皆さま、こんにちは。
梅雨の時期が少し遅れてやってきたかと思えば猛暑日になったりと気候の変化が激しい今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
7月になり、今年の吹奏楽コンクールシーズンが近づいてきましたので、過去のコンクール全国大会から課題曲・自由曲を合わせての名演をご紹介しようと思います。今回は、酒井根中学校の2007年全国大会の名演をご紹介します。
柏市立酒井根中学校吹奏楽部
全国大会での金賞受賞が16回、しかも三出での休みを除くと昨年までで15回連続金賞という驚異的な成績を残していて、東関東支部を代表する中学校である酒井根中学校ですが、全国大会に初出場したのは2002年と意外にも歴史は浅く、急速に力をつけていったバンドと言えるでしょう。私は2003年の全国大会で酒井根中学校の演奏を聴いているのですが、美しいサウンドと丁寧な音楽の作り方に好感をもったことを覚えています。その後の動向を追っていると中学生が演奏するには難易度が高いと思われた邦人作品を次々と自由曲に選曲し、現代の中学校バンドのパイオニアと言える存在となっていきました。
【名演紹介】柏市立酒井根中学校（07年）
課題曲Ⅲ：憧れの街
作曲：南 俊明
科戸の鵲巣－吹奏楽のための祝典序曲
作曲：中橋 愛生
全日本吹奏楽コンクール
2007年(第55回大会) 金賞
演奏：柏市立酒井根中学校吹奏楽部
指揮：須藤 卓眞
課題曲Ⅲ：憧れの街
冒頭のファンファーレから豪華すぎるサウンドで圧倒されますが、マーチの安定感、メロディの軽快かつ表情豊かな歌い方には文句をつけるところが見当たらないほど隙が無く見事です。トリオでは静寂の中でもメロディの歌いこみがよく伝わり、1:56の木管低音の発音が恐ろしく揃っていて一体感がもの凄いです。3:06のオーボエ、クラリネット、フルートの各ソロも美しい音色で表情豊かに歌われていて、最後まで完成度の高さが群を抜いています。
科戸の鵲巣－吹奏楽のための祝典序曲
冒頭の木管楽器の連符で鬼気迫るものを感じるほどの統一感が凄まじく、中学生らしい若々しいスピード感で駆け抜けていく音楽が圧巻です。それぞれの楽器の技術力が中学生のレベルを遥かに超えていながらも、全ての動きが聴こえるバランスの良さは凄いとしか言いようがありません。1:41からは木管楽器のソロが続いていきますが、ソプラノサクソフォーン・フルート・バスクラリネット・オーボエ・アルトサクソフォーンの各ソロ全てが音楽的かつ表情豊かでどうやったらこんなに上手に吹けるのだと感嘆してしまいます。
3:14からウッドブロックの軽快なリズムに乗って再びテンポが速くなりますが、各楽器の見せ場が見事に決まりながら進んでいきます。3:38のクラリネットセクションはパワーと音色の良さを共存できていて存在感を放っており、4:48の金管楽器のファンファーレは若干ずれてしまいましたが音圧と統一感が圧倒的です。5:40からこの曲の最大の見せ場である魅力的なメロディが感動的に歌いこまれていき、5:57のエスクラリネットソロはオーケストレーション的に聴こえさせるのがとても難しいのですが複数名のソリでの演奏によって最後まで聴こえているのが素晴らしいです。木管楽器のロングトーンに鈴などの打楽器が加わっていく幻想的な部分から、フルート・ピッコロが鳴り響いてクレッシェンドした先に再び冒頭のファンファーレが壮大に鳴り響き、最後まで金管楽器のパワーが衰えることなく鮮やかに曲が終わります。
あとがき
いかがでしたでしょうか。中学生のレベルを遥かに超えた圧倒的な技術力と中学生らしい若々しいエネルギーに溢れた音楽性がマッチした、酒井根中学校の名演をご紹介しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。
塚本 啓理（つかもと けいすけ）
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。
