皆さま、こんにちは。
気温が低くなってきて冬らしくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回も、全国大会2011年高校の部の名演をご紹介します。
岡山学芸館高校
岡山学芸館高校は、1984年に前身である金山学園高校が全国大会に初出場してから2023年までに20回全国大会に出場している中国支部の常連校ですが、特に近年は6年連続で全国大会金賞受賞という輝かしい受賞歴に加えて、2年連続でＡ．リードの作品を自由曲に選ぶという特に昭和世代にはたまらない選曲で、個人的にもとても注目している学校です。
現在の指揮者の中川先生が2006年の全国大会に初めて出場してから数年間はオーケストラ曲の編曲作品を自由曲に選んでいましたが、2011年に岡山学芸館高校としては初めてＣ．Ｔ．スミスの作品を自由曲に選び、3年ぶり2回目の全国大会金賞を受賞します。この年以降現在まで自由曲に海外オリジナル作品を選んでいることを考えると、この年が1つの転換期になったと言えるのではないでしょうか。
【名演紹介】岡山学芸館高等学校（11年）
課題曲Ⅳ：南風のマーチ
作曲：渡口 公康
華麗なる舞曲
作曲：Ｃ.Ｔ.スミス
全日本吹奏楽コンクール
2011年(第59回大会) 金賞
演奏：岡山学芸館高等学校吹奏楽部
指揮：中川 重則
課題曲Ⅳ：南風のマーチ
ブラスセクションの鮮烈なファンファーレにホルンのグリッサンドも相まって豪華絢爛なオープニングで曲が始まりますが、0:11からの第1マーチのクラリネットセクションのメロディは芯があってよく通る音色でありながらクラリネット特有の柔らかさを併せ持ち、それでいてマーチの快活さも失っていない理想的な演奏です。全体的に金管セクションの明るく輝かしい部分と木管セクションの柔らかく繊細な部分の対比が見事に際立っており、それを打楽器セクションが音楽的なアクセントを効かせながら上手くまとめていて、各声部のバランスもしっかりとれており、課題曲という枠を超えて1つの作品として聴くことができます。
華麗なる舞曲
トランペットセクションを中心としたパワー全開のファンファーレがとても印象的に曲が始まります。主部からは荒さとは無縁の少し落ち着いたテンポで進んでいきますが推進力は失われておらず、技術的に恐ろしく高い完成度で曲が進んでいきます。
2:16のクラリネットソロは芯のある美しい音色がホールに響き渡っていて堂々とした吹きっぷりが素晴らしいです。3:15からのオーボエ、クラリネット、アルトサクソフォーン、フルートと受け継がれていくソロはそれぞれの音楽的なアピールが存分に堪能できて、4:28からのテンポが上がった推進力で展開される歌い回しに圧倒されます。5:03のファゴットソロもとても美しい音色で素晴らしいです。
この曲最大の見せ場となる5:15からのピッコロトランペットのソロはとても美しい音色で難しさを全く感じさせない見事な演奏で、続く5:35からのピッコロトランペットとトランペットとのデュオは最後のＥｓの伸ばしの音を最後まで吹き切るパワーが圧巻です。
コンクールで演奏される場合は時間の都合とあまりにも難易度が高すぎるためにカットされることが多い6:29からが聴けるというだけでも物凄いことなのですが、6:58からのプロでも相当に難しい連符地帯をテンポを落とさず木管金管共に全く危なげなく吹き切る技術力の高さに驚愕させられます。曲の最後まで急激にテンポが上がることがないのですが、勢いに任せなくても最後まで音圧が全く落ちない金管セクションのレベルの高さは異次元で、演奏後の歓声と途切れない拍手が演奏のあまりの素晴らしさを表しています。
あとがき
いかがでしたでしょうか。音楽的でありながら完成度が恐ろしく高い演奏で記憶に残っている岡山学芸館高校の演奏をご紹介しましたが、この演奏は前半の部のプログラム4番、朝9:45からの演奏ということにも驚かされる名演となっています。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。
塚本 啓理（つかもと けいすけ）
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。
