績のある梅田隆司先生が2006年に大阪桐蔭高校吹奏楽部の総監督に就任すると、創部からわずか2年、梅田先生が就任した1年目にコンクール全国大会に初出場するという快挙を成し遂げて、高校吹奏楽界に彗星の如く現れました。その後、昨年までに14回全国大会に出場していて、現在では関西を代表する強豪校となっています。この学校の特徴として、吹奏楽部出身者がその後プロオーケストラの団員として活躍されていることも特筆すべきことです。

【名演紹介】大阪桐蔭高校(09年)

課題曲Ⅴ:躍動する魂~吹奏楽のための
作曲:江原 大介

「カルミナ・ブラーナ」より 3、5、6、10、12、13
作曲:.オルフ
 編曲:.クランス

全日本吹奏楽コンクール
2009年(第57回大会) 金賞
演奏:大阪桐蔭高等学校吹奏楽部
指揮:梅田 隆司

課題曲Ⅴ:躍動する魂~吹奏楽のための

冒頭の木管楽器の6連符が正確でありながらも美しい音色で幻想的な雰囲気で進んでいきます。0:29からは1つの大きな流れのメロディラインを細かく楽器が変わっていきながら進んでいくのですが、楽器の変わり目が分からないぐらい全ての楽器の発音が揃っていて大きなうねりを感じさせながらも技術的な完成度が恐ろしいほど高く、コンクール課題曲の現代音楽として非の打ち所がありません。ところどころに挟まれる各楽器のソロなどのパッセージがどの楽器も音楽的でありながら正確さを失っておらず、無機質と思われる現代音楽にある種の人間らしさが感じられるというとてつもないレベルに昇華することができており、課題曲Ⅴとしては滅多に出会えないレベルの演奏だと思います。

2:17からの勢いを保ちながらの一体感も物凄いのですが、3:16からの高速6連符のタンギングを全く難しさを感じさせずに突き進んでいく様が圧巻で、最後まで勢いが増していき3:36のfoot stamping!!(可能な限り強烈に地を踏む)も見事に決まって鮮やかに曲が終わります。

「カルミナ・ブラーナ」より 3、5、6、10、12、13

美しいホルンの音色によって、3.見よ、今が楽しい《0:00~》が始まります。歌を意識したフレーズ感を意識しながらも軽快なリズム感にのっていて、金管楽器の輝かしい音色が印象的です。

5.森は咲き乱れる《0:53~》では、3拍子の踊りのリズムに乗りながら歌のアゴーギグを伴った木管楽器中心の音楽的な演奏を堪能することができます。1:37のトロンボーンの歌の歌詞を表現した柔らかいアタックが美しく耳に残ります。

パワフルで刺激的な金管楽器のファンファーレで始まる 6.たとえこの世界がみな《2:05~》では、金管楽器中心の音圧溢れるサウンドに圧倒され、最後の掛け声のヘイ!も見事に決まっています。

10.心を天秤にかけて《2:55~》では一転して、木管楽器の美しいハーモニーにのってイングリッシュホルン、フリューゲルホルンの音楽的で表情豊かなソロに心を奪われます。ソロが高校生離れした素晴らしさなのはもちろんですが、伴奏のフレーズ感がソロとしっかり共有できていることもとても素晴らしいです。

12.美しい乙女に幸いあれ《4:50~》では、合唱を意識したと思われるよくブレンドされたサウンドと雄大なフレーズ感による歌いこみが感動的で、バンド全体はもちろん個々の音色の美しさも際立っています。

ドラと低音の一発で、終曲の 13.おお、運命の女神よ、世界の王妃よ《6:04~》が始まります。緊張感をもった弱奏でありながら、歌詞を意識したフレージングをしっかりと聴かせてくれます。7:03からのティンパニの連打にのって金管楽器の音圧溢れるパワーが炸裂し、最後の強烈なクレッシェンドで曲が終わります。

あとがき

いかがでしたでしょうか。吹奏楽コンクールに彗星の如く現れた大阪桐蔭高校の名前を全国に轟かせることになった名演をご紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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