最終更新日 2023.05.23
こんにちは、初めまして金管バンドディレクターの河野一之(コウノ カズユキ)です。今回ご縁を頂戴し、エムハチポータルにて記事を書かせていただくこととなりました。みなさまにお楽しみいただけるようベストを尽くしてまいりますので、どうぞ以後よろしくお願いします。
内容の前に少しだけ自己紹介をさせてください。私はチューバ奏者や指揮者としてソロやオーケストラ、吹奏楽、そしてこの金管バンドでの演奏やご指導を主にしています。もともとは金管バンドを単位が取れる授業として唯一設置している洗足学園音楽大学で金管バンドに出会い、その後、このジャンルに人生を賭けてみようとこの音楽が生まれた国であるイギリスにおいて英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(Royal Welsh College of Music Drama PGDip)へ留学を行いました。大学院での研究の傍ら、創団約140年の歴史を持つCory Bandにてメンバーとして約2年間の演奏活動を行いました。このCoryは当時から現在も変わらず金管バンド業界の世界ランキングにおいて、常時1位を継続して保持するバンドで、このバンドとの演奏や世界中でのツアーの経験を元に、日本に帰国した今現在も母国における金管バンドの研究、発展に寄与させていただいています。
これらの経験から、このエムハチポータルの母体でもありますミュージックエイトが販売している楽譜ジャンルの一つ、金管バンドの専門家として現在も活動をさせていただいています。そのため、このエムハチポータルを通して、みなさんが普段演奏されていたり、聞かれている金管バンドについて少しでも知っていただき、みなさんの金管バンドライフをより楽しいものにしてもらえたらということで今回この記事を書かせていただくこととなりました。
さて、初回の本日は「#1 金管バンドのはじまり」というタイトルでお話を進めたいと思います。
今現在令和5年、日本中の小学校や社会人バンドで楽しまれている金管バンドですが、このルーツはどこにあるのかご存知でしょうか?みなさんの中にも聞いたことがある名称で、”英国式金管バンド”という呼び名でも親しまれているこのジャンルはその名が示す通り、イギリスで生まれた音楽です。というわけで約200年ほど前から少し掘り下げてみましょう。
金管バンドの始まり
1800(江戸時代:寛政12年)~
金管バンドは19世紀初頭、イギリスに点在した村で楽しまれていた小編成のアンサンブルが大元と言われ、クラリネット、オフィクレイド、セルパン、キーが付いていないナチュラルトランペット、そしてホルンなどの楽器で構成されていたそうです。その後、少ししてキー付きのビューグルも加わってきます。
セルパンの演奏
オフィクレイドの演奏
ビューグルの演奏
黎明期
1815(文化12年)~
この頃まで現代のようにバンドに名前が付くということはありませんでしたが、ナポレオン戦争の後期である1815年当時、ヴァルブシステムという世紀の大発明が開発され金管楽器の発展に大革命を起こししたのです。その後、戦線で活躍していた兵士たちが国へ戻り一般市民として生活を始めますが、軍楽隊での演奏経験からその活動を継続したいと思っていたようです。そのため現代でも金管バンドと行進曲、また軍服のようなユニフォームというのはその伝統を守るように残っています。この黎明期に誕生し、今現在でもその名前を残すものだとPeter Wharton氏が結成したWharton’s Reed Band(のちのBlack Dyke Band)や、Clegg’s Reed Band(のちのBeeses o’ th’Barn)です。先述したイングランドの強豪バンドの一つBlack Dyke Bandは2023年現在創団168年の歴史を誇っています。(2023年1月現在4barsrestによる世界ランキング5位)
金管バンド(Brass Band)オリジナル作品の誕生
1830(天保元年)~
その後、コルネット(Cornet)やサクソルン(Saxhorn)という金管楽器の発展がきっかけで、金管楽器と打楽器で構成される金管バンド(Brass Band)が誕生します。公式に出版された金管バンド編成の楽譜が1836年に出版されたことから、この時期にこのアンサンブルが誕生したと言われています。サクソルンという金管バンドにとってとても大切な用語が出てきましたが、今後のシリーズで解説していきたいと思います。
この後、救世軍や産業革命などイギリスをはじめとする世界の歴史に多大なる影響を受け、ついに金管バンドのための初めてのコンテストが開催。これらの運動はさらなる発展を迎え、英国金管バンドの黄金時代を築きます。さらに1895年には救世軍が来日、その後1902年幻燈楽隊(げんとうがくたい)という今の救世軍ブラスバンドの元祖、日本の金管バンドの先駆けが結成されますが、これら1830年以降のお話はまた次回以降。
今週もありがとうございました、またお会いしましょう。
河野一之 (Kouno Kazuyuki) https://kazuyukikouno.wixsite.com/bassjunkie/biography
洗足学園音楽大学、英国王立ウェールズ音楽歌劇大学院(PGDip)を修了。
日本ブラスバンド指導者協会理事。Sony Music Stand Up Orchestra チューバ奏者。
Nexus Brass Band、 Riverside British Brass、Immortal Brass Eternally 常任指揮者。 東京ブラスバンド祭マスバンド総括。河野企画代表。Besson アーティスト。
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