ビッグバンド移行のヒント

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最終更新日 2023.07.27

筆者: 本澤なおゆき(ミュージックエイト アレンジャー/開成ジュニアアンサンブル 代表)

近年の少子化で、思うように吹奏楽や金管バンドのフル編成が組めず、苦労している団体(小学校・中学校・高校)も少なくないと思います。

私が指導している「開成ジュニアアンサンブル」も、結成2年目に器楽合奏団から編成を拡げる際、吹奏楽・金管バンド・ビッグバンドの3つを比較検討し、人数と楽器を考慮した結果、ビッグバンドの道を選んだという経緯があります。

ここでは “吹奏楽や金管バンドからビッグバンドに移行して、少ない人数でも充実した活動がしたい” というバンドのために、ディレクター視点、アレンジャー視点で気づいた事を書き綴ってみました。

14人いればビッグバンドができる

17人編成
【17人編成】
2 A.Sax. / 2 T.Sax. / B.Sax. / 4Trp. / 3Trb. / B.Trb. / Guit. / Piano / Bass / Drs.

ビッグバンドの標準編成は17名ですが、グレード1〜2の出版譜(Hal Leonard社のEasy Jazz Ensembleや、Alfred社のYoung Jazz Ensemble、First Year Chartsなど)では、4番トランペットや4番トロンボーンがオプション扱いで省略可能になっていることが多く、14人編成でも演奏できます。さらに、ギターも省略できることが多いので、テナー・サックス2番がオプションの場合は13人でも演奏できます。

ちなみに、アメリカ式グレード2は、トランペット最高音がソであるなど、日本式グレード3と同程度のようです。

14人編成
【14人編成】
2 A.Sax. / 2 T.Sax. / B.Sax. / 3Trp. / 3Trb. / Piano / Bass / Drs.

それよりも人数が少ない場合でも、ピアノなどのコード楽器が和音を補うため、コードの構成音が足りずに音楽的に不完全になるということはあまりありません。

また、4管 + リズム・セクションなどのコンボ用楽譜も出版されています(Hal Leonard社のEasy Jazz Comboなど)。ただし、吹奏楽におけるアンサンブルのように、個々の奏者の負担が大きくなります。

リズム・セクションを核に考える

リズム・セクションの3人が揃うと、それだけで完成された音楽が生まれます。これは、吹奏楽や金管バンドでは考えられないことです。逆に言うと、ビッグバンドではそれだけ重要な役割を担うパートであるということになります。責任感と音楽性にあふれるメンバーに担当させましょう。

【ベース】
現在のパートを問わず、音感が良く、最も音楽的に信頼できる部員にベースをお願いしましょう。最初にエレキベース(ジャズベース)とベースアンプを用意します。開成ジュニアアンサンブルの場合は、初心者用の1万円台のベースを購入し、最初の2年間使い倒しました。ベースアンプは200W以上あれば、小さな公園での野外演奏、200人程度の小ホールでの演奏会などに充分使えます。また、ネックが短いショートスケールの楽器を用意すれば、小学4年生でも大抵の場合弾くことができるようです。

開成ジュニアアンサンブル

【ピアノ】
小さい頃からピアノを習い続けている部員がいれば、迷わずピアノをお願いしましょう。グレード1〜2の出版譜であれば、コードネームが分からなくても弾けます。ピアノが用意できない野外演奏などのために、64〜88鍵のキーボードと65W以上のアンプを準備すると良いと思います。

【ドラム】
明るく元気で、伸びしろのあるパーカッションの部員にお願いしましょう。複数いる場合は、タンバリンやコンガなどのラテン・パーカッションを適宜加えながら、交替で担当させます。吹奏楽の現場では、ライド・シンバルとクラッシュ・シンバルの区別がない場合も多数見受けられます。しかし、ジャズはシンバルワークが命ですので、質の良いライド・シンバルを右手側に必ず用意してください。

ビッグバンド編成にない楽器の対処法

完全にビッグバンドに移行する計画の場合は、以下に示す楽器は徐々に縮小していきましょう。ただ、グレード1〜2の出版譜の中には、これらのパートがオプションで用意されていることもあるので、共存させることも不可能ではありません。その場合の注意点をまとめました。

【フルート】
オプション・パートが用意されていない場合は、リード・トランペット(1番)の1オクターブ上を重ねるように写譜すると効果的です。具体的には長2度下げて1オクターブ上げます。8va記号は使用しません。ピッコロは特殊な場合以外使わないほうが良いでしょう。

開成ジュニアアンサンブル

【クラリネット】
トランペットの譜面をそのまま吹くのが最も簡単な方法ですが、同じリード楽器であるサックスに重ねることを推奨します。アルト・サックスであれば、完全5度下に移調します。テナー・サックスであれば、1オクターブ下に移調します。

【フレンチ・ホルン】
トロンボーンの譜面を完全5度上げて写譜すると良いでしょう。

【アルト・ホルン】
金管バンドのEs管(別名:テナー・ホルン)の場合は、アルト・サックスの譜面を読みます。ただし、上のラ以上の加線が付いた音の場合は、吹かないほうが無難です。

【ユーフォニアム】
トロンボーン1番に重ねたほうが良い場合と、4番に重ねたほうが良い場合があります。また、機動性を活かして、テナー・サックス1番を1オクターブと長2度下げてヘ音記号に書き直して吹くこともできます。その場合、上のソ以上の高い音は、吹かないほうが無難です。

【テューバ】
ビッグバンドのベースラインは、通常ベースが1人で担当しますので、テューバを重ねるのは得策ではありません。重ねると、音が濁ったり、グルーヴが重くなったりしてしまいます。この場合は、バス・トロンボーン(4番トロンボーン)に重ねると良いでしょう。ただ、グレード1〜2の譜面だと、トロンボーン4番がバス・トロンボーンを想定していない場合があるので、音が高すぎて無理が生じる場合があります。そんな時はアレンジを変えて、スーザフォンに持ち替えて、ディキシーランド・ジャズ風にベースラインを吹く、という奇策もあります。

【鍵盤打楽器】
迷わずヴィブラフォンを入れましょう。ブラスやサックスがユニゾンの時でもソリの時でも、ヴィブラフォンはよくブレンドします。グロッケンシュピール、シロフォン、マリンバなどでは、なかなかホーン・セクションのニュアンスに合わせることができません。譜面がない場合は、1番トランペットか、1番アルト・サックスを移調して重ねると効果的です。ミディアム・ハード・マレットを使って音のツブを出していきましょう。

開成ジュニアアンサンブルHP 2017年6月掲載記事より引用)

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