【私と吹奏楽】南の島の吹奏楽(土井 暢子 先生)

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吹奏楽やブラスバンドの指導の方にとって、吹奏楽とは?バンドとは?音楽とは?

全国の指導者の方々、 そして、バンド活動にがんばるメンバーたちへの応援の気持ちをこめて、現場の指導者の方の「声」をご紹介いたします。

※ミュージックエイトHPに掲載のコラム「私と吹奏楽」より引用

パラオ共和国の高等学校にて、日本語と吹奏楽のご指導をしていらっしゃる、土井暢子先生にお話を伺いました。

 皆さん、パラオ共和国という小さな国をご存じですか? 南の島好きな方ならご存じかもしれませんが、南太平洋に浮かぶ人口2万人も満たない小さな国です。第一次世界大戦後から第二次世界大戦後までは日本の委任統治で、その後アメリカ領となり1994年にアメリカとの自由連合国として独立しました。日本統治時代の名残で、今でもお年寄りは流暢な日本語を話しますし、日本名を持っている生徒たちも多くいます。そんな小さな南の島国で、国で唯一の高校に所属しているブラスバンド部でアシスタントをすることになったのは、昨年の夏頃。現在は、音楽と日本語も教えていますが、音楽教育の一環として、放課後のブラスバンド部の練習に携わっています。

 そもそも日本と違って、小学校の義務教育に音楽の授業はなく、学校によって独自に歌を教えたりすることはあっても、一度も楽器に触れたことがなかったり、楽譜も読めなかったり……。そんな状態からスタートし、今年で10年目を迎えました。楽器は日本からの寄付や中古楽器。最初は楽器の扱い方も知らなくてバットのように振り回したり、叩いたりと、大変だったと聞いています。

 私自身、中学の時にブラスバンド部に所属していましたが、あまりにも日本の様子と違うので最初はとても戸惑いました。が、最近は「音楽を通して感動する心は国境を越える」と実感しています。練習態度や取り組む姿勢など細かいことを言ったらきりがありませんし、確かに決して上手とはいえない演奏ですが、でも音楽を愛する気持ちは変わらない、そう思います。

 何もない南の島で、風の音と海の音、鳥のさえずりを聞いて自然にリズムを奏で、夜には月明かりの下でまた自然を賛美し、そうやってパラオ独自の音楽が生まれ、今でも残っています。音楽を聴くと自然に体を揺らし、踊りだし、笑いがこぼれる……そんなパラオの人たちに似合うブラスバンドをこれからも続けていければと思います。「みんな違うのだ」ということを、ここに来て学びました。しかし、音楽を通して、その違いをお互いに共有し、さらに人種や国境を超えて調和していけることの素晴らしさも、また、学びました。やりがいや手応えといったものがなかなか感じられず、ここで続けている意味があるのかと悩むこともありますが、でも、やりがいや手ごたえの感じ方もまた違うのだと、学んでいるところです。これからも、南の国の小さな島から、音楽を通して素敵な出会いを広げていきたいと、願っています。

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