【吹奏楽ナビ】名曲・名演紹介#1

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最終更新日 2023.07.27

皆さま、初めまして。

この度、吹奏楽の名曲・名演を紹介する機会をいただきました、クラリネット奏者の塚本啓理(つかもとけいすけ)と申します。

クラリネットを始めてから今日まで、吹奏楽の演奏をCDや生演奏でたくさん聴いてきました。中高生の頃はただ好きで聴いていたのが大学生以降は吹奏楽指導の参考のためにも聴くようになりましたが、時代とともに演奏が移り変わっていく中で過去の演奏の魅力を再発見することが多くなっていき、今の時代の演奏と昔の時代の演奏を知っている身として、過去の吹奏楽コンクールの名演奏を中心にご紹介していけたらと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

はじめに(自己紹介)

まずは、私のプロフィールを吹奏楽人生にスポットを当ててご紹介します。

東京藝術大学大学院を修了して現在はフリーランスの奏者として活動している私ですが、クラリネットとの出会いは中学1年生の春、吹奏楽部の仮入部でした。初めてクラリネットを吹いた時、音はスムーズには出せませんでしたが低い音の響きがいいなと興味をもってクラリネットを始めました。

私の母校である明石市立朝霧中学校の吹奏楽部は、約40年前に全国大会に出場した歴史があります。中学1年生の時は小編成の部で吹奏楽コンクールに出場したのですが、大編成の部はどんな演奏なのだろうと興味をもって吹奏楽コンクール関西大会のCDを購入したのが吹奏楽にハマる第一歩になりました。

中学3年生の春に明石市内の県立高校で全国大会に出場したことがある学校の定期演奏会を聴いてこの学校で演奏したいと思い、兵庫県立明石北高等学校に進学、高校生の時は過去の吹奏楽コンクールの演奏に興味をもつようになり、特に1980年代~1990年代の演奏を聴きたくて中古のCDなどを探して手に入れるぐらいマニアックになっていきました。

高校1年生の時に、明石市吹奏楽連盟主催の楽器クリニックに講師としていらっしゃっていた藤井一男先生に個人レッスンを受け始め、先生のご指導のおかげで東京藝術大学に入学、大学卒業後に東京藝術大学大学院に進学し、大学院修了後はフリーランスのクラリネット奏者として活動しており、吹奏楽では東京佼成ウインドオーケストラなどでエキストラ奏者として出演しております。

このような経歴ですが、私が中高生時代によく聴いていた1980年代~2000年代前半の演奏にかなりの思い出補正が入ってしまっておりますので、当時の関係者様の目に入ってご不快に思われたら申し訳ございません。

名演紹介 #1「ローマの祭り」/東海大四高(92年)

記念すべき初回にご紹介する演奏は、こちらです。

交響詩「ローマの祭り」より Ⅰ.チルチェンセス Ⅳ.主顕祭
作曲:O.レスピーギ 編曲:磯崎 敦博

全日本吹奏楽コンクール
1992年(第40回大会) 金賞
演奏:東海大学第四高等学校吹奏楽部
指揮:井田 重芳

この演奏と出会ったのは私が高校2年生の時です。この年の自由曲がローマの祭りに決まり、過去のコンクールでの演奏を探して聴きまくっていた時に名演と名高かったこの演奏を知りました。この前年の全国大会で東海大学第四高校がローマの祭りを演奏していて、その演奏はCDで聴いていてとても上手だったのですが、1992年の同校の演奏を聴いたときはそれは衝撃的でとにかく感動したのを覚えています。

東海大学第四高校(現在は東海大学付属札幌高校)といえば雄大なサウンドと安定感のある演奏が特徴なのですが、1992年の同校の演奏はそれに加えて音楽的な感銘度がとても高く、ローマの祭りの曲想に相応しいアグレッシブな表現が随所にみられます。特に金管セクションのレベルが高く、各ソロをはじめとする個人レベルの高さもこの演奏の大きな強みになっていると思います。

