【金管バンドナビ】#13 金管バンドの楽器 打楽器

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みなさん、こんにちは。金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。

金管バンドで使われる楽器シリーズ最終回はリズムの王様、打楽器パートです。世界最古の楽器は打楽器だったであろうと言われているこの楽器群ですが、一説によるとその種類は、驚きの1,100種類以上とも言われ、現代の金管バンド作品でも数多くの打楽器が使われています。

ということで、今週は金管バンドにおける打楽器をご紹介していきたいと思います。

打楽器(Percussion)

ソプラノ、アルト、テナー、ベースの4つの音域によって構成をされている管楽器パート、そこへリズムの要として、時には各音域と協奏することによって音色や音量のバランスを変える重要なパートです。先ほど書いたように決してリズムを扱っているだけのパートではなく、音程や音階をもったさまざまな打楽器によって時にはソロやメロディの演奏、さらに伴奏など幅広い役割を持つパートです。

金管バンドが用いられるようになった初期の頃は、教会や街頭での讃美歌の演奏や、行進曲の演奏が多かったこともあり、打楽器は無し、あるいは使われたとしても行進曲中のリズムを取る役割として ベース・ドラム(Bass Drum)やスネア・ドラム(Snare Drum)、そして場合によってはシンバルなど、一部の打楽器のみが使用されていました。

また初期のコンテストも打楽器無しの管楽器のみ(木管含む)で開催をされていました。というのもそもそもクラシック音楽に打楽器が登場したのはバッハ(1685-1785)やヘンデル(1685-1759)よりも後のモーツァルト(1756-1791)やハイドン(1732-1809)といった古典派の時代になってからです。そのため誕生当時、金管バンドのコンテストで使用されていたオペラやオラトリオ、また他オーケストラ曲からの編曲作品にも打楽器パートはなく、管楽器のみで演奏されていたのです。また他にも、大会自体が打楽器以外の管楽器のみでの演奏と限定する大会もありました。

なので金管バンド古典作品では打楽器の使用は無しかまたは限定的ですが、現代の作品ではオーケストラや吹奏楽で使われるようなティンパニー(Timpani)、木琴(Xylophone)や鉄琴(Vibraphone)、さらに大型のベース・ドラム(Bass Drum)などなど様々な打楽器が金管バンドでも使われ、他大編成アンサンブルと遜色のない打楽器編成となっています。

金管バンドで使われる打楽器は河野の調べでは大きく3種類あると考えています。まず鍵盤楽器などの音程を持った楽器、大型低音打楽器、そして他打楽器です。今回はこの3種類に分けてご紹介をしていきます。

音程を持つ打楽器(Tuned Percussion)

Tuned=音程を持つ楽器という意味で、木製や金属の鍵盤、また金属製のチューブや大きな釜のような本体に膜を張って音程を出す楽器の総称です。主に金管バンドで使われるのは鍵盤を持つ木琴や鉄琴、グロッケンシュピール、マリンバ、またチャイム(Tubular bells)や、後々ご紹介しますがティンパニーなどです。

鍵盤楽器と呼ばれるピアノの鍵盤のように金属や木製の鍵盤を並べた楽器は、リズムセクションとしての役割はもちろん、管楽器チームで演奏される連符を共に演奏をしたり、時にソロや曲中のアクセントのような役割もこなします。

下の映像の左端にいるのが木琴や鉄琴などの鍵盤楽器です。またトロンボーンの隣にある大型の釜のような形をした太鼓がティンパニーです。

チャイム

大型低音打楽器

先述したベース・ドラム、さらに音程を持つ打楽器でも紹介したティンパニーをこの欄に入れてみます。現代のコンサートで使用されるような高価で質の高いベース・ドラムによる響きや音色の追求というよりかは、当時のベース・ドラムの役割はバンドが行進をしている時にスネア・ドラムと共に指揮者からの合図をバンドに送ったり、テンポのキープなど音による合図的役割が主でした。

しかし、様々な指導者や音楽家、そして楽器開発者や楽器業者の尽力により、金管バンドで使用される楽器の品質も徐々に向上、それに伴って金管バンドの芸術的価値も高まり、室内でのコンサートやコンテストが主流となってきました。そのため、これまでベース・ドラムはバンドを動かしたり、演奏を始めたり止めたりするための合図やテンポの指示のみの役割でしたが、新たな役割が生まれるのです。それが低音部の補強です。

以前は金管バンドにはEbとBbのベース、ベース・トロンボーン、そして単に大きな音で合図を送るための質の低い低音のベース・ドラムしかありませんでした。しかし、コンサートホールでより倍音の豊かな響きを持つ音色を使って音楽を表現するためには、自然とオーケストラで使われるような大型で豊かな響きを持つベース・ドラムやティンパニーが金管バンドでも使用されるようになりました。これはもともとオペラやオーケストラの作品を金管バンドに編曲して使用していた流れから生まれたものです。

他打楽器

1,000種類以上もある打楽器、さらに日々音楽の発展とともにその種類も増えているため全てを書くことはできませんが、主に先述した

・テンポのキープ
・管楽器との協奏
・ソロ
・曲中の効果音としてのアクセント
・バンド全体としての響きの増強

が役割としてあります。そのためよく使われる楽器でいえばスネア・ドラムをはじめとするドラム・セット、タンバリン、シェイカー、カスタネット、トライアングルなどはクラシックやポップスに限らずよく使用されます。他にも下の動画にあるようにコンガ、クラベス、ウッド・ブロックなどもジャンルによって使われ、音楽の盛り上げに一役買っています。

現在では基本編成で3人ですが、初期の金管バンドにおける打楽器奏者は0人、またはいても1人でした。編成や曲にもよりますが、吹奏楽やオーケストラと比べると少ない人数で多くの楽器を演奏することを前提に作曲や編曲をされているこのジャンルですが、そのため他アンサンブル同様楽器の配置や数というのも演奏以上にとても大切になってくるパートです。

さらに現在では主に3人で演奏されることを見越して作曲をされることも多い金管バンドですが、徐々に音楽が複雑になってくるにつれ求められる奏者の人数も増えてきました。近い将来基本編成で打楽器奏者が4~5人いることが当たり前になるかもしれません。

演奏においても管楽器からすると未知の領域かもしれませんが、ベース奏者にとって響きや演奏のタイミング、チューニングなどベース音域で共に奏でる仲間でもあります。また他音域においても連符や効果音などでの協奏、またバンド全体においてクレッシェンドの盛り上げや響きの作り方など現代の金管バンドにとってはなくてはならない重要なパートです。

というわけでリズムの王様、金管バンドにおける打楽器パートのご紹介でした。
ソプラノ、アルト、テナー、ベースと呼ばれる4つの音域、そして打楽器と計6話にわたってご紹介してきました金管バンドの楽器たち、お楽しみいただけましたでしょうか?

歩くパイプオルガンと称されたり、その柔らかい音色が特徴的と紹介されてきた金管バンドですが、この半世紀ほどで演奏される音楽のジャンルも無数に増え、奏者自体も様々な演奏を要求されています。ぜひそれぞれの楽器の特徴や特性を活かして、様々な楽曲をスタイル豊かに演奏してみてください。

本日も最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。


河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography

洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
Besson アーティスト。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。日本ブラスバンド指導者協会理事。