【吹奏楽ナビ】#32 全国大会 2003年高校前半の部①

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皆さま、こんにちは。

今回は、全国大会2003年高校前半の部の名演をご紹介します。以前の記事でも触れていますが、私が初めて全国大会を観客として聴いたのは2003年で、この年の演奏は全部門ともに記憶に残っていて今でも鮮明に思い出せる演奏があります。その中でも、コンクールという枠組みを越えてコンサートを聴いているような気持ちにさせてくれた駒澤大学高校の演奏をご紹介しましょう。

駒澤大学高校

駒澤大学高校は東京を代表する名門バンドで、1981年の全国大会初出場から現在までに11回全国大会に出場しており、2000年に初めて全国大会金賞を受賞してから2003年、2004年、2009年、2012年と全国大会に出場した年は連続で金賞受賞という輝かしい記録があります。2021年度で39年間指揮をされていた吉野信行先生が退職されまして、2022年度からは新しく田村拓巳先生が指揮者となって新たな駒澤大学高校吹奏楽部の歴史が始まっており、2023年は都大会で金賞受賞という成績を収めています。

【名演紹介】駒澤大学高等学校(03年)

コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディ
作曲:P.ウィリアムズ
 編曲:S.ネスティコ

全日本吹奏楽コンクール
2003年(第51回大会) 金賞
演奏:駒澤大学高等学校吹奏楽部
指揮:吉野 信行

アメリカ・ポピュラー音楽界の大御所である作曲家のパトリック・ウィリアムズが書き下ろし、カウント・ベイシー・オーケストラの作・編曲家として高名なジャズ界の大御所であるサミー・ネスティコが吹奏楽曲としてのアレンジを施したコンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディは、フル編成の吹奏楽団とビッグバンドとが共演するというかなり珍しい作品となっています。

曲の冒頭から、駒澤といえば金管セクションと言われるぐらいパワフルでもの凄い音圧の金管楽器のサウンドを浴びることができます。生で聴いていた時は響かない普門館でもしっかり鳴っていたのを思い出します。0:38からは早すぎないテンポでしっかりとビートを刻んで音楽が進んでいくのがとても印象的で、高校生の若々しさというよりは落ち着いた大人の音楽と表現できるでしょうか。0:38のジャズの音の処理の正確さと1:26のシンフォニックなサウンドの部分との対比がとても素晴らしいです。2:31からの木管楽器のパッセージは地味に難しいのですが、アーティキュレーションが聴きとれる正確さは練習量の賜物だと言えるでしょう。3:18のヴィヴラフォンのソロと3:46のサクソフォーン属のソリは変な誇張をすることがなくてプロのようなプレイだと感心して聴いていました。

4:12の打楽器の特徴的なリズムと美しい木管楽器の3連譜に導かれてアフロの部分になりますが、4:44のフリューゲルホルンのデュオは息がぴったりで哀愁溢れる音色が心に沁みます。木管低音域のリズムを経て5:33からが木管楽器の最大の見せ場と言えますが、メロディのしっかりとした音圧と幻想的な雰囲気の両立がとても素晴らしいです。強烈なクレシェンドからのトランペットセクションを中心とした音圧が凄まじく、それに応える木管楽器の音圧も相まって豪華絢爛なサウンドが響き渡ります。徐々に低音域に静まり返ったと思えば7:30のバスドラムの一撃で強烈なエンディングが始まり、高いテンションを保ったまま鮮烈に曲が終わります。

あとがき

いかがでしたでしょうか。コンクール自由曲として演奏されるのはなかなか珍しい名曲の、ジャズの演奏スタイルをしっかりと表現している名演をご紹介しました。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。

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塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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