私がこの演奏に出会った年、母校の所属する関西支部では 三出制度(3年間連続して全国大会に出場した団体は、その翌年は吹奏楽コンクールに参加できない) の影響で全国大会常連校の2校がお休みになっており、高校3年間の中で全国大会に出場できる一番のチャンスの年だったので、とにかく燃えていました。関西支部大会の会場が兵庫県大会と同じ会場で響きの良いホールだったことや、出演順が午後の部のいい番号だったことなど運が味方してくれたこともありますが、全国大会に出場できたことは今でも忘れられない思い出となっています。この年は吹奏楽コンクールでの演奏だけでなく原曲のオーケストラでの演奏も含めてとにかくたくさん聴きましたが、この1992年の東海大学第四高校の演奏を一番多く聴いていて、全国大会当日の移動のバスの中でも聴いていた記憶があります。

今改めて聴いてみると、高校生らしく技術的に荒い部分もたくさんあるのですが、音楽的な勢いが素晴らしくて当時のことを思い出します。指導法や練習内容の進歩もあって現代の演奏のほうがサウンドもピッチも遥かに素晴らしいのですが、音楽的な個性と魅力に溢れるこの演奏を特に今の中高生には是非聴いてもらいたいと思いました。

演奏について

チルチェンセス冒頭のティンパニの強烈な一撃によって、一気に古代ローマ帝国時代にタイムスリップします。トランペットの突き刺さるファンファーレの音圧が凄まじく、それに負けない木管の音圧が合わさって恐怖を感じるほどの豪快な吹きっぷりが圧巻で、ローブラス主体の低音群の音圧と重厚な響きも素晴らしいです。

軽快なエスクラリネットから始まる現代イタリアの主顕祭は冒頭からスピード感に溢れ、スネアドラムのアグレッシブな表現に導かれて演奏は更に勢いが増していきます。各場面の転換も素晴らしく、祭りの様々なアトラクションを巡っていく楽しさを感じることができます。

ホルン・サクソフォーンの見事なアンサンブル、クラリネット高音群の楽しく溌剌としたメロディ、フルート・ピッコロのキラキラとした輝かしい音色、トランペットからトロンボーンの雰囲気ある酔っぱらいのソロなどの見せ場が次々と決まっていき、シリアスさとスピード感が共存した木管群の連符を経て、この曲一番の感動的なメロディを雄大なサウンドでに歌心満載に聴かせてくれます。

この曲のソロでは最大の山場になるトランペットのハイHがバッチリ決まり、木管群を中心とした連符から終曲に向けては狂喜乱舞のお祭り騒ぎ、最後まで勢いが衰えることなく突き進み、ラストの音が鳴り終わった瞬間にブラボーと満開の拍手が会場の普門館に響き渡ります。

あとがき

いかがでしたでしょう?技術を超えた学生らしい勢いに満ちていて、私自身も大好きなこの演奏を初回に取り上げさせていただきました。

次回は同じ年の第40回大会に生まれた、吹奏楽オリジナル作品の超難曲として有名なあの名曲を取り上げたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。


塚本 啓理(つかもと けいすけ)
兵庫県出身。12歳より吹奏楽部でクラリネットを始める。
明石市立朝霧中学校、兵庫県立明石北高等学校、東京藝術大学音楽学部器楽科クラリネット専攻を経て、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中に東京藝術大学室内楽定期演奏会に出演。
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩ「ヘンゼルとグレーテル」、Ⅺ「蝶々夫人」に出演。
これまでにクラリネットを藤井一男、村井祐児、山本正治、伊藤圭の各氏に、室内楽を四戸世紀、三界秀実の各氏に師事。
現在は、フリーランスのクラリネット奏者としてオーケストラや吹奏楽、室内楽の演奏活動をすると共に、後進の指導も精力的に行っている。

